霧のブルノエアポート

チェコのブルノを拠点に浴びた芸術などについて記録。

帰国経緯と欧州演劇のまとめなど

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タイトルの通りです。実は3月には帰国しておりましたよとのご報告。

コロナウイルスの影響で大学の方から帰国命令がおり、泣く泣く帰ってまいりました。何らかの形で最後の記事を書かないとなと思いつつ気付けば6月。本来の帰国月に入っていました。

帰国してからこの期間2週間自宅待機になったりそうこうしているうちに日本でも瞬く間にコロナウイルスの脅威が広がったり帰国の失意のなかとったアナスタシアがやっぱり中止になったり突如チェコミーの配信があったりなんだりと色々ありました。チェコミーの配信、びっくり。おかげでみんながチェコミーの話をしてくれたので嬉しかったりふしぎだったり。チェコミーの感想ブログとかFAがみれる世界線何事。

 

Twitterの方に強制帰国になるまでの記録が残っておりましたので、ここに書き記しておきたいと思います。もう2~3ヵ月も前のことなのでヨーロッパの対応はこんな感じだったんだなと思いながらざっくり読んでください。

 

3/10 同月24日までの授業休止が決定。その日の朝の講義はあったがそれを受けている途中で情報が回ってきた。この時は皆「コロ休み」などと言ってのんきだった。感染者数も少なかった。

3/11 休校期間が4/13まで延期されることが決定。また100人以上の集会が禁止に。チケットとってたチェコ版キャッツとレベッカが中止になりへこむ。

3/12 23時ごろ緊急事態宣言が出る。オーストリアを含む多くの国への渡航が禁止に。(正確に言うと他の国には行けるが、一旦出ると入国できなくなる)翌金曜からロンドンにHPCCのため遠征しようとしていた私、大いにへこむ。ただもしここで出国しているとチェコに戻ってこれなくなっていたので今考えるとよかったのかもしれない。あと一日出国禁止令が遅かったら大変なことになっていた。また、30人を超える人が集まるイベント、図書館、美術館などの営業も禁止に。

3/14 レストラン、パブ、カフェ、ショップの営業停止。

3/15 23時過ぎ、国内の人の自由な動きを禁止。(通勤、食料品・衣料品の購入、銀行、郵便局などへの訪問は例外)

3/16 外務省によりチェコを含むヨーロッパ各国が渡航危険レベル2に指定される。大学の規定により帰国が決定。

 

こう書きだしてみると一日ごとに状況がどんどん変わっていくのがわかりますね。当時毎日チェコの感染者数推移を見ては強制帰国に戦々恐々としておりだいぶ追い込まれていたので強制帰国が決まり寧ろほっとしたところもありました。

帰国までも毎日国の発表に振り回されたり帰国便が突然キャンセルにならないか頭を悩ませたりとにかく落ち着きませんでした。実際予約していた帰国便が欠航になり予約を取りなおさなくてはならなかった友人もいました。

こんな感じでバタバタ帰国してきた次第です。私は入学時から留学を目指していたので途中帰国になったの本当に悔しいし、大学によっては自己判断で『残る』という判断ができ、残った友人を見て羨ましく思ったりもしています。

 

さて、帰国までの話はこの辺にしまして留学中にみた作品についてざっとまとめてみたいと思います。

 

2019年

9月

オペラ『フィガロの結婚』(チェコ)

バレエ『白鳥の湖』(チェコ)

10月

バレエ『ロミオとジュリエット』(チェコ)

ミュージカル『アナスタシア』(オランダ)

ミュージカル『ダンスオブヴァンパイア』(ドイツ)

11月

ミュージカル『キャッツ』(オーストリア)

ミュージカル『レ・ミゼラブル』(ハンガリー)

12月

ミュージカル『エリザベート』(チェコ)

2020年

1月

バレエ『くるみ割り人形』(チェコ)

ミュージカル『スリル・ミー』(チェコ)

2月

舞台『ハリーポッターと呪いの子』(イギリス)

ミュージカル『ウィキッド』(イギリス)

ミュージカル『レ・ミゼラブル』(イギリス)

舞台『ハリーポッターと呪いの子』(イギリス)

ミュージカル『メリー・ポピンズ』(イギリス)

ミュージカル『Everybody's Talking About Jaimie』(イギリス)

ミュージカル『Six』(イギリス)

ミュージカル『ダンスオブヴァンパイア』(デンマーク)

 

以上ですね!ウーン二月の詰め込み具合がすごい。まとめると7ヵ国19公演16演目です。感想などは記事一覧から該当演目へどうぞ!

 

各国で見てやっぱり思ったのが、チェコのチケット代が安すぎる。最初からずっと言ってますが、とにかく安すぎる。

チェコミュージカルはどの劇場も一定期間にほぼ毎日同じ演目を上演している、ということがないです。週に一回休演日があって2~3週間上演という日本に多いスタイルとは違い、毎週あるいは毎日別の演目を上演していることが多いです。一例としてオストラヴァの劇場の1月の上演スケジュールをあげます。

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11日にレベッカ、16日にJCS……といろんな演目をかわるがわる上演しています。これなんと同じ劇場のスケジュール。この特性が関連しているのか、大道具や舞台装置は非常にシンプルな場合が多いです。ただ、(観る予定だった)(みたかった)レベッカのトレイラーをチェックするとかなりしっかりした装置を使っているのでその限りではないのかも。あとこれはすべての演目に対して言えるわけではないですが、衣装の素材の部分は節約しているのかなと感じることも。

それから特に地方劇場は、劇場付きの役者さんがいる場合が多いです。この役者さんの中で複数の演目を回していくという形。劇団みたいですね。劇場インスタグラムをチェックしていると、エリザベートでルドルフをしていた役者さんが翌週別の演目で主演、「今年も○○(演目名)の幕があきました~!」なんて投稿をしていたりするので驚く。

プラハの一部の劇場では、一つの演目を〇月までロングラン!という形で上演しているところもあるけど、そこも公演があるのは週に3~4回。

もちろんこれだけではないと思いますが、こういった公演形態がチケット代を抑えられている理由のひとつなのかなと思います。

オタク的には多ステしにくいのが残念。日本でも地方にいるので、みたい演目がある時は東京大阪に飛んで土曜マチソワ日曜マチネ!みたいに休日にガッとみることが多く、そうなると土曜と日曜でやってる演目がちがうチェコのスタイルは難しいところがあるなと感じました。

まあチケ代の安さはそれを補って余りあるメリットなんですが。交通費も宿泊費も安いから遠征費もめちゃくちゃ安いし。

 

ちなみに私、最後のTdVから一度も劇場に行けてません!悲しい。現場に行きたい。いつ回復するかわからない状況ですが、一日も早く回復することを願っています。

 

それでは9月からこのブログにお付き合いいただいたみなさま、ありがとうございました。

 

ダンスしてくださいヴァンパイア─ミュージカル『ダンスオブヴァンパイア』 コペンハーゲン/新劇場

ドイツ版TdVの記事でコペンハーゲン公演「検討します」と言ってたデンマークTdV、行ってきました。

先月末大阪で熱狂のうちに幕をとじたTdV、それを引き継ぐように1月23日からデンマークコペンハーゲンでも公演が始まりました。デンマークでの公演はこれが初。ロンドンで9公演観た直後だしなあと思ったんですが、ウィーンミュージカルは演出が国によってだいぶかわるので見比べたいと思って足を延ばした。本当は8日に某ミュージカルのパリ公演も観る予定だったんですが……。

演出家の肩をつかんで前後に揺さぶりたくなった。演出意図が知りたい。

物凄くよかった演者もいたし、いい意味で意表を突く演出もあったし最後はそれでちょっと泣かされたりもしたのだけど、全体的には「びっくり」そして「がっかり」な点が多い……。ネガティブなことが多めの記事になることをお許しください。

 

・劇場について

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会場はコペンハーゲン中央駅付近に位置する新劇場(Det Ny Teater)。駅から徒歩10分ほどで到着する。アクセスの良さは抜群。

劇場内の雰囲気はいままで言った中でもトップクラスで好き!螺旋階段があったり豪華なシャンデリアがつってあって、TdVの雰囲気にピッタリ。あと、劇場スタッフさんの制服がめっちゃかっこいい。高級ホテルのスタッフみたい。

トイレの位置がわかりにくいのが玉に傷かもしれない。

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お城のような内部

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一応撮影したキャストボード

客席内は3階だてで、今回は一階の真ん中あたりから鑑賞したんですが……笑っちゃうくらい客席がうまってなかった。多分半分もいない。座席真っ赤。土曜ソワレなんですけど……。

チケットサイトや現地の雰囲気的に二階席三階席はある程度はけてるようでしたが、さすがに大丈夫か心配になってくる。やはりウィーンミュージカルだと演目の知名度の問題とかもあるのだろうか。後ろに座った人も英語で会話していたので国外からのお客さんもそれなりにいるのかな。公演は 4月9日まで。がんばってほしい。

 
・開幕

演出の話。まあブログタイトルの通りなんですが。

まず、ダンスが弱い。TdV的にこれ以上ない悲劇。

TdVのみどころのひとつといえば、一幕の赤いブーツと二幕の悪夢のところのヴァンパイアダンサーによる圧巻のダンス。なんですが、まさかのヴァンパイアダンサーがおらず。そんなことある……? 赤いブーツのシーンはアンサンブルが4ペアのみ登場し、ワルツっぽい振りをちょっとだけ踊るなかサラと伯爵が歌う。しかもダンサー陣はすぐはけちゃうのでしばらく二人で歌ってるだけ……。赤いブーツのダンスを楽しみにして来たのに~~!悪夢のシーンはサラとの結婚式の最中シャガールがサラを噛んでサラがヴァンパイアになっちゃった!みたいな悪夢の実演をしてました。なしではないのだろうけど、ダンス、みたかった……。

正直M3ニンニクの時点で振りの割に動きがバラッバラだったので少し嫌な予感はしていたのですが……。ヴァンパイアダンサーが出てこないとは思わないじゃん? ダンス専門チームがいないからM21永遠のダンスもいまいち迫力に欠けるし……全体的に振りが小さく見ごたえがないというか……踊って~~!!!

 

衣装は、お金をかけているのはものすごく伝わった。目をひいたのは村人衣装と舞踏会のドレス。村人はみんなルーマニアの民族衣装を着ているのでとってもカラフルで舞台上がすごく華やか。その中でマグダだけスカートが短かったりとキャラクターごとに個性があっていい。

マグダ衣装 二枚目がわかりやすい

舞踏の間のドレスはデザイナーのこだわりを感じた。全ての衣装に細かい装飾が施されていて、多分一着一着時間をかけてデザインされた衣装。伯爵も何度か衣装替えがあって力が入っていた。サラのドレスも黒に金の装飾が入っていてとてもきれい。黒? 


黒。

サラといえば赤いドレス!のイメージだったのでちょっと衝撃。私はサラが徐々に血の色である赤を纏っていくのってすごく象徴的だと思っていて、少女からレディに変えられるうえで処女性の喪失なんて意味もあるのかな~と勝手に深読みしていたりもしたので……。このシーンの伯爵の衣装はワインレッドで、心の中で逆!逆!!って叫んでました。ただ黒いドレスだと噛まれたシーンで首筋に垂れる血がきれいに見えて、これを狙ったのかなと思った。

他にもところどころここでその衣装なのはどうして?ってところが多く。演出なのか? 筆頭がM10外は自由。ここでサラも部屋着じゃなく民族衣装を着ているのですが、すると何が起こるかというと服がすごくカラフルなので赤い靴がまっっったく映えない。そもそもプレゼントされるのが赤いブーツではなく赤いハイヒールで、面積が少ないからただでさえあまり目立たないのに。しかもサラが民族衣装を着るのはこのシーンだけ。よりによって感。

 

あとは場転のしかたが煩雑だったり、セットに予算をかけられていないのを感じてしまったりもしたのだけど、再演も決まっていない中の公演だと仕方ないのだろうか。力入れるとこそこ?ってところが多々。ある程度ロングランなわけだしもう少し頑張ってほしかった。

 

 

演者に関して。アルフレートと教授が素晴らしかった。すっごくよかった。後述するラストの演出もあいまって、今回この二人の物語だったんじゃないかと思うほど。

アルフと教授 アルフは眼鏡

特にアルフは、このアルフをみれただけ来てよかったと思わせてくれるアルフレートだった。歌も申し分ないが、役作りがすごい。日本のアルフ像であるいわゆる「ヘタレ」な感じではなく(2019年版はあんまヘタレじゃなかったっぽいですが置いておいて)、むしろ少しナルシストでプライドも高そう。自分は優秀だとおもっていて自信があり、サラにも結構積極的に触れていく。……んだけど、実際ヴァンパイアに対峙したときは動けなくなるちょっとダメなタイプ。だからクロロックに誘惑されたときは自分が評価されたことが嬉しくすぐに絆されるんですね。教授には仕方なく付き合ってる感じを出しているがヘルベルトに襲われたときは必死に名前を連呼したりとなんだかんだ本音では頼りにしているんだな~というのが感じられた。

私はアルフレートが一目ぼれとはいえちょっと喋っただけの女の子をどうして命を懸けてまで助けに行こうと思えるのかよくわからなかったんですが、少なくともこのアルフはサラのためというより自分のために動いてた。恋に恋してる。『サラのために命を懸けている自分』に酔ってる感じがしました。

教授はラストに全部持ってかれた。コペンハーゲン版で他と大きく違ったラストの演出。教授はアルフがサラに噛まれた瞬間を見てるんです。アルフがヴァンプ化したのに気づいて必死にサラからアルフを取り戻そうとするんだけどできずに、手を伸ばしたアルフにも威嚇されてすごすご引き下がるしかなく。だから、フィナーレの歌いだし「我々は今勝利した人類は救われた」がめちゃくちゃ悲観的。歌詞このままだと合わないしどう訳されてるのか気になった。このパート一人でか細い照明の中歌うのですが、曲も短調にアレンジして悲し気に演奏されるので超つらい。理性が世界の希望だと必死に言い聞かせている感じだった。端々から弟子をかわいがっているのは伝わってきていたのでアルフが自分から離れていったときの表情がつらかったです。

前回ドイツで観た時は終わった後たのしかった~~!!!て感じだったのに今回は終わった後なんか……こわっ……ってなった。

 

サラもよかった!キュートで色気もしっかりあって、少々強引に迫ってくるアルフレートをしっかり翻弄していた。見たこともない世界へのあこがれや抑えられない好奇心があふれ出してくるような歌声も素敵。表情の作り方がうまく、役者さんの雰囲気に役がしっかり嵌っていた。アルフとの声の相性もぴったりでデュエットがきれいに響く。相手を邪魔しすぎず聞かせるところは聞かせる歌唱。

クロロックは人の子(人ではないけど)っぽかった。感情にすごく振り回されている。感情をくだらないと切って捨てる教授との対比になっているのだろうか。個人的にはもう少し超然としていてくれた方が好みではある。あと衣装さばきももっとジャケットをバサァッってしてほしいな~と思ったり。これも好みですね。

 

あとヘルちゃん。ヘルちゃん好きなのでヘルちゃんの話をします。

アルちゃんとヘルちゃん 風呂場のシーン

一幕ラストで登場した瞬間から所作がキュートというか魅せ方が違うというがまとっているのが夜の雰囲気で。いやまあヴァンパイアだから夜なんだけど……一人だけネオンの世界で生きてる感……(???)。アルちゃんに迫っていく姿も凄く板についているし、極めつけがフィナーレのダンス。まず衣装が多分誰よりもセクシー。大きくあいた襟にフリルがついた黒いブラウスの上からコルセットを締めており、申し訳程度の丈のホットパンツからは網タイツに包まれた信じられないほど綺麗な脚が伸びていた。ブーツのヒールは軽くみて7㎝はある。それでガシガシ踊るから何者だよ……と思ってたら、なんと役者さんがプロのドラァグクイーンとして活躍されてる方らしい!納得。


役者さんのインスタグラム 美脚……

フィナーレヘルちゃん(の脚)ばっかり見てたせいで記憶があまりない。振りがダサかったのは覚えてる。

 

 

良くも悪くも目新しい演出に出会えはしたものの、ダンスが見れなかったのが残念。今回の日本公演では舞台装置が刷新されたらしいので、近いうちにまた日本でもやるでしょう。その日を楽しみにしておこうと思います。

ではまた!

ロンドン観劇旅行まとめ

2月頭にロンドンに観劇旅行に行ってきたのでそのまとめです。8日間ロンドンに滞在して、うち2日移動日だったので6日間でひたすら演劇を浴びてきました。流石にいつもみたいな単記事を全部に書くのは大変なのでまとめて。そのうち書きたい奴だけ書くかもしれない。

 

2/2  舞台『ハリーポッターと呪いの子Part1&Part2』マチソワ 宮殿劇場

今ちょっとタイムリー過ぎてビビってる。今回の本命の作品のひとつ。

もはやあちこちでニュースになっているから説明はいらないかもしれないが、ハリーポッターシリーズの正当な続編に位置する演劇作品。物語は原作最終章、ホグワーツ大戦から19年後ハリーの次男であるアルバスがホグワーツに入学するところからスタート。全編が5時間と非常に長く二部に分かれているので、見ようと思うとマチソワか2日連続ソワレに劇場に通う形になる。主な主人公はハリーの次男のアルバスくんとドラコ・マルフォイの一人息子のスコーピウスくん。と、こんな形なのでハリーポッターシリーズのストーリーが一通り頭に入っていないと話がさっぱり分からない。作品ファン向けの演目。この形で演劇作品として集客があって成り立つのハリポタという強いコンテンツ力を感じる。

どはまりしました。そのうち単記事を立てたいけどどうだろう。

はまったのは役者の演技によるところがかなり大きいかなと思う。演出の目新しさとか、『物凄い演劇』を求めていくと少し違う。たしかに魔法の演出などは工夫が凝らされていると思うし、あと劇場全体をつかって作品世界・魔法界に引き込むやり方なんかは流石でしたが。専用劇場じゃないとできない演出なんかも多々。お金かけてるな~みたいな。脚本は(読んだ人はわかると思いますが)ファンですら多少賛否ある仕上がり。ファンだからこそ、かな。私もデルフィーの設定にはあまり納得がいっていない勢です。

元々戯曲は出てすぐに英語で、その後日本語で一度だけ読んだことがあったので結構忘れてるもののざっくりした内容は頭に入った状態での観劇。これは正解だったと思う。かなりの密度のストプレを5時間、コテコテのブリティッシュイングリッシュで浴びるので今の私の英語力だと結構疲れるのと集中がもたない。話を知っているからこそアルバスとスコーピウスの関係の機微とか、ハリーやドラコなどのキャラクターの掘り下げなんかに集中できてのめりこんでった感じ。作品のファンとしてみたい解釈のところを深く見せてくれるからキャラクターに思入れがあると嵌る。セリフのひとつひとつが重たくて一部でも二部でもいろんなところで泣いてました。

スコーピウス役のジョナサン・ケースくんの演技が非常に良かった。喜と哀のコントラストがきれいだった。基本的に明るくふるまっているキャラクターで楽しそうな時は楽しそうであるのだけど、哀しみが根っこにありそれがむき出しになったときの破壊力が凄まじい。顔を真っ赤にして涙をぬぐいながらセリフを言っている姿が大変印象に残っています。ドラコの場合泣くことを自分に許していなかったろうしまして父親の前でなくなんてもってのほかだったと思うので、スコーピウスが素直に涙を流せる子だというのはそう育てたドラコとアストリアも後ろに見えるようでうれしい。体格が大きく(おそらく185㎝くらい)彼の杖とおなじく常に猫背になっているのが背負っているコンプレックスを象徴しているようだった。あと単純に間の取り方とかセリフ回しが上手い。年上のキャストも多い中客席の笑いを一番かっさらっていってた。すごい。

 

まんまと嵌ってロンドンから帰ってきた後もこの舞台に頭を持っていかれていたわけですがまさかこのタイミングで日本公演が決まるとは思わなかった。

現在戯曲が日本語でも出ているが、もし日本公演を観たくてこの機会に予習したいなって人がいたら少し待ってみてほしい。この作品のはじめてを劇場で得られる機会があるならそれを優先してほしい。間違いなく、作品としての威力が最大になるのは演劇という形式をとったときだから。これまでもしそれを得たければ海を越えなきゃいけなかったし、それが難しいから戯曲で作品に初めて触れた人が多いけれど、気軽に完成した形で触れられるようになるなら絶対にそれが初めて作品に触れる機会にした方が面白いと思う。日本公演で初めて呪いの子に触れられる人たちがとても羨ましい。記憶消したい。だから大歓迎だし超楽しみです。日本公演。(欲を言えばWSSみたいに日本公演の前に来日やってくれたら最高だけど……ないよね……)

単純に読み物として読みたいって人はもちろん読んでみてください。スコーピウスくんをよろしくお願いします。

 

 

 

2/3  ミュージカル『ウィキッド』ソワレ アポロ・ヴィクトリアシアター

2日目は四季で観れていなかったけどずっと見たいと思っていたウィキッド。当日券チャレンジに大勝利し£30で一階前方席をゲット。この演目は当日券でとるのがおすすめ!アプリで簡単に取れるし!

今回予想外に一番刺さって一番泣いた作品。四季好きな方を見ているに、圧倒的に再演を望む声が大きいのがこの作品だなと感じていたわけですが、理由が非常によくわかった。これは何度でもみたいしまた日本でもやってほしい。もっとハッピーミュージカルだと思ってたのに、For good以降はずっと泣いてました。嗚咽漏れそうになって目から下を全部ハンカチで覆う羽目になった。とにかく唯一無二の相手とか誰にも代えがたい存在とか、お互いそう思っている二人が2度と会えなくなるったり引き離されたりそういう描写に弱いんだな……。生死すら知れないのは切ない。それからOne short dayで舞台上が緑にあふれて、視覚的にエルフィーが世界に溶けこんでいるのがわかりやすくて、そこの二人のやり取りでちょっと泣いてたしDefying Gravityは照明が神々しすぎて神話じゃんって言いながら泣いてたし二幕のI'm not that Girlのリプライズはこのリプライズはオタクに効く……って呻きながら泣いてた。グリンダが渡した帽子が最後までエルフィーのそばにあったのが救いだった。

オズの魔法使い』の物語を知ってると、オズ本編につながったときに何が起こるのか察せてしまって恐ろしいですね。嵐が起きた瞬間ネッサがどうなるかわかってしまって鳥肌がたった。知っているというのは怖い。

アナ雪とこの作品の関連性を知ったうえで、先にアナ雪を見ていたから順番としては反対でもどうしても作品構造として意識はしてしまった。ウィキッドを踏まえると、Frozen2の二人の結末にはさらに考えさせられるところがあるなあと思ったり。ハッピーエンドではないよね、ウィキッドもF2も。

 

 

2/4  ミュージカル『レ・ミゼラブル』ソワレ ソンドハイムシアター

今回の本命その2!最新のレミゼ

12月から始まった新演出ソンドハイム版。これまでの新演出がさらに新しくなった『ソンドハイム版』だというのは知っていたもののどの辺がどう変わったとかは情報を入れずに観に行きました。結構変わってたね!

これね……うーん、何が原因かわからないんですが、私うまく入り込めなかったんですよね……。聞きなれた英語詞のはずなんだけど。変更点に驚いていたせいなのかなんなのか。泣き度でいえばハンガリー版のほうが泣いたかな……。曲のテンポの問題は少しあるかもしれない。

観劇メモを見返すとグランテール……と遺言のように書いてあるだけで何の参考にもならなかった。グランテール、Drink with meから明らかに様子がおかしい。仲間の戦闘中もひとりだけ面よりで寝てるようにうずくまっていたりだとか。これは原作を想起させてきつかった。ガブ死からは必至に仲間を留めようとしていたようにも見えって……最後はどんな想いで打たれにいったんだろう。

アンジョルラスやジャベールにもかなり思うところはあったもののまだうまく言語化できない。もう少し噛み砕きたいな~という感じのソンドハイム版だった。

 

 

2/5  舞台『ハリーポッターと呪いの子Part1&Part2』マチソワ 宮殿劇場

おかわり。この日は演目が決まっておらず、本当はDear Evan Hansenとオペラ座とCOME FROM AWAYと&Julietで迷っていて当日券みてきめようとか思ってたんだけど一応と思ってHPCCの当日券をのぞいてみたところ4列目のセンターというとんでもない席が戻ってきており気付いたら購入していた。こういうことあるよね。おかげで残高がえらいことになってるが後悔はしていない。

結果的におかわりして大正解だった日。この日はスコーピウスくんのキャストがアンダーのルーク・サマーくんになっており、ちょっとジョナサンくん目当てでチケット追加したところはあったので一瞬がっかりしたが二人のスコーピウスくんを見比べてかなり視点が広がったので本当に増やして良かった。ルークくんはまずなによりジョナサンくんに比べてセリフが圧倒的に聞き取りやすい。ノンネイティブに優しい。ジョナサンくんの活舌が悪いとかでは全くなくて、演技プランの問題。ジョナサンくんのスコーピウスはセリフ回しがかなりギークな感じで独特だから英語慣れしていないと結構正確に聞き取るのがハードだったりする。対してルークくんは割と正統派でまっすぐな役作りなので、セリフも、あと感情の機微もわかりやすい。より子供らしいといえばそう。ドラコとの距離感が近いのも面白かった。なんだかんだ一番いい親をしてるのってドラコなんですよね……。

前回演出面ではあまり刺さらなかったが近くで観ると迫力がすごくてかなり印象が変わった(そりゃそうだ)。衣装が細部まで見られたのもうれしい。二幕冒頭のスコーピウスの衣装がすごい好きです。

 

 

2/6 ミュージカル『メリー・ポピンズ』マチネ プリンスエドワードシアター

前日に続きマチソワ。ひとつめはメリー・ポピンズ。日本公演に行けなかったのでミュージカル版は今回が初見でした。

前情報ゼロだったのでほぼ映画と一緒で変更があったとしても他のディズニーミュージカル程度のマイナーチェンジでしょ~とか思ってたらだいぶ違ってびっくりした。ジョージの性格の掘り下げとか、バンクス一家の在り方やラストとか、ミュージカル版の方がかなり好きかもしれない。あと場転が好み!ドールハウスみたいでかわいい。

メリー・ポピンズのあの独特の色彩で魅せる世界観が目の前に広がるのはだいぶテンションあがりますね。メリーが次々衣装チェンジして、その衣装が全部かわいいのも素敵。バートとメリーのペアダンスもめっちゃかわいかった。

お金がなくてGrand Circleからの観劇でしたが、二階でも三階でもまったく置いて行かれない演出はいい!特に星空のシーンは前の方から目の前まで星空が広がってくるのが全部見えて楽しかった。ラストのロングフライも上からでも見切れることなく楽しめるのはいいですね~。

学生団体が入っていて、学校でWEミュージカルとか超羨ましいなと思った。見終わった後すっごい日本キャストで観たくなったので日本でも早く再演してほしいです。

 

2/6 ミュージカル『Everybody's talking about Jamie』ソワレ アポロシアター

WEの新作ミュージカル。映画化も決まったらしいですね!

ドラァグクイーンになりたい高校生の男の子がスクールプロムにドレスで出ようと奮闘する話。なんかいわゆる「ドラァグクイーンもの」という感じではなくて、ひとつの夢追いストーリーになってるのがいいなあと思う。ほっこりできるお話。

偶然にも場転の仕方が同じ日に観たメリポピと少し似ていて、全然雰囲気もテーマも違う演目なのに面白いなと思ったり。逆に似た手法をそれぞれの作品にしっくり合うような形で落とし込んでるのが面白いのかな。

話の内容がティーン向けなのもあり、客層は若めだった。きっともう少し大人になってからみたらまた見方が全然かわるんだろう。

新しいミュージカルなだけあって、スラングやネイティブに英語に触れていないとわからない単語が多用してあり客席の笑いについていけなかったり何を歌ってるのか聞き取れないシーンが多かったのがとても悔しい。後から歌詞を読んで補完したもののライブでついていけないのは残念。もっと英語強くならないとなあ。

 

 

2/7 ミュージカル『Six』ソワレ アーツシアター

ラスト!今回の本命その3。正確な年数は覚えていないが数年前にTwitterで感想を見かけてからずっと気になっていた作品。これもそのうち単記事たてたい。

大好きな演目になりました。劇場はキャパ350くらいの小劇場で、チケットも手売りなの?ってくらいシンプルなやつで、待合は超狭いカフェ。この時点で今迄みてきた作品とかなり違う。

ストーリーはヘンリー八世の6人の妻たちがよみがえり、一夜限りのライブを行うというもの。歴史もののガールズパワー系かな。なんだかミュージカルというよりライブそのものでバンド紹介もあるし(もちろんバンドメンバーも全員女の子)めちゃめちゃ客席煽ってくる。観客の熱狂具合がまあ凄い。歓声も手拍子も、熱量が半端ない。

老若男女関係なくすごく楽しそうなのがいいなと思った。斜め前のおじちゃんは歴史を皮肉ったジョークで超笑ってたし、隣のまだ十代にもならない女の子は舞台上の役者に夢中で手を振ったりしていた。ここでもジェイミーの時と同じで歴史のジョークとかを全然拾えずに結構悔しかった。後から歌詞を見直したんですが、言葉遊びがふんだんに使ってあっておしゃれで洗練された歌詞なんですね。M1Ex-Wives("元"妻たち)でポーカーにかけて(キングとクイーンの)ペアでいるより(クイーンが揃ってる)今の方が強いのよ、と言っていたり。あとアン・ブーリンのセリフがキレッキレで最高。6人の中で唯一息子を生んだもののその後死んでしまったジェーン・シーモアの「私の息子は母をなくしたのよ!」に対して「私の体は頭をなくしたのよ!」と返してみたり。

衣装もSF小説から飛び出してきたみたいでかっこいい!ロビーにファンアートがたくさん飾ってあったけど、描きたくなる気持ちはものすごくわかる。目を引く造形をしている。

これ日本で観れたら楽しいだろうけど、翻訳家泣かせだよな~。ニュアンスとか全ての言葉遊び訳すの不可能だと思う。でも絶対に面白いし日本でやったらどうなるのか気にはなる……やってほしいな~。

 

 

というわけで、9公演7演目。超楽しかったけど連続はさすがにちょっと疲れたね。

あとはサウサンプトンまで足を延ばしてタイタニック博物館に行ってきたりしました。あそこも凄くおもしろかったので時間があるときにまた記事で紹介できたらいいな。

WEのチケット安くはないんだけど、カテゴリー分けしっかりしてるから納得してお金を出せるのがいい。ハリポタの追加した日は一部約14,000円ちょい全編通して三万弱したけど、一階前方確定なら喜んで出すよ。一階の真ん中あたりでも一部約一万の合計二万とかだし(日によって変動はする)。

今回気になってたけど観れなかったやつもあるのでまた行きたい……お金はないです。

 

 

二人の世界は狭かった─ミュージカル『スリル・ミー』オストラヴァ/シアター12

『スリル・ミー』がなんとチェコであったので!観てきました!!

実際にあった事件を元にし、役者は「私」と「彼」の2人、楽器はピアノのみで進行するミニマリズムなミュージカル、スリルミー 。日本では度々再演され大変な人気を博しています。今は渡韓がアツイっぽい。

次の再演はいつだろう。田代伊礼ペアの復活を熱烈に所望します……あとこれは完全に私欲だが私は加藤私城田彼がみたい。物凄くみたい。城田私加藤彼でもいい。成河さんはCDでもなんでもいいので成河成河でやって欲しい。お願い叶えてホリえもん。(堀……文さんではない)

閑話休題

チェコでの公演は二回目だそう。まさかチェコで観れるとは留学前露ほども思ってみなかったが、何があるかわからないものである……。

 

・チケット購入

劇場オフィシャルサイトから購入した。

実は今回の公演を知れたのは全くの偶然。

スリルミーがみてぇ……とシャブが切れた薬中のような状態になり、”Thrill Me Bruxelles”だの”Thrill Me London”だのヨーロッパ各都市の名前を検索してたらまさかのチェコ語サイトがヒット。チケットが残り一枚だったので一体チェコのどこの都市でやるかも確認せず購入した。幸い居住都市から電車を使い約2時間半で行ける場所だった。

お値段はなんと学割で半額になって150kč(約715円)。学割がなくてもめちゃくちゃ安い。チェコのチケ代バグレベルで安いのなんなんだろう。流石にここまで来ると物価の問題だけじゃないよなぁ……。

よく調べてみると、5月から月に一度ほどのペースでちょくちょくやっていたようで11月にはプラハでも上演したらしい。全然気付かなかった。情報を追う難しさを痛感するばかりです。なぜか平日ソワレばっかりで長期休み期間でないと行き辛いのが痛い。


・劇場について

公演があったのはチェコの第三都市、オストラヴァオストラヴァについてはまた追々記事を書きます。

オストラヴァにはミュージカルを上演する主な劇場が三つ(内ひとつは改装中)あるのですが今回の劇場、シアター12はその中でも一番小さいハコ。なんと、キャパ60!傍聴席か?(傍聴ではない)このキャパでスリルミーを観れるというのも今回の楽しみのひとつだった。席は唯一残っていた最前の下手端。10席×6列と一番後ろでも6列目なのでこうなってくると上下に寄った席は前方より後方の方がみやすい。正面から観れないのは残念だが一番前だし近いしもう正直スリミがみれるならなんでもよかった。

小劇場ながら中にはちゃんとしたバースペースがあり驚き。ミュージカルだとあまりドレスコード気にしなくていいことが多いんですが、この劇場だとみんなおめかししててシマッタ〜となりました。物凄く浮いた……。

中に入ると左右の通路に4席づつ補助席がでていた。こちらで補助席をみたのは初めて。だから、実際の限界のキャパは68席になる。


・番外編

今回もエリザ の時同様チェコ語一切聞き取れないのはちょっとなぁと思い少しだけ予習して行きました。せっかくなので一部を紹介。

というわけで。

99年後使える!チェコ語講座〜!!


※日本語→チェコ語→読み方になってますが間に一度訳親の英語を挟んでます

炎                         oheň オヘンニュ

最高で完璧な夜 jednu vynikající noc イェドゥヌ ヴィニカシィ ノツ

契約書        smlouva  スムロゥヴァ

血                          krev クレフ

塩酸                      kyselina  キィセリナ

眼鏡      sklenice スクレニーツェ

凶器         vražedná zbraň ブラヅェードナァ ズブラーニュ

痣          znaménko ズナメーンコ 

99年        99 let  デヴァデサットデビェット レト


うーん、前回に輪をかけて汎用性がない。読み方を聞いた友人にも「で、これは何?」と言われてしまった。そりゃそうだ。

 


・開幕

やはり全スリルは小劇場でやるべきでは?

もう難しいのはわかってるんですけど。

ふたりがみていた「狭い世界」を表現するのにこれ以上ない劇場。その世界を客席で共有できるのがいい。超狭い空間で息苦しいくらいの圧迫感があるスリミ……凄い……。まず役者との距離がめちゃくちゃ近いから謎に緊張してしまう。一列目の高さと舞台の高さが同じで間は1メートルも空いてないので目の前、本当に手を伸ばすとさわれちゃう距離に来る役者……の手が血塗れだったり目の前に本がドンっと置かれたりその度にびくつくしどんどんおかしくなっていく。こわい。

歌い始めた時肉声でびっくりした。そりゃあよく考えてみればこの人数相手ならマイクはいらない。マイクがあるのと肉声だと声の質感が変わるしより生々しくなって、やっぱりこわい。マイクを通すことでより演劇、フィクションとしてのフィルターが厚くなるからあえて肉声でいい小劇場でやってそれを取っ払ったのかなと思いました。後にも書きますが今回演出がドキュメンタリー風というか、この事件が実際あったことを強調する演出だったので余計そう感じた。座席は補助席まで出ていて他の日程も全てチケットは完売しているのでやろうと思えばもう少し大きな劇場でも出来そうだし。

日本だと初演はマイクなしだったんでしょうか?100人規模だと必要なさそうではあるけど……有識者カモン。

 

印象的だった演出について。このミュージカルを完全にひとつのドキュメンタリーだと捉えてつくられていた。チェコ版はBW版を元にしてるので役名は「リチャード」と「ネイサン」。リチャードが彼でネイサンが私です。リチャードの弟もBW版同様「ジョン」と名前が出てくる。それだけでなく、冒頭に『これは、1924年に実際に起きた「レオポルドとローブ事件」を……』みたいなモノローグ音声が入る。全てを正しく聴き取れてはないが年数と名前は聞こえたのでそうだと思う。最後もまた『この後ネイサン・レオポルドは〜』みたいに実際の二人のその後についてが語られる。その際プロジェクターでレオポルドとローブ本人の写真が舞台上に投影されるんですが、これは結構衝撃的だった。ここまで史実に繋げるのか、と。もちろん舞台上にいる二人と写真で写されている二人は全くの別人で、だからこそこれまで90分自分たちがみていた演劇がそのまま現実世界に地続きになる感覚は面白いし、やっぱりちょっとこわい。なんだかんだラストのあの写真が一番印象に残ってるな……。

音響は本当にピアノ以外はなにもなかったです。SEもなし。本人たちのセリフ、歌とピアノ。それだけ。色々と削がれて随分ソリッドな印象を受けました。

キスシーンは軽めでしたね。

最初のところはリチャードがネイサンの顔ガッとつかんでちゅーってしてネイサンがよくわかってないうちに終わり。M15僕と組んでの許しを乞うようなキスがよかったです。あそこのネイサンめちゃくちゃこわかったけど。

 

役について。まずリチャードから。リチャードはとても「わかりやすかった」ので……。

まるでガキ。ネイサンの悪ノリにも一緒に付き合って一緒に遊んで楽しそうに笑う。かと思えば突然立ち上がり犯罪計画を話しはじめたりする。その表情は将来の夢を語る子供みたいにキラキラしているし。表情がくるくる変わるのも非常に子供っぽい。感情の波が激しいんですね。

基本的に芝居がかった口調で喋るのが所謂『厨二病』のようだった。クールに構えているシーンはほとんどなかったように思う。さっきまで楽しそうにしていたのに少しでもネイサンが気に入らないことをするとすぐに怒鳴りつけたり。またM12僕の眼鏡/おとなしくしろで新聞を見た瞬間からすぐに凄く怯えだすところなどもからも多少の想定外すら許容できない器量の狭さというか、本当に全て計画通りいくと信じて疑ってなかったんだなというのが感じられどうも子供っぽい。この曲、状況が進むにつれどんどんリチャードが憔悴していってこちらまでしんどくなった。やっぱりそれも、彼が「子供」に見えるからだと思う。かわいそうになってきちゃう。完全に自業自得なんだけど。

父親との関係も悪く、結局子供から抜け出せていないリチャード。契約書を破られそうになった時は物凄く焦っていた。そういう形にしておかないと不安で、「契約書」という目に見えるものに固執していたんだろう。「お前が必要だ」はネイサンを懐柔するための言葉だったにしろ、リチャードは間違いなくネイサンを必要としていた。

衣装が子供っぽさに拍車をかけていたように思う。白スーツにベージュの蝶ネクタイ、黒ベスト黒ジャケットと上はわかりやすい。対して下は七分丈のパンツに白の長靴下。パンツからそのまま靴下が出ているから足は見えていない。靴は白と黒のちょっとおしゃれな革靴。一目で上流階級の「子供」だとわかる服装。大学生よりももっと若く見えた。

 

で、ネイサン。いやこわいよ。

リチャードとは全く対照的に表情が全然読めない。感情の動きが少ないのか表に出てないだけなのか(単に演技力の問題なのか)。なんか、こちらに伝わってくるものが極端に少ないように感じた。リチャードよりよっぽどおかしい。さっき言った通りM12僕の眼鏡/おとなしくしろではリチャードがどんどん怯えて最終的には立てなくなるほど憔悴していくんだけどネイサンは歌っていることとは裏腹に表情はリチャードに比べずっと落ち着いてる。ネイサンにとっては想定外ではないからね。多分これは結末知ってる人が見たからそう感じたわけだけど。

キスシーンのところで少し触れたが、僕と組んでの時も怖かった。リチャードにどれだけ説得されてもキスされても全然表情が動かない……ほんと、なんなんだお前……。彼に再会して倉庫を燃やそうと言い出された時点で計画を立てはじめたのかなと思った。そのうちリチャードが人を殺そうと言い出すのもわかっていそうだし。ずっと確信犯。このなにを考えてるのかよくわらない表情で歌われるM8戻れない道はまじで恐怖。ネイサンは常に空虚で、スリルを求め続けていたんだろう。リチャードに出会ってなくても何かしらやらかしそう。

きゅ〜じゅ〜きゅ〜うねんーでの二人の顔の落差が凄かった。出来る限りネイサンから距離を取り得体の知れないものを見るように怯え切った顔のリチャードとものすごーく穏やかに微笑んでいるネイサン。ネイサンのあの顔は、満足気ではあったのだけど、完全に求めていたものが手に入ったわけではなさそうというか……。史実の通りそのあと女性と結婚したというのが全く違和感なく入ってくるなと。多分、リチャードじゃなくてもいいよね、君。

役者さんについては、歌唱がもう一つ……。声質がガサついていて少し残念でした。高い音がうまく響いておらず……全部地声で歌おうとしていたせいだろうか。

あと声量がもっと欲しかった!最前でびりびりするほどの迫力がある歌を浴びたかった……声量に関しては両方にいえることですが……。

 

※追記

インスタに舞台写真を発見したので貼っておきます!

こちらのポストの一枚目と三枚目が私が観たペア。放火シーンではリチャードがネイサンの手を取って火をつけさせており、『共犯』にさせている感があがっていていい。

四枚目のベッドのシーツとマットを取り払うとマットを敷くところがざっくりした網目状になっており、後半はそれを牢獄に見立てて演技していた。二人が過ごしていた空間がそのまま鳥籠になるのイイですね。縦に立てたベッドの真裏から照明をあて、格子の影を綺麗に舞台上に落としている演出も良かった。

これはまた別のポスト。

右下が実際のレオポルドとローブの写真が投影されているラストシーンになります。その上は非常に艶かしい事後シーン……笑。この2人は私が観たのとは別のペア。リチャードが上裸になってるが私が観た回ではこうなるのはネイサンだけでリチャードはタンクトップを着ていた。おそらくだが、リチャードの役者さんが中にタトゥーを入れていたのでその関係だと思う。やっぱりペアによってだいぶ変わるからもうひとつのペアもみたかったな……。

 

なんか、終始目線が合わないというか見ているものがズレてるふたりでした。

劇場を出た時解放感があった。あの狭いハコに飲まれていたのだと思う。本当に息詰まりしそうな空間だった。超小劇場スリミ、いいものを見たなあ。

おかわりしたいけどスケジュールがなあ……この辺やっぱり日本とかの一定の公演期間に連続でやるほうがいいですよね。おそらくこっちに日本ほど多ステ文化がないのが一因かと思うのですが。

日本版も小劇場でみたい……タイムマシンが欲しい……とりあえず来年が日本初演から10周年なのでなにかしら期待してます、よろしくホリ…ロ!

ブルノ・トゥラニ空港について

あけましておめでとうございます。気付いたら明けてから随分経っていました。

 

さて今回は、こんなブログタイトルをしているからにはいつか書かねばならないと思っていた記事。

ブルノにある「トゥラニ空港」の紹介です。

(ちなみにブログタイトルに大した意味はなく、とある漫画のサブタイトルのパロディなんですが……果たしてこれでピンとくる女子大生どれくらいいるんだろう)

 

ブルノにも一応小さいながら空港がある。南西の郊外に存在する空港がこちら。

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みるからに小さい。体感サイズとしては体育館くらい。

横からみるとモグラのようなフォルムをしています。

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市内からだいたい30分間隔でバスが走っているのでアクセスはしやすい。所要時間はメインステーションから空港まで約20~30分ほど。

空港行きのバスには行先に飛行機マークがついているのでわかりやすいです。

 

中にはタクシーブースやちいさな案内所、両替ブースと一応のレストランがあるが、あとは入ってすぐ保安検査場。ここをぬけると先にはろくにお店がないので注意。一応自動販売機はあるがそれくらいです。

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この空港の保安検査が今まで利用した空港の中で一番厳しかった!こんなに小さい空港のくせに!(だから?)

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日本から持ってきた洗顔フォームを機内持ち込みの液体容量オーバーで没収されてしまいました……結構使い倒してて中身はどう見ても100ml超えてないのに……これまでどの空港でも引っかからなかったのに……。残り7か月分ほぼ全部とられたので肌に合う洗顔を探さないといけなくなりました……。

 

閑話休題

 

保安検査場を抜けた先はこんな感じ。ゲートは三番までしかありません。(そしてこの時間は一か所しか使用されていませんでした)

一応国際空港ではあるが、就航便は大変少ない。その数なんと12路線。国で言うと6か国。

しかも、オンシーズン(主に5月~10月)しか就航していない便がほとんどのため今の時期動いているのはなんと3路線!(ロンドン、ベルリン、ミラノ)

さらにさらにこれも毎日発着しているわけではなく週に2~3往復だけという……。使い勝手わるい……。

主にLCCが発着しているようです。こちらは今回利用した欧州の大手LCCライアンエアー

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とはいえブルノから空の便で他国へ出かける際はプラハかウィーンから行かねばならず、まず空港に行くまでに時間をかけなくてはならないので居住都市からの発着はやっぱり楽でした。

せっかく空港があるので留学期間中に直行便がある都市には行きたいですね。ではまた。

刮目!チェコ初演エリザベート ─ミュージカル『エリザベート』プルゼニュ/DJKT新劇場

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※今回前置きがいつも以上に長いので作品内容の部分のみ読みたい方は・開幕の項まで読み飛ばして下さい

チェコエリザベートをみてきました!!

日本でも超チケ難になる程人気の、オーストリア=ハンガリー帝国皇后エリザベートの一生を描いたミュージカル『エリザベート』。来年5月から全国ツアーも決定しています。*1私はというと観たことがあるのは新演出の東宝版のみ、宝塚版は初演をDVDでみせてもらっています。

チェコでの公演があると9月末に発表があってからずっとずっと楽しみにしていた公演。私にとってはウィーンやハンガリーのブタペストとゲデレー宮殿、スイスのジュネーヴなどエリザベート本人にゆかりのある都市を回って多少なりとも理解を深めてから初めての観劇です。

エリザベートチェコで公演されるのは今回が初。つまり、チェコ初演!留学期間にちょうど初演があたるなんてラッキー!初日は11/30で年内は12/7,28,29と公演があった。

今後は1/3~5,7,2/18~20,4/25に公演があるようです。こんな感じで一作をロングランするんじゃなく長い期間を使いとびとびで公演を行っているのはチェコの劇場でよくみるパターン。もちろんこの期間はほかの作品も並行で公演される。この劇場では『ビリー・エリオット』などをやっているようだった。個人的にはいちいちセットのくみ上げとバラシが大変そうだなあとスタッフの苦労が気になる。

 

・チケット購入

チケットはオフィシャルサイトから購入。11/30のプレミアデーは一般販売されておらず、7日には予定があったので28日に観ることに。前売りの受付は10/15の10時からだったが、開始前に販売サイトをチェックしてみると……

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アラッ!?結構埋まってる!!!

どうやら劇場の公式会員に向けての先行販売があったらしく。この辺やっぱりアウトサイダーだと厳しいよなと思った。それでも最前列が空いており、この空きかたは逆に見辛いやつか……?*2と訝しがりながらも「最前でエリザ」という付加価値につられて一列目を狙うことに。

そしていよいよ一般販売開始当日、9時59分57秒にF5を力強くプッシュ!!!日本で得た技術を最大限に使い(笑)、無事に希望の席をゲット!

しかも値段が550czk(約2,620円)。やっす!!!!!帝劇で14,000円の位置ですよ。ヨーロッパあちこちでミュージカルを観てますが、物価に比例しているとはいえチェコハンガリーのチケット代は信じられないくらい安いです。*3

 

・劇場までの道のり

今回公演があったのはチェコの西側に位置するプルゼニュという街。いやどこだよ、て人はこちらの前回記事を参照にして欲しい。

公演があるのはDJKT劇場の方。ややこしいことにすぐ近くにDJKT劇場という別の劇場がある。一度間違えてそこに向かってしまい、誰もおらず軽くパニックになった。

ありがたいことに地元警察の方に助けて頂き無事劇場までたどり着けた。

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穴の開いたチーズのような外観が特徴 警察官曰く"That awful building"笑 地元民の評判は悪いよう

 

・劇場内へ

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シシィのフォトロケーション

ホワイエは「新劇場」の名に相応しくピカピカ。また、チェコ共産主義国だった時代西ボヘミア解放後のチェコ支援のためアメリカ軍がここプルゼニュに滞在していた名残か、ソビエト支配関係の展示がしてあった。

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こちらは本日のキャスト。

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物販は非常に控えめ。エリザベート関連の商品はパンフレットのみで残りは劇場のグッズが陳列してあった。記念にパンフレットを購入。45kč(約245円)。

 

・番外編

本編の感想に入る前に少しだけ。だいたいいつもヨーロッパ諸国での観劇は自分の中の日本語版の記憶を頼りに観るのですが、流石に在住4ヶ月にしてチェコ語で何言ってるかサッパリわからない!だとちょっと恥ずかしいので少しだけ予習をしていきました。

というわけで!

黄泉の国で使える!チェコ語講座〜!!(一部掲載)

日本語→チェコ語→読み方の順

皇后   Císařovna   ツィーサジョヴナ

皇帝   Císař  ツィーサジュ

死    Smrt  スメルトゥ("メル"はハッキリ発音せず詰める)

太后  Arcivévodkyně  アルヒヴェヴォルドゥキィニェ (3回くらい聞き直した)

皇太子  Arcivévoda  アルヒヴェヴォダ

ミルク  Mléko ミレーコ

卵    Vejce ヴェイツェ

オレンジ Oranžová  オランヌジョヴァー

キッチュ Kýč  キーチュ

ボート  Loď ロッドィ

これで貴方もチェコ語圏の黄泉の国に連れていかれても安心です(?)

 

・開幕

いやあの、色々すごくて。日本語の便利ワード「ヤバイ」が非常に役に立つ。やばい、いろんな意味で。

例によってゴリゴリネタバレします。ネタバレしながらじゃないと喋れない。

 

何から話しましょう、て感じですがとりあえず演出。ベースになっているのはもちろんウィーン版なのでハンガリー革命家やらあの辺の設定はない。アレがなかったのでルドルフとフランツがどうして争ってるのかがわかりにくかった。これは一部私の言語能力の問題かな。

 

さてチェコ版演出、天才!!!!!て叫びたくなる所とトンチキ〜〜ってところが両方あり……大変面白かった。あと日本じゃこの演出は出来ないなぁ、と思う部分も多々。

まず天才!てなったところナンバーワンはトートダンサーに女性がいた点。TDは全身真っ黒で左腕は鱗のようなものに覆われ、右腕に天使の羽を模した袖がついて常にフードを被っているという中性的な衣装だったのでハッキリと性別差が強調されているわけではない。

TDの衣装 これ+フード着用

何が素晴らしかったって、ルドルフに寄り添う時は女性のTDがメインで動くんですよ。ルドルフの母親を求める気持ちに合わせて現れる女性TD。もちろん自殺シーンも誘うのは女性TDたち。ここはマリーの表現ですね。TDに女性が混ざってると気づいた時思わず口を覆いました。本当に素敵な演出。

ぶっちぎりで衝撃的だったのはマジで燃えるアランソン公爵夫人悪夢の身内がバタバタ死んでいく所、ご丁寧に一人ひとり尺が取ってあった。で、アランソン公爵夫人、どうやっているのかわからないが着ているコートが本当に燃えている。燃えたコートを羽織ったまま半狂乱で(結構長いこと)叫びまわり袖にはけていく公爵夫人。恐怖。なんらかの液体がコートにかかっておりきちんと本衣装に燃え移らないようにしてあるだろうし時間も計算の上なことはわかる。しかし恐怖。

トンチキ大賞は闇広です。なんていうのかな、トンチキ。舞台中央のせりの上に立つトートとルドルフ。トートの手には鞭。(多分鞭。東宝版で出てくるのとは違う形。竿みたいだった)一番ではトートが下手側、ルドルフが上手側で揃って下手袖の方を向いて♪闇が広が〜る に合わせて乗馬の動きをする。鞭を取るのはトート。♪がまーんできなーい で鞭を奪い2番で前後交代、自分で馬(概念)に乗るルドルフ。どう?僕ちゃんと乗れてるでしょ!?と嬉しげにトートを振り返るルドルフ。何を、見せられているの。なんというか、「ルドルフがトートに駒として利用されている」というのを表現しようとしているのかな?というのは感じましたが……。♪見過ごすのか からはせりを降りて芝居に戻ります。

うーん、やっぱり文章だと伝わりづらい。こんな時絵が描ければ……。

乗馬シーンは見つからなかったが鞭はインスタに上がっていた。

あと♪僕は今不安で壊れそうだ の部分が抜け落ちてる気がしたんですが、気のせいだったかな。おかわりしようにもチケットがもう全部売れていてできないのが悔しい。あとですね、この2人のキスシーンがなかったんですよ〜〜!マイヤーリンクでちょっとソワソワしてたのに、なかった……ルドルフが自分で頭ぶちぬいておわりだった……どうして……その前のペアダンスはアクロバットもあって凄い良かった……。

微熱のシーンもなかなか。ドクトルゼーブルガー診察する気がない。♪脈は 大丈夫よ 微熱が の部分でシシィの周りをあるいて三周し、フランス病だと診断するゼーブルガー。患者に一切触らずにどうやって診たんだよ。せめて医者を装ってくれ。

ルドルフが(おそらく)ドラッグを打つ描写やルドルフ死後のシシィがタバコを吸っていたのは日本じゃやらない、というか出来ないかなと思った。

それと、ほぼずっと舞台上にルキーニがいるのでルキーニの回想というのは分かり易くなっていたなと思います。定位置は上手端の面。最前だったおかげで顔の動きがバッチリ見えてとても良かった。マイクオフのセリフももちろん聞こえたもののチェコ語なので何を言っているかわからなかったのが残念でした。

多くの他国版で言われているように、日本比でさらに独立したエリザベートという女性が強調されていた。私が踊る時のシシィ、手を差し伸べるトートをガン無視して当て付けのようにその辺のアンサンブルを捕まえて踊ります。いいですねぇ。ラストはトートの口づけを受けた後、抱きしめるトートの腕からするりとぬけて一人面の真ん中に立ち満足気に微笑むシシィで幕。後ろでトートは唖然とした、というか理解し難いといった表情をしていた。ここのトートの解釈は東宝版と同じかな。この部分の演出って分かれるところだと思うんですが、日本とチェコで解釈が共通しているのは面白いです。

 

続いてセットについて。いかに東宝版のセットにお金がかかっているかということがとてもよくわかりました。公演日のくだりでくみ上げとバラシが大変そうと思った、と言ったが完全に杞憂。セット、超・シンプル

このポストがわかりやすい。写真上部にある円形のバトン(でいいのかわからないが照明が吊ってあるので便宜上バトンと呼ぶ)が上下し、座ったり布や看板を吊るしたりして宮殿・教会・カフェなどを表現していた。照明吊ったまま高速で降りてきて場合によっては地面につくし、上にトートは乗るしでけっこうひやひやしました。

他に道具として登場したのはシシィの部屋のドア部分、フランツの執務テーブル、ソファ、バルコニー、器械体操室程度だったかな。あとはシンメトリーになるように白い装飾が袖に置いてあり、天井からもぶら下がっていた。

代わりに大活躍していたのがせり。舞台上を縦横それぞれ4分割してあるせりがフル稼働し舞台を物凄く立体的にみせていた。あっという間に大階段が出来上がったり、波のように舞台が動くシーンもあり迫力満点。ただこの演出はおそらく最前でなおかつ舞台と同じ高さで観たからこその感想かなと思った。舞台から遠く高い位置から観てしまうと立体感が伝わりづらく少々退屈な演出かもしれない。

この辺は公演日数やスパンの関係上仕方ないんでしょう。

 

ちょーっと残念だったのはオケ……。特に金管とキーボード。あちこちでキツそうなところが。トランペットソロの高音でこけるとどうも目立ってしまい、うーん。カテコの際オケピを覗くとかなりの少人数編成で、特に金管はトランペット1トロンボーン1ホルン2のみでした。フルートとアルトサックスが兼任だったりと他にもいろいろ大変そう。

演奏は全体的にアップテンポ。最後のダンスや闇が広がるなんかはロック調のアレンジがかかっていて楽しかった。ギターも入ってました。最後のダンスがより顕著。ラスサビから一気にテンポが上がり、舞台上はトートの独壇場に。日本だと今年リリースされていたアルバム収録の伊礼彼方さんが歌う最後のダンスが近いかもしれません。

楽曲アレンジまでかかるとかっこよさ倍増ですね!それだけにオケはも少し頑張って欲しかったなと思っちゃったり。

 

役者陣は非常に良かったです。

まずシシィ。身長はあまり高くはないものの迫力がある美人。声も見た目に違わず「強い」。歌も素晴らしかった!バズーカ型のシシィってなかなかお目にかかれないじゃないですか。♪私に〜も力強い歌声を保ったまま歌い上げていた。先ほど述べたシシィへの演出も相まってトートにも帝国の運命にも踊らされない力強いシシィだった。

次にトートまず歌がほんっっとうに上手い。めちゃくちゃに上手い。ハイトーンに勢いがあって最高だったし長音も全く勢いが落ちないまま綺麗に音が響き続ける。永遠に聞いていたい。これで28歳らしい。28でこのクオリティなの凄い。トートというキャラクター造形としては、やっぱりシシィ主体なんだなと思わせる部分が多かった。シシィが生み出した死の概念・シシィを翻弄しているようでその実翻弄されているのはトートの方だと感じる面もありました。

ルキーニは歌で作品を推し進めていくような圧倒的な歌唱力ではなかったんですが、これは愛されるルキーニだなと思った。板上に常にいてくるくると表情を変えながら観客をガイドしてくれるので思わず目がいってしまう場面が多かった。

フランツはシシィへの想いの強さがひしひしと伝わってきた。加齢の表現がもうひとつ欲しいなーと思ったり。田代フランツがうますぎるんだよな。余談ですが役者さん本人のお名前もJozefでした。

ゾフィーは完全にビジュアルインパクトに持っていかれましたね。こちらのゾフィー大変恰幅がよろしい。舞台上にいると一発でわかる。私の中のイメージが完全に涼風真世さんだったのですごい衝撃。たしかに、シシィにとっての意地悪な義母という印象は分かり易い。初期の隆盛ぶりが凄い分最期の哀愁が際立っていてよかった。またそこで黒天使に迎えさせわかりやすく死を表すのではなくソロナンバーの後はけていくゾフィーの後ろに静かにトートが付いていたのも良かった。

そしてルドルフ!なんたってルドルフ!子ルド青年ルドそろって今回の私のMVPです!!カテコで顔見た瞬間号泣した。観客の同情を攫うのがべらぼうに上手い。子ルドはシシィに呼びかけ、無視された直後の一瞬の表情があまりにも悲痛で。一瞬で観客の心をもってくのに十分な演技だった。♪今日も猫を殺した で客席から笑いが起こっていたのは謎。ちょいちょいツボの違いを感じるんですよね〜。青年ルドはまず本人の顔だちがすごく若々しい。10代って言われても通じる。(後々調べたら25だった)そもそも退廃的で破滅を連想させるような役柄のルドルフに「希望」「青春感」など喪失させたくないものをうまく取り込んでいた。この子を死なせたくない、どうして死ななくちゃならないんだろうと思わせる演技が印象的だった。

プリンシパルキャストのビジュアルの雰囲気が伝わるポスト

 

カーテンコールはお祭り状態で楽しかった!ルキーニがキッチュ、トートが最後のダンスを追加で歌ってくれて、ルキーニの方は\キッチュ!/のコーレスまであった。最後はキャスト全員でプローローグの♪エリ〜〜ザベート の部分を歌って終了!本当に楽しい公演だった。

11/30プレミアデーのカテコを舞台袖から撮影した動画を発見したので貼っておきます。もちろん歌唱部分もみれるので是非。

 

この公演のお陰で物凄くエリザベート熱が高まりエリザが観たくて仕方ない。もう一枚くらいチケット取っておくんだったと大後悔中です。

日本に帰国してちょうどすぐ博多座公演が開くのでそれまでの辛抱……。でも追加したいのはチェコ版なんだよなーというどうにもならない欲求……。この不思議な中毒性ってなんなんでしょう。

キリがなくなりそうなのでこの辺で、ではまた!

 

 

*1:帝国劇場 ミュージカル『エリザベート』

*2:そんなことは全く無かった

*3:これまでのミュージカルチケット代比較 キャッツ(墺)二階上手見切れ席>アナスタシア(蘭)一階下手後方>TdV(独)一階上手後方>>>>エリザ最前>レミゼ(洪)一階10列目センター どゆこと

プルゼニュ観光─チェコ国内の都市紹介

せっかくなので訪れた都市くらいチェコについて紹介していけたらと思いまして。

今回はチェコの西側に位置する街プルゼニュに行ってまいりました。ボヘミア地区の森林のはずれに位置するここは、周辺を四本の川が流れており、そのおかげでビールの醸造が発展した都市。有名な「ピルスナー・ウルケル」のビール工場がこの都市にある。

そして行くならオンシーズン!春から秋の初めにかけてがオススメです!!ってめっちゃ思った。これについては後述。

 

ブルノから直行で行けるバスや鉄道はないためプラハを経由するのがわかりやすい。所要時間は乗り換え時間も含めておおよそ5時間ほど。観光客のほとんどが拠点にするであろうプラハからは一時間半ほどで簡単に行くことができる。

 

街自体は小さいので一日あれば十分観光することができる。それでは早速観光〜!

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まずは、聖バルトミュロイ大聖堂。旧市街広場の中心に立つこちらは街のランドマークにもなっています。広場には申し訳程度にクリスマスマーケットの名残が残っている……笑。

残念ながら、現在2020年までの大規模工事のため内部見学は出来ません。ですがチェコで最も高い、およそ102メートルにもなる塔に登ることは可能。

塔の頂上までいくための階段がなかなか急な上に多く、登り切るのは結構大変。

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登る途中で見学できる教会付きの鐘 よぎるせむし男

登りはただただ疲れるだけだが下りがとにかくこわい。

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私「やばいめっちゃ怖い堂本光一になる」友人「なにそれ」

息を切らしながらなんとか登り切ると街の景色を堪能できる素晴らしい景色が待っている。

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高さが伝わるだろうか。

ここまで自力で登ったと思うと中々感慨深い。ちなみに煙を上げているのは先述のビール工場。

 

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この建物はシナゴーグ。世界中にあるユダヤ教会のシナゴーグですが、なんとプルゼニュにあるものは世界で3番目、ヨーロッパでは2番目に大きい!(世界で一番大きいものはニューヨーク、二番目はブダペストにある)

残念ながら中に入ることは出来なかった。ここが開いているのは4月から10月までの土曜を除く10時〜18時。この時期はやってないんですね〜〜。

外観だけでも楽しみました。

 

 

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付近には歴史を感じる素敵な映画館や緑が美しい公園があります。

とっても綺麗なんだけど、オンシーズンは花が沢山咲いていてもっともっと綺麗らしい。今の時期は凍結防止で噴水には全て蓋がしてあった。お目当てだったプルゼニュ生まれのマリオネット人形、シュペイブルとフルヴィーネクの銅像も木箱の中にしまわれており……銅像までしまわなくていいじゃない!と思っちゃった次第です。

 

一通り旧市街を巡ったら、プルゼニュ観光のハイライトピルスナーウルケルの工場に向かいましょう。

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工場の門

一歩足を踏み入れるとあたりは発酵したポップの匂いが立ち込めています。

見学はツアーでのみ可能。英語のツアーは毎日13時、14時45分、16時30分発です。ここで重要事項。ツアーの申し込みは事前にオンラインで予約しておくのがおすすめ。ネット記事などにはあまり人がおらず飛び込みでも大丈夫そう、と書いてありましたが私が行った時には英語のツアーは完全にソールドアウトだった。

ただ、工場見学の一番の目的と言っても過言ではなかったフィルターを通さない『ろ過される前のビール』は工場内併設のレストランでも楽しむことができる。

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濃厚で飲みやすくて美味しい。ここでしか飲めないビール、是非とも味わっておきたい。

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見所に事欠かないプルゼニュ、是非一度訪れて欲しい場所です。

そして今回プルゼニュにはとある目的があり訪れたのですが、それは次回記事で書きたいと思います。