霧のブルノエアポート

チェコのブルノを拠点に浴びた芸術などについて記録。

ガラクタの隙間から覗く舞踏会─ミュージカル『キャッツ』 ウィーン/ローナッハー劇場

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何をこんなに生き急いでいるんでしょう。

現在ウィーンのローナッハー劇場で公演中の『キャッツ』を観劇してきました。1週間のうちに3本もミュージカルを……我ながら贅沢。

現在東京の大井町でも絶賛公演中の本作。ウィーン初演は1983年、その後2012年にも公演があったみたいですね。キャッツの公演成功で不況だったローナッハー劇場が安定したという歴史もあるらしく、劇場にとっても特別な作品。

 

私のキャッツ歴はというと、日本で3回みており人生4回目。ただしはじめの2回は物心ついてなかったので実質2回目。小さい頃に白タガーを拝んでるらしいんだけど、残念ながら覚えてない……もったいない。3回目はつい最近大井町のキャッツシアターで。

CDは聴き込んでいるので歌詞は完璧!ドイツ語がわからなくても脳内日本語字幕が助けてくれました笑

 

・劇場内へ

歴史ある劇場らしく、中はとてもクラシックなつくり。3階席までは赤い絨毯の敷かれた階段を登っていきます。

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3階ホワイエのテーブル

物販は3階でも行われてました。

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Tシャツやパーカー、マグカップ・ボールペンなどなど。猫耳なんかもありました。かわいい!気になるのはぬいぐるみ。黒猫・白黒・白とグレーの3種類あって、一見普通の猫のぬいぐるみなんだけど……きっと、ジェリクルキャッツなんでしょう!

客席内ももちろんクラシックな劇場でとても豪華。そことキャッツの舞台であるゴミ捨て場が混在しててギャップが面白い!

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ちょうど境目の部分

そしてこの公演なんと英語字幕付き。ミュージカルに字幕がつくのは初めてだったのでびっくりしました。上の写真の真ん中あたりにあるスクリーンにオリジナル版の歌詞が出る。私の席からは見辛かったのと脳内日本語字幕に頼り切りだったのでほとんど見なかった。

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スクリーン 近くに行くとこんな感じ

さて、自分の席に向かうと……大問題が発覚。

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お金がなく、低いカテゴリーの席にしたのが大間違い。凄い見切れる。サイドシートなんてものじゃない、上手がかなり隠れる。一応59€のお席なんです。こっちにいる間はバイトもできないので個人的には頑張ったお値段。

まさかここまで大きい見切れがあるとは思わなくてしょんぼりていた。でも幕が開くとこの席からは通路を歩く猫の動線がすごくよく見えたり、指揮を映しているモニターが見える事が判明して気持ちを持ち直す。席の下、凄い近いところまで猫がきてこちらを「見上げて」くれたのも嬉しかった。

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少々わかりづらいがこの真下の狭い通路に猫が降りてくる ちなみに来てくれたのはディミータとカーバ

あと、オペラグラスを使うとゴミの隙間からなんとか上手の様子もチラ見出来た。後半はもうむしろ自分が猫になった没入感をこれ以上なく味わえてるのでは?と謎に楽しくなってきていた。

そんなわけだったので、以下の感想はすべてこの視界からお送りしていることをご了承下さい。着席早々絶対に全景見える席でもう一回観にくるぞ、と硬い硬い決意をしたのでした。

 

・開幕

さすがウィーン。音がいい……!まず生オケ、生オケなんです!オーケストラピットは裏にあるみたい。とにかくオーケストラの音圧が凄くて、オーバーチュアの一音目から圧倒される。それに負けじと歌のレベルも当然のように高い。本当に凄い。

既に結構記憶がないのですが、思い出しつつ印象に残った曲ごとに感想を連ねていきます。

 

オーバーチュア〜ジェリクルソング

やっぱりキャッツの世界に一気に引き込まれるこの二曲。オーバーチュアに合わせ猫が続々登場してくるとああ、はじまった!と凄く胸が高鳴る。それから歌もさながらダンスが見所のこのナンバー。劇場の関係で舞台上がかなり狭く、見た時は踊りにくそうだと思ったが空間の使い方が上手いのか踊り出すと全くそんなことはない。舞台上で起きている事が常に凝縮されているので濃いな、という印象。

なお巨大靴は落ちてこない。驚かないよう構えていたが何もなかった。

 

ジェニエニドッツ

物心つく前に見た後唯一記憶に残り家で歌っていた思い出の曲。笑 曲序盤、下手端でタップ用の靴に履き替えゴキブリスタンバイする様子がみえてちょっと得した気分。

「いえ、」の後のマンカストラップの顔がいいですね。「えぇ?ちょっと、知らないんだけど」みたいな顔。このマンクは全体的に天然な雰囲気だった。

 

ラム・タム・タガー

イントロをきくだけでもう、待ってました!と。本当に最高だった!セクシーな腰の振り付けは完璧、鳴き声も気取りながら「タガーらしい」素晴らしい鳴き声。表情のつくり、一挙一動がセクシーで魅力的で、どこをとってもザ・タガー。(何を言ってるんだ)

タガーは周りを煽る動きが多く、狭い舞台上を自由自在に駆け巡って完全に劇場の雰囲気を持っていく。「ごむ〜〜〜」もあの腰つきをたっぷり見せてくれながらいい声を響かせる。雌猫を気絶させた後はフイッと前に顔を戻すタイプだった。表情が特に好き。よく「!」みたいな顔をしていて、それが可愛い。ランパスナンバーのパグパイプで皆に注意されたあとのしょぼぼとした顔も良かった。

それと、この曲中マンクがわりとノリノリで新鮮。君楽しそうだな!?曲の最後にタガーがマンクのところにちょっかいかけにいって思い切り引っ掻かれてたのも最高だった。どこかでマンクが声張って歌うのに合わせて白目剥いてあくびするタガーがいたんだけど、どこだったか忘れてしまいました……。

 

マンゴジェリーとランペルティー

曲は新演出版のアップテンポな方。旧版を聴けるかなとちょっと期待してたので残念。このナンバーを生で聴いたのはソンダン*1大井町キャッツだからこっちの曲調の方が聴いてるんだけどどうしてもCDの刷り込みが強く。

あの二人の交互に側転するようにグルグル回るダンス(伝われ)、あれを観るとキャッツだ!って気分になる。

 

オールドデュトロノミー

こちらのデュトロノミー、声が高め。あと結構動きも軽やかでデュトロノミーにしては若いなーという印象。ミストのナンバーの時もタガー・マンクと両手を繋いで一緒にぴょんぴょん歩いていらした。高音の歌声も素敵だったけど、もう少し低く渋い音が聴きたいような。

ちなみにデュトロノミーは幕間も舞台上にいて、なんとツーショットが撮れちゃいます。せっかくなのでバッチリ撮ってきました。

 

ガス〜グロールタイガー

正直一番インパクトが強かったナンバー。主にグロールタイガーの部分が。

というのも、知ってる曲と全くの別物!ガスはお馴染みの曲。でもグロールタイガーの方は完全に初耳!なにこれ。当然聞いた事がないので消え去る脳内字幕。突然なにを言ってるのか一切分からなくなりパニック。唯一グリドルボーンのパート(「グロールタイガー私に心奪われ〜」)は日本と同じで、あとはフルチェンジだった。

海賊グロールタイガーの部分はスィングジャズ調の曲。衝撃で脳が働いてなかったものの曲調自体はかなり好きだったのでここは聴き込んだらハマりそう。ラブソングはイタリア語?なぜ……。シャム猫の曲は所々に面影を感じるものの別物に。言語がわからないからマンゴとランペのやつみたいに曲だけ変えてるのかそれとも歌詞ごと変わってるのかも分からず。旗振ってなかったから歌詞ごと変わってるのかな。

大井町公演は大千秋楽が決まりましたがその後どこかではじまるとして、もし日本もこのバージョンになったらかなりショックかも……。

 

スキンブルシャンクス

一番好きなナンバー!聴くだけで心がうきうきしてくる。思わず手拍子しようとしたら誰もしてなくてサッと手を下ろした。この曲を最高のオケで聴ける幸せと言ったら……。それからスキンブルの声が素敵。自然と耳に残って惹きつけられる声。さすが夜行列車のアイドル。

寝台列車〜のところの振りが、足を地面から10cmほど上げて上体を軽く起こす腹筋みたいな感じで大変そうだった。それぞれが列車の真似をする振りもあり、一緒にやろうとしておっとっと、となってるデュトロノミーと慌てて支えに入るタガーがツボ!残念ながらヤクザなマンクはみられなかった。

全体的な振り付けは日本版の方が好きかも。

 

マキャヴィティ

ボンパルリーナの歌声が超好みだった。純粋に好みの話なら今回一番好き。

大人の魅力溢れる、タガーとは別ベクトルでセクシーな声。物騒な曲にも関わらず聴いてるとうっとりしてきてしまう。

マキャファイ*2は座席の関係で殆ど見えなかったんですよ……。ちらちらと隙間からマンクの顔が見えたので必死にオペラで追いかけた。座席の関係でスキンブルナンバーの最後のあたりでマキャヴィティが出てくるところにスタンバイしてるのがバッチリ確認できて面白かった。

 

ミストフェリーズ

このナンバーで会場のボルテージが最高になる。

猫特有のしなやかな動きが飛び抜けて上手く、(1番のダンスメンだから当然と言えば当然)最初から目を持っていかれがちだったミスト。ここではその動きを遺憾なく発揮。回転はもちろん、マジックの時の身のこなしが本当に滑らかで凄かった……!あと後ろで煽ってるタガーの顔ね。自分は何もしてないのにすごいドヤ顔!

最後の口上を言ってもらうためタガーに耳打ちするミストが、完全にタガーの襟のもふもふに顔を埋めてるようにしか見えずとっても可愛かった。耳打ちされてるタガーの「ウンウン、了解だぜ!」みたいな顔もかわいい。

 

モリー

歌がうまい。

正直これにつきる。グリザベラについては、ビジュアルにちょっと違和感があったりしたんだけど歌を聞いたら全部どうでも良くなった。

「お願い、私を抱いて 私に触って」の迫力。鼓膜がビリビリ震えるような歌声。これを聞かされたあと旅立つグリザベラを観た時の感情は一種のカタルシスのようなものもあるんだろう。曲の後もしばらく拍手が鳴り止まなかった。

 

 

初の生オケのキャッツ、とっても幸せ。

カーテンコールではグリザベラに加えて、タガー、スキンブル、ミストに特大の歓声が上がってました。最後まで舞台に残ってるのがタガーなのはウィーンでも同じで面白い。

そして今度こそ隙間からじゃなく全部を楽しむためにもう一度観にきます。

ではまた!

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*1:『ソング&ダンス65』 劇団四季65周年の節目に全国で上演された劇団四季の名曲をショー形式で披露していく作品 https://www.shiki.jp/applause/songanddance/

*2:VSマキャヴィティ