霧のブルノエアポート

チェコのブルノを拠点に浴びた芸術などについて記録。

ダンスしてくださいヴァンパイア─ミュージカル『ダンスオブヴァンパイア』 コペンハーゲン/新劇場

ドイツ版TdVの記事でコペンハーゲン公演「検討します」と言ってたデンマークTdV、行ってきました。

先月末大阪で熱狂のうちに幕をとじたTdV、それを引き継ぐように1月23日からデンマークコペンハーゲンでも公演が始まりました。デンマークでの公演はこれが初。ロンドンで9公演観た直後だしなあと思ったんですが、ウィーンミュージカルは演出が国によってだいぶかわるので見比べたいと思って足を延ばした。本当は8日に某ミュージカルのパリ公演も観る予定だったんですが……。

演出家の肩をつかんで前後に揺さぶりたくなった。演出意図が知りたい。

物凄くよかった演者もいたし、いい意味で意表を突く演出もあったし最後はそれでちょっと泣かされたりもしたのだけど、全体的には「びっくり」そして「がっかり」な点が多い……。ネガティブなことが多めの記事になることをお許しください。

 

・劇場について

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会場はコペンハーゲン中央駅付近に位置する新劇場(Det Ny Teater)。駅から徒歩10分ほどで到着する。アクセスの良さは抜群。

劇場内の雰囲気はいままで言った中でもトップクラスで好き!螺旋階段があったり豪華なシャンデリアがつってあって、TdVの雰囲気にピッタリ。あと、劇場スタッフさんの制服がめっちゃかっこいい。高級ホテルのスタッフみたい。

トイレの位置がわかりにくいのが玉に傷かもしれない。

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お城のような内部

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一応撮影したキャストボード

客席内は3階だてで、今回は一階の真ん中あたりから鑑賞したんですが……笑っちゃうくらい客席がうまってなかった。多分半分もいない。座席真っ赤。土曜ソワレなんですけど……。

チケットサイトや現地の雰囲気的に二階席三階席はある程度はけてるようでしたが、さすがに大丈夫か心配になってくる。やはりウィーンミュージカルだと演目の知名度の問題とかもあるのだろうか。後ろに座った人も英語で会話していたので国外からのお客さんもそれなりにいるのかな。公演は 4月9日まで。がんばってほしい。

 
・開幕

演出の話。まあブログタイトルの通りなんですが。

まず、ダンスが弱い。TdV的にこれ以上ない悲劇。

TdVのみどころのひとつといえば、一幕の赤いブーツと二幕の悪夢のところのヴァンパイアダンサーによる圧巻のダンス。なんですが、まさかのヴァンパイアダンサーがおらず。そんなことある……? 赤いブーツのシーンはアンサンブルが4ペアのみ登場し、ワルツっぽい振りをちょっとだけ踊るなかサラと伯爵が歌う。しかもダンサー陣はすぐはけちゃうのでしばらく二人で歌ってるだけ……。赤いブーツのダンスを楽しみにして来たのに~~!悪夢のシーンはサラとの結婚式の最中シャガールがサラを噛んでサラがヴァンパイアになっちゃった!みたいな悪夢の実演をしてました。なしではないのだろうけど、ダンス、みたかった……。

正直M3ニンニクの時点で振りの割に動きがバラッバラだったので少し嫌な予感はしていたのですが……。ヴァンパイアダンサーが出てこないとは思わないじゃん? ダンス専門チームがいないからM21永遠のダンスもいまいち迫力に欠けるし……全体的に振りが小さく見ごたえがないというか……踊って~~!!!

 

衣装は、お金をかけているのはものすごく伝わった。目をひいたのは村人衣装と舞踏会のドレス。村人はみんなルーマニアの民族衣装を着ているのでとってもカラフルで舞台上がすごく華やか。その中でマグダだけスカートが短かったりとキャラクターごとに個性があっていい。

マグダ衣装 二枚目がわかりやすい

舞踏の間のドレスはデザイナーのこだわりを感じた。全ての衣装に細かい装飾が施されていて、多分一着一着時間をかけてデザインされた衣装。伯爵も何度か衣装替えがあって力が入っていた。サラのドレスも黒に金の装飾が入っていてとてもきれい。黒? 


黒。

サラといえば赤いドレス!のイメージだったのでちょっと衝撃。私はサラが徐々に血の色である赤を纏っていくのってすごく象徴的だと思っていて、少女からレディに変えられるうえで処女性の喪失なんて意味もあるのかな~と勝手に深読みしていたりもしたので……。このシーンの伯爵の衣装はワインレッドで、心の中で逆!逆!!って叫んでました。ただ黒いドレスだと噛まれたシーンで首筋に垂れる血がきれいに見えて、これを狙ったのかなと思った。

他にもところどころここでその衣装なのはどうして?ってところが多く。演出なのか? 筆頭がM10外は自由。ここでサラも部屋着じゃなく民族衣装を着ているのですが、すると何が起こるかというと服がすごくカラフルなので赤い靴がまっっったく映えない。そもそもプレゼントされるのが赤いブーツではなく赤いハイヒールで、面積が少ないからただでさえあまり目立たないのに。しかもサラが民族衣装を着るのはこのシーンだけ。よりによって感。

 

あとは場転のしかたが煩雑だったり、セットに予算をかけられていないのを感じてしまったりもしたのだけど、再演も決まっていない中の公演だと仕方ないのだろうか。力入れるとこそこ?ってところが多々。ある程度ロングランなわけだしもう少し頑張ってほしかった。

 

 

演者に関して。アルフレートと教授が素晴らしかった。すっごくよかった。後述するラストの演出もあいまって、今回この二人の物語だったんじゃないかと思うほど。

アルフと教授 アルフは眼鏡

特にアルフは、このアルフをみれただけ来てよかったと思わせてくれるアルフレートだった。歌も申し分ないが、役作りがすごい。日本のアルフ像であるいわゆる「ヘタレ」な感じではなく(2019年版はあんまヘタレじゃなかったっぽいですが置いておいて)、むしろ少しナルシストでプライドも高そう。自分は優秀だとおもっていて自信があり、サラにも結構積極的に触れていく。……んだけど、実際ヴァンパイアに対峙したときは動けなくなるちょっとダメなタイプ。だからクロロックに誘惑されたときは自分が評価されたことが嬉しくすぐに絆されるんですね。教授には仕方なく付き合ってる感じを出しているがヘルベルトに襲われたときは必死に名前を連呼したりとなんだかんだ本音では頼りにしているんだな~というのが感じられた。

私はアルフレートが一目ぼれとはいえちょっと喋っただけの女の子をどうして命を懸けてまで助けに行こうと思えるのかよくわからなかったんですが、少なくともこのアルフはサラのためというより自分のために動いてた。恋に恋してる。『サラのために命を懸けている自分』に酔ってる感じがしました。

教授はラストに全部持ってかれた。コペンハーゲン版で他と大きく違ったラストの演出。教授はアルフがサラに噛まれた瞬間を見てるんです。アルフがヴァンプ化したのに気づいて必死にサラからアルフを取り戻そうとするんだけどできずに、手を伸ばしたアルフにも威嚇されてすごすご引き下がるしかなく。だから、フィナーレの歌いだし「我々は今勝利した人類は救われた」がめちゃくちゃ悲観的。歌詞このままだと合わないしどう訳されてるのか気になった。このパート一人でか細い照明の中歌うのですが、曲も短調にアレンジして悲し気に演奏されるので超つらい。理性が世界の希望だと必死に言い聞かせている感じだった。端々から弟子をかわいがっているのは伝わってきていたのでアルフが自分から離れていったときの表情がつらかったです。

前回ドイツで観た時は終わった後たのしかった~~!!!て感じだったのに今回は終わった後なんか……こわっ……ってなった。

 

サラもよかった!キュートで色気もしっかりあって、少々強引に迫ってくるアルフレートをしっかり翻弄していた。見たこともない世界へのあこがれや抑えられない好奇心があふれ出してくるような歌声も素敵。表情の作り方がうまく、役者さんの雰囲気に役がしっかり嵌っていた。アルフとの声の相性もぴったりでデュエットがきれいに響く。相手を邪魔しすぎず聞かせるところは聞かせる歌唱。

クロロックは人の子(人ではないけど)っぽかった。感情にすごく振り回されている。感情をくだらないと切って捨てる教授との対比になっているのだろうか。個人的にはもう少し超然としていてくれた方が好みではある。あと衣装さばきももっとジャケットをバサァッってしてほしいな~と思ったり。これも好みですね。

 

あとヘルちゃん。ヘルちゃん好きなのでヘルちゃんの話をします。

アルちゃんとヘルちゃん 風呂場のシーン

一幕ラストで登場した瞬間から所作がキュートというか魅せ方が違うというがまとっているのが夜の雰囲気で。いやまあヴァンパイアだから夜なんだけど……一人だけネオンの世界で生きてる感……(???)。アルちゃんに迫っていく姿も凄く板についているし、極めつけがフィナーレのダンス。まず衣装が多分誰よりもセクシー。大きくあいた襟にフリルがついた黒いブラウスの上からコルセットを締めており、申し訳程度の丈のホットパンツからは網タイツに包まれた信じられないほど綺麗な脚が伸びていた。ブーツのヒールは軽くみて7㎝はある。それでガシガシ踊るから何者だよ……と思ってたら、なんと役者さんがプロのドラァグクイーンとして活躍されてる方らしい!納得。


役者さんのインスタグラム 美脚……

フィナーレヘルちゃん(の脚)ばっかり見てたせいで記憶があまりない。振りがダサかったのは覚えてる。

 

 

良くも悪くも目新しい演出に出会えはしたものの、ダンスが見れなかったのが残念。今回の日本公演では舞台装置が刷新されたらしいので、近いうちにまた日本でもやるでしょう。その日を楽しみにしておこうと思います。

ではまた!

ロンドン観劇旅行まとめ

2月頭にロンドンに観劇旅行に行ってきたのでそのまとめです。8日間ロンドンに滞在して、うち2日移動日だったので6日間でひたすら演劇を浴びてきました。流石にいつもみたいな単記事を全部に書くのは大変なのでまとめて。そのうち書きたい奴だけ書くかもしれない。

 

2/2  舞台『ハリーポッターと呪いの子Part1&Part2』マチソワ 宮殿劇場

今ちょっとタイムリー過ぎてビビってる。今回の本命の作品のひとつ。

もはやあちこちでニュースになっているから説明はいらないかもしれないが、ハリーポッターシリーズの正当な続編に位置する演劇作品。物語は原作最終章、ホグワーツ大戦から19年後ハリーの次男であるアルバスがホグワーツに入学するところからスタート。全編が5時間と非常に長く二部に分かれているので、見ようと思うとマチソワか2日連続ソワレに劇場に通う形になる。主な主人公はハリーの次男のアルバスくんとドラコ・マルフォイの一人息子のスコーピウスくん。と、こんな形なのでハリーポッターシリーズのストーリーが一通り頭に入っていないと話がさっぱり分からない。作品ファン向けの演目。この形で演劇作品として集客があって成り立つのハリポタという強いコンテンツ力を感じる。

どはまりしました。そのうち単記事を立てたいけどどうだろう。

はまったのは役者の演技によるところがかなり大きいかなと思う。演出の目新しさとか、『物凄い演劇』を求めていくと少し違う。たしかに魔法の演出などは工夫が凝らされていると思うし、あと劇場全体をつかって作品世界・魔法界に引き込むやり方なんかは流石でしたが。専用劇場じゃないとできない演出なんかも多々。お金かけてるな~みたいな。脚本は(読んだ人はわかると思いますが)ファンですら多少賛否ある仕上がり。ファンだからこそ、かな。私もデルフィーの設定にはあまり納得がいっていない勢です。

元々戯曲は出てすぐに英語で、その後日本語で一度だけ読んだことがあったので結構忘れてるもののざっくりした内容は頭に入った状態での観劇。これは正解だったと思う。かなりの密度のストプレを5時間、コテコテのブリティッシュイングリッシュで浴びるので今の私の英語力だと結構疲れるのと集中がもたない。話を知っているからこそアルバスとスコーピウスの関係の機微とか、ハリーやドラコなどのキャラクターの掘り下げなんかに集中できてのめりこんでった感じ。作品のファンとしてみたい解釈のところを深く見せてくれるからキャラクターに思入れがあると嵌る。セリフのひとつひとつが重たくて一部でも二部でもいろんなところで泣いてました。

スコーピウス役のジョナサン・ケースくんの演技が非常に良かった。喜と哀のコントラストがきれいだった。基本的に明るくふるまっているキャラクターで楽しそうな時は楽しそうであるのだけど、哀しみが根っこにありそれがむき出しになったときの破壊力が凄まじい。顔を真っ赤にして涙をぬぐいながらセリフを言っている姿が大変印象に残っています。ドラコの場合泣くことを自分に許していなかったろうしまして父親の前でなくなんてもってのほかだったと思うので、スコーピウスが素直に涙を流せる子だというのはそう育てたドラコとアストリアも後ろに見えるようでうれしい。体格が大きく(おそらく185㎝くらい)彼の杖とおなじく常に猫背になっているのが背負っているコンプレックスを象徴しているようだった。あと単純に間の取り方とかセリフ回しが上手い。年上のキャストも多い中客席の笑いを一番かっさらっていってた。すごい。

 

まんまと嵌ってロンドンから帰ってきた後もこの舞台に頭を持っていかれていたわけですがまさかこのタイミングで日本公演が決まるとは思わなかった。

現在戯曲が日本語でも出ているが、もし日本公演を観たくてこの機会に予習したいなって人がいたら少し待ってみてほしい。この作品のはじめてを劇場で得られる機会があるならそれを優先してほしい。間違いなく、作品としての威力が最大になるのは演劇という形式をとったときだから。これまでもしそれを得たければ海を越えなきゃいけなかったし、それが難しいから戯曲で作品に初めて触れた人が多いけれど、気軽に完成した形で触れられるようになるなら絶対にそれが初めて作品に触れる機会にした方が面白いと思う。日本公演で初めて呪いの子に触れられる人たちがとても羨ましい。記憶消したい。だから大歓迎だし超楽しみです。日本公演。(欲を言えばWSSみたいに日本公演の前に来日やってくれたら最高だけど……ないよね……)

単純に読み物として読みたいって人はもちろん読んでみてください。スコーピウスくんをよろしくお願いします。

 

 

 

2/3  ミュージカル『ウィキッド』ソワレ アポロ・ヴィクトリアシアター

2日目は四季で観れていなかったけどずっと見たいと思っていたウィキッド。当日券チャレンジに大勝利し£30で一階前方席をゲット。この演目は当日券でとるのがおすすめ!アプリで簡単に取れるし!

今回予想外に一番刺さって一番泣いた作品。四季好きな方を見ているに、圧倒的に再演を望む声が大きいのがこの作品だなと感じていたわけですが、理由が非常によくわかった。これは何度でもみたいしまた日本でもやってほしい。もっとハッピーミュージカルだと思ってたのに、For good以降はずっと泣いてました。嗚咽漏れそうになって目から下を全部ハンカチで覆う羽目になった。とにかく唯一無二の相手とか誰にも代えがたい存在とか、お互いそう思っている二人が2度と会えなくなるったり引き離されたりそういう描写に弱いんだな……。生死すら知れないのは切ない。それからOne short dayで舞台上が緑にあふれて、視覚的にエルフィーが世界に溶けこんでいるのがわかりやすくて、そこの二人のやり取りでちょっと泣いてたしDefying Gravityは照明が神々しすぎて神話じゃんって言いながら泣いてたし二幕のI'm not that Girlのリプライズはこのリプライズはオタクに効く……って呻きながら泣いてた。グリンダが渡した帽子が最後までエルフィーのそばにあったのが救いだった。

オズの魔法使い』の物語を知ってると、オズ本編につながったときに何が起こるのか察せてしまって恐ろしいですね。嵐が起きた瞬間ネッサがどうなるかわかってしまって鳥肌がたった。知っているというのは怖い。

アナ雪とこの作品の関連性を知ったうえで、先にアナ雪を見ていたから順番としては反対でもどうしても作品構造として意識はしてしまった。ウィキッドを踏まえると、Frozen2の二人の結末にはさらに考えさせられるところがあるなあと思ったり。ハッピーエンドではないよね、ウィキッドもF2も。

 

 

2/4  ミュージカル『レ・ミゼラブル』ソワレ ソンドハイムシアター

今回の本命その2!最新のレミゼ

12月から始まった新演出ソンドハイム版。これまでの新演出がさらに新しくなった『ソンドハイム版』だというのは知っていたもののどの辺がどう変わったとかは情報を入れずに観に行きました。結構変わってたね!

これね……うーん、何が原因かわからないんですが、私うまく入り込めなかったんですよね……。聞きなれた英語詞のはずなんだけど。変更点に驚いていたせいなのかなんなのか。泣き度でいえばハンガリー版のほうが泣いたかな……。曲のテンポの問題は少しあるかもしれない。

観劇メモを見返すとグランテール……と遺言のように書いてあるだけで何の参考にもならなかった。グランテール、Drink with meから明らかに様子がおかしい。仲間の戦闘中もひとりだけ面よりで寝てるようにうずくまっていたりだとか。これは原作を想起させてきつかった。ガブ死からは必至に仲間を留めようとしていたようにも見えって……最後はどんな想いで打たれにいったんだろう。

アンジョルラスやジャベールにもかなり思うところはあったもののまだうまく言語化できない。もう少し噛み砕きたいな~という感じのソンドハイム版だった。

 

 

2/5  舞台『ハリーポッターと呪いの子Part1&Part2』マチソワ 宮殿劇場

おかわり。この日は演目が決まっておらず、本当はDear Evan Hansenとオペラ座とCOME FROM AWAYと&Julietで迷っていて当日券みてきめようとか思ってたんだけど一応と思ってHPCCの当日券をのぞいてみたところ4列目のセンターというとんでもない席が戻ってきており気付いたら購入していた。こういうことあるよね。おかげで残高がえらいことになってるが後悔はしていない。

結果的におかわりして大正解だった日。この日はスコーピウスくんのキャストがアンダーのルーク・サマーくんになっており、ちょっとジョナサンくん目当てでチケット追加したところはあったので一瞬がっかりしたが二人のスコーピウスくんを見比べてかなり視点が広がったので本当に増やして良かった。ルークくんはまずなによりジョナサンくんに比べてセリフが圧倒的に聞き取りやすい。ノンネイティブに優しい。ジョナサンくんの活舌が悪いとかでは全くなくて、演技プランの問題。ジョナサンくんのスコーピウスはセリフ回しがかなりギークな感じで独特だから英語慣れしていないと結構正確に聞き取るのがハードだったりする。対してルークくんは割と正統派でまっすぐな役作りなので、セリフも、あと感情の機微もわかりやすい。より子供らしいといえばそう。ドラコとの距離感が近いのも面白かった。なんだかんだ一番いい親をしてるのってドラコなんですよね……。

前回演出面ではあまり刺さらなかったが近くで観ると迫力がすごくてかなり印象が変わった(そりゃそうだ)。衣装が細部まで見られたのもうれしい。二幕冒頭のスコーピウスの衣装がすごい好きです。

 

 

2/6 ミュージカル『メリー・ポピンズ』マチネ プリンスエドワードシアター

前日に続きマチソワ。ひとつめはメリー・ポピンズ。日本公演に行けなかったのでミュージカル版は今回が初見でした。

前情報ゼロだったのでほぼ映画と一緒で変更があったとしても他のディズニーミュージカル程度のマイナーチェンジでしょ~とか思ってたらだいぶ違ってびっくりした。ジョージの性格の掘り下げとか、バンクス一家の在り方やラストとか、ミュージカル版の方がかなり好きかもしれない。あと場転が好み!ドールハウスみたいでかわいい。

メリー・ポピンズのあの独特の色彩で魅せる世界観が目の前に広がるのはだいぶテンションあがりますね。メリーが次々衣装チェンジして、その衣装が全部かわいいのも素敵。バートとメリーのペアダンスもめっちゃかわいかった。

お金がなくてGrand Circleからの観劇でしたが、二階でも三階でもまったく置いて行かれない演出はいい!特に星空のシーンは前の方から目の前まで星空が広がってくるのが全部見えて楽しかった。ラストのロングフライも上からでも見切れることなく楽しめるのはいいですね~。

学生団体が入っていて、学校でWEミュージカルとか超羨ましいなと思った。見終わった後すっごい日本キャストで観たくなったので日本でも早く再演してほしいです。

 

2/6 ミュージカル『Everybody's talking about Jamie』ソワレ アポロシアター

WEの新作ミュージカル。映画化も決まったらしいですね!

ドラァグクイーンになりたい高校生の男の子がスクールプロムにドレスで出ようと奮闘する話。なんかいわゆる「ドラァグクイーンもの」という感じではなくて、ひとつの夢追いストーリーになってるのがいいなあと思う。ほっこりできるお話。

偶然にも場転の仕方が同じ日に観たメリポピと少し似ていて、全然雰囲気もテーマも違う演目なのに面白いなと思ったり。逆に似た手法をそれぞれの作品にしっくり合うような形で落とし込んでるのが面白いのかな。

話の内容がティーン向けなのもあり、客層は若めだった。きっともう少し大人になってからみたらまた見方が全然かわるんだろう。

新しいミュージカルなだけあって、スラングやネイティブに英語に触れていないとわからない単語が多用してあり客席の笑いについていけなかったり何を歌ってるのか聞き取れないシーンが多かったのがとても悔しい。後から歌詞を読んで補完したもののライブでついていけないのは残念。もっと英語強くならないとなあ。

 

 

2/7 ミュージカル『Six』ソワレ アーツシアター

ラスト!今回の本命その3。正確な年数は覚えていないが数年前にTwitterで感想を見かけてからずっと気になっていた作品。これもそのうち単記事たてたい。

大好きな演目になりました。劇場はキャパ350くらいの小劇場で、チケットも手売りなの?ってくらいシンプルなやつで、待合は超狭いカフェ。この時点で今迄みてきた作品とかなり違う。

ストーリーはヘンリー八世の6人の妻たちがよみがえり、一夜限りのライブを行うというもの。歴史もののガールズパワー系かな。なんだかミュージカルというよりライブそのものでバンド紹介もあるし(もちろんバンドメンバーも全員女の子)めちゃめちゃ客席煽ってくる。観客の熱狂具合がまあ凄い。歓声も手拍子も、熱量が半端ない。

老若男女関係なくすごく楽しそうなのがいいなと思った。斜め前のおじちゃんは歴史を皮肉ったジョークで超笑ってたし、隣のまだ十代にもならない女の子は舞台上の役者に夢中で手を振ったりしていた。ここでもジェイミーの時と同じで歴史のジョークとかを全然拾えずに結構悔しかった。後から歌詞を見直したんですが、言葉遊びがふんだんに使ってあっておしゃれで洗練された歌詞なんですね。M1Ex-Wives("元"妻たち)でポーカーにかけて(キングとクイーンの)ペアでいるより(クイーンが揃ってる)今の方が強いのよ、と言っていたり。あとアン・ブーリンのセリフがキレッキレで最高。6人の中で唯一息子を生んだもののその後死んでしまったジェーン・シーモアの「私の息子は母をなくしたのよ!」に対して「私の体は頭をなくしたのよ!」と返してみたり。

衣装もSF小説から飛び出してきたみたいでかっこいい!ロビーにファンアートがたくさん飾ってあったけど、描きたくなる気持ちはものすごくわかる。目を引く造形をしている。

これ日本で観れたら楽しいだろうけど、翻訳家泣かせだよな~。ニュアンスとか全ての言葉遊び訳すの不可能だと思う。でも絶対に面白いし日本でやったらどうなるのか気にはなる……やってほしいな~。

 

 

というわけで、9公演7演目。超楽しかったけど連続はさすがにちょっと疲れたね。

あとはサウサンプトンまで足を延ばしてタイタニック博物館に行ってきたりしました。あそこも凄くおもしろかったので時間があるときにまた記事で紹介できたらいいな。

WEのチケット安くはないんだけど、カテゴリー分けしっかりしてるから納得してお金を出せるのがいい。ハリポタの追加した日は一部約14,000円ちょい全編通して三万弱したけど、一階前方確定なら喜んで出すよ。一階の真ん中あたりでも一部約一万の合計二万とかだし(日によって変動はする)。

今回気になってたけど観れなかったやつもあるのでまた行きたい……お金はないです。

 

 

二人の世界は狭かった─ミュージカル『スリル・ミー』オストラヴァ/シアター12

『スリル・ミー』がなんとチェコであったので!観てきました!!

実際にあった事件を元にし、役者は「私」と「彼」の2人、楽器はピアノのみで進行するミニマリズムなミュージカル、スリルミー 。日本では度々再演され大変な人気を博しています。今は渡韓がアツイっぽい。

次の再演はいつだろう。田代伊礼ペアの復活を熱烈に所望します……あとこれは完全に私欲だが私は加藤私城田彼がみたい。物凄くみたい。城田私加藤彼でもいい。成河さんはCDでもなんでもいいので成河成河でやって欲しい。お願い叶えてホリえもん。(堀……文さんではない)

閑話休題

チェコでの公演は二回目だそう。まさかチェコで観れるとは留学前露ほども思ってみなかったが、何があるかわからないものである……。

 

・チケット購入

劇場オフィシャルサイトから購入した。

実は今回の公演を知れたのは全くの偶然。

スリルミーがみてぇ……とシャブが切れた薬中のような状態になり、”Thrill Me Bruxelles”だの”Thrill Me London”だのヨーロッパ各都市の名前を検索してたらまさかのチェコ語サイトがヒット。チケットが残り一枚だったので一体チェコのどこの都市でやるかも確認せず購入した。幸い居住都市から電車を使い約2時間半で行ける場所だった。

お値段はなんと学割で半額になって150kč(約715円)。学割がなくてもめちゃくちゃ安い。チェコのチケ代バグレベルで安いのなんなんだろう。流石にここまで来ると物価の問題だけじゃないよなぁ……。

よく調べてみると、5月から月に一度ほどのペースでちょくちょくやっていたようで11月にはプラハでも上演したらしい。全然気付かなかった。情報を追う難しさを痛感するばかりです。なぜか平日ソワレばっかりで長期休み期間でないと行き辛いのが痛い。


・劇場について

公演があったのはチェコの第三都市、オストラヴァオストラヴァについてはまた追々記事を書きます。

オストラヴァにはミュージカルを上演する主な劇場が三つ(内ひとつは改装中)あるのですが今回の劇場、シアター12はその中でも一番小さいハコ。なんと、キャパ60!傍聴席か?(傍聴ではない)このキャパでスリルミーを観れるというのも今回の楽しみのひとつだった。席は唯一残っていた最前の下手端。10席×6列と一番後ろでも6列目なのでこうなってくると上下に寄った席は前方より後方の方がみやすい。正面から観れないのは残念だが一番前だし近いしもう正直スリミがみれるならなんでもよかった。

小劇場ながら中にはちゃんとしたバースペースがあり驚き。ミュージカルだとあまりドレスコード気にしなくていいことが多いんですが、この劇場だとみんなおめかししててシマッタ〜となりました。物凄く浮いた……。

中に入ると左右の通路に4席づつ補助席がでていた。こちらで補助席をみたのは初めて。だから、実際の限界のキャパは68席になる。


・番外編

今回もエリザ の時同様チェコ語一切聞き取れないのはちょっとなぁと思い少しだけ予習して行きました。せっかくなので一部を紹介。

というわけで。

99年後使える!チェコ語講座〜!!


※日本語→チェコ語→読み方になってますが間に一度訳親の英語を挟んでます

炎                         oheň オヘンニュ

最高で完璧な夜 jednu vynikající noc イェドゥヌ ヴィニカシィ ノツ

契約書        smlouva  スムロゥヴァ

血                          krev クレフ

塩酸                      kyselina  キィセリナ

眼鏡      sklenice スクレニーツェ

凶器         vražedná zbraň ブラヅェードナァ ズブラーニュ

痣          znaménko ズナメーンコ 

99年        99 let  デヴァデサットデビェット レト


うーん、前回に輪をかけて汎用性がない。読み方を聞いた友人にも「で、これは何?」と言われてしまった。そりゃそうだ。

 


・開幕

やはり全スリルは小劇場でやるべきでは?

もう難しいのはわかってるんですけど。

ふたりがみていた「狭い世界」を表現するのにこれ以上ない劇場。その世界を客席で共有できるのがいい。超狭い空間で息苦しいくらいの圧迫感があるスリミ……凄い……。まず役者との距離がめちゃくちゃ近いから謎に緊張してしまう。一列目の高さと舞台の高さが同じで間は1メートルも空いてないので目の前、本当に手を伸ばすとさわれちゃう距離に来る役者……の手が血塗れだったり目の前に本がドンっと置かれたりその度にびくつくしどんどんおかしくなっていく。こわい。

歌い始めた時肉声でびっくりした。そりゃあよく考えてみればこの人数相手ならマイクはいらない。マイクがあるのと肉声だと声の質感が変わるしより生々しくなって、やっぱりこわい。マイクを通すことでより演劇、フィクションとしてのフィルターが厚くなるからあえて肉声でいい小劇場でやってそれを取っ払ったのかなと思いました。後にも書きますが今回演出がドキュメンタリー風というか、この事件が実際あったことを強調する演出だったので余計そう感じた。座席は補助席まで出ていて他の日程も全てチケットは完売しているのでやろうと思えばもう少し大きな劇場でも出来そうだし。

日本だと初演はマイクなしだったんでしょうか?100人規模だと必要なさそうではあるけど……有識者カモン。

 

印象的だった演出について。このミュージカルを完全にひとつのドキュメンタリーだと捉えてつくられていた。チェコ版はBW版を元にしてるので役名は「リチャード」と「ネイサン」。リチャードが彼でネイサンが私です。リチャードの弟もBW版同様「ジョン」と名前が出てくる。それだけでなく、冒頭に『これは、1924年に実際に起きた「レオポルドとローブ事件」を……』みたいなモノローグ音声が入る。全てを正しく聴き取れてはないが年数と名前は聞こえたのでそうだと思う。最後もまた『この後ネイサン・レオポルドは〜』みたいに実際の二人のその後についてが語られる。その際プロジェクターでレオポルドとローブ本人の写真が舞台上に投影されるんですが、これは結構衝撃的だった。ここまで史実に繋げるのか、と。もちろん舞台上にいる二人と写真で写されている二人は全くの別人で、だからこそこれまで90分自分たちがみていた演劇がそのまま現実世界に地続きになる感覚は面白いし、やっぱりちょっとこわい。なんだかんだラストのあの写真が一番印象に残ってるな……。

音響は本当にピアノ以外はなにもなかったです。SEもなし。本人たちのセリフ、歌とピアノ。それだけ。色々と削がれて随分ソリッドな印象を受けました。

キスシーンは軽めでしたね。

最初のところはリチャードがネイサンの顔ガッとつかんでちゅーってしてネイサンがよくわかってないうちに終わり。M15僕と組んでの許しを乞うようなキスがよかったです。あそこのネイサンめちゃくちゃこわかったけど。

 

役について。まずリチャードから。リチャードはとても「わかりやすかった」ので……。

まるでガキ。ネイサンの悪ノリにも一緒に付き合って一緒に遊んで楽しそうに笑う。かと思えば突然立ち上がり犯罪計画を話しはじめたりする。その表情は将来の夢を語る子供みたいにキラキラしているし。表情がくるくる変わるのも非常に子供っぽい。感情の波が激しいんですね。

基本的に芝居がかった口調で喋るのが所謂『厨二病』のようだった。クールに構えているシーンはほとんどなかったように思う。さっきまで楽しそうにしていたのに少しでもネイサンが気に入らないことをするとすぐに怒鳴りつけたり。またM12僕の眼鏡/おとなしくしろで新聞を見た瞬間からすぐに凄く怯えだすところなどもからも多少の想定外すら許容できない器量の狭さというか、本当に全て計画通りいくと信じて疑ってなかったんだなというのが感じられどうも子供っぽい。この曲、状況が進むにつれどんどんリチャードが憔悴していってこちらまでしんどくなった。やっぱりそれも、彼が「子供」に見えるからだと思う。かわいそうになってきちゃう。完全に自業自得なんだけど。

父親との関係も悪く、結局子供から抜け出せていないリチャード。契約書を破られそうになった時は物凄く焦っていた。そういう形にしておかないと不安で、「契約書」という目に見えるものに固執していたんだろう。「お前が必要だ」はネイサンを懐柔するための言葉だったにしろ、リチャードは間違いなくネイサンを必要としていた。

衣装が子供っぽさに拍車をかけていたように思う。白スーツにベージュの蝶ネクタイ、黒ベスト黒ジャケットと上はわかりやすい。対して下は七分丈のパンツに白の長靴下。パンツからそのまま靴下が出ているから足は見えていない。靴は白と黒のちょっとおしゃれな革靴。一目で上流階級の「子供」だとわかる服装。大学生よりももっと若く見えた。

 

で、ネイサン。いやこわいよ。

リチャードとは全く対照的に表情が全然読めない。感情の動きが少ないのか表に出てないだけなのか(単に演技力の問題なのか)。なんか、こちらに伝わってくるものが極端に少ないように感じた。リチャードよりよっぽどおかしい。さっき言った通りM12僕の眼鏡/おとなしくしろではリチャードがどんどん怯えて最終的には立てなくなるほど憔悴していくんだけどネイサンは歌っていることとは裏腹に表情はリチャードに比べずっと落ち着いてる。ネイサンにとっては想定外ではないからね。多分これは結末知ってる人が見たからそう感じたわけだけど。

キスシーンのところで少し触れたが、僕と組んでの時も怖かった。リチャードにどれだけ説得されてもキスされても全然表情が動かない……ほんと、なんなんだお前……。彼に再会して倉庫を燃やそうと言い出された時点で計画を立てはじめたのかなと思った。そのうちリチャードが人を殺そうと言い出すのもわかっていそうだし。ずっと確信犯。このなにを考えてるのかよくわらない表情で歌われるM8戻れない道はまじで恐怖。ネイサンは常に空虚で、スリルを求め続けていたんだろう。リチャードに出会ってなくても何かしらやらかしそう。

きゅ〜じゅ〜きゅ〜うねんーでの二人の顔の落差が凄かった。出来る限りネイサンから距離を取り得体の知れないものを見るように怯え切った顔のリチャードとものすごーく穏やかに微笑んでいるネイサン。ネイサンのあの顔は、満足気ではあったのだけど、完全に求めていたものが手に入ったわけではなさそうというか……。史実の通りそのあと女性と結婚したというのが全く違和感なく入ってくるなと。多分、リチャードじゃなくてもいいよね、君。

役者さんについては、歌唱がもう一つ……。声質がガサついていて少し残念でした。高い音がうまく響いておらず……全部地声で歌おうとしていたせいだろうか。

あと声量がもっと欲しかった!最前でびりびりするほどの迫力がある歌を浴びたかった……声量に関しては両方にいえることですが……。

 

※追記

インスタに舞台写真を発見したので貼っておきます!

こちらのポストの一枚目と三枚目が私が観たペア。放火シーンではリチャードがネイサンの手を取って火をつけさせており、『共犯』にさせている感があがっていていい。

四枚目のベッドのシーツとマットを取り払うとマットを敷くところがざっくりした網目状になっており、後半はそれを牢獄に見立てて演技していた。二人が過ごしていた空間がそのまま鳥籠になるのイイですね。縦に立てたベッドの真裏から照明をあて、格子の影を綺麗に舞台上に落としている演出も良かった。

これはまた別のポスト。

右下が実際のレオポルドとローブの写真が投影されているラストシーンになります。その上は非常に艶かしい事後シーン……笑。この2人は私が観たのとは別のペア。リチャードが上裸になってるが私が観た回ではこうなるのはネイサンだけでリチャードはタンクトップを着ていた。おそらくだが、リチャードの役者さんが中にタトゥーを入れていたのでその関係だと思う。やっぱりペアによってだいぶ変わるからもうひとつのペアもみたかったな……。

 

なんか、終始目線が合わないというか見ているものがズレてるふたりでした。

劇場を出た時解放感があった。あの狭いハコに飲まれていたのだと思う。本当に息詰まりしそうな空間だった。超小劇場スリミ、いいものを見たなあ。

おかわりしたいけどスケジュールがなあ……この辺やっぱり日本とかの一定の公演期間に連続でやるほうがいいですよね。おそらくこっちに日本ほど多ステ文化がないのが一因かと思うのですが。

日本版も小劇場でみたい……タイムマシンが欲しい……とりあえず来年が日本初演から10周年なのでなにかしら期待してます、よろしくホリ…ロ!

刮目!チェコ初演エリザベート ─ミュージカル『エリザベート』プルゼニュ/DJKT新劇場

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※今回前置きがいつも以上に長いので作品内容の部分のみ読みたい方は・開幕の項まで読み飛ばして下さい

チェコエリザベートをみてきました!!

日本でも超チケ難になる程人気の、オーストリア=ハンガリー帝国皇后エリザベートの一生を描いたミュージカル『エリザベート』。来年5月から全国ツアーも決定しています。*1私はというと観たことがあるのは新演出の東宝版のみ、宝塚版は初演をDVDでみせてもらっています。

チェコでの公演があると9月末に発表があってからずっとずっと楽しみにしていた公演。私にとってはウィーンやハンガリーのブタペストとゲデレー宮殿、スイスのジュネーヴなどエリザベート本人にゆかりのある都市を回って多少なりとも理解を深めてから初めての観劇です。

エリザベートチェコで公演されるのは今回が初。つまり、チェコ初演!留学期間にちょうど初演があたるなんてラッキー!初日は11/30で年内は12/7,28,29と公演があった。

今後は1/3~5,7,2/18~20,4/25に公演があるようです。こんな感じで一作をロングランするんじゃなく長い期間を使いとびとびで公演を行っているのはチェコの劇場でよくみるパターン。もちろんこの期間はほかの作品も並行で公演される。この劇場では『ビリー・エリオット』などをやっているようだった。個人的にはいちいちセットのくみ上げとバラシが大変そうだなあとスタッフの苦労が気になる。

 

・チケット購入

チケットはオフィシャルサイトから購入。11/30のプレミアデーは一般販売されておらず、7日には予定があったので28日に観ることに。前売りの受付は10/15の10時からだったが、開始前に販売サイトをチェックしてみると……

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アラッ!?結構埋まってる!!!

どうやら劇場の公式会員に向けての先行販売があったらしく。この辺やっぱりアウトサイダーだと厳しいよなと思った。それでも最前列が空いており、この空きかたは逆に見辛いやつか……?*2と訝しがりながらも「最前でエリザ」という付加価値につられて一列目を狙うことに。

そしていよいよ一般販売開始当日、9時59分57秒にF5を力強くプッシュ!!!日本で得た技術を最大限に使い(笑)、無事に希望の席をゲット!

しかも値段が550czk(約2,620円)。やっす!!!!!帝劇で14,000円の位置ですよ。ヨーロッパあちこちでミュージカルを観てますが、物価に比例しているとはいえチェコハンガリーのチケット代は信じられないくらい安いです。*3

 

・劇場までの道のり

今回公演があったのはチェコの西側に位置するプルゼニュという街。いやどこだよ、て人はこちらの前回記事を参照にして欲しい。

公演があるのはDJKT劇場の方。ややこしいことにすぐ近くにDJKT劇場という別の劇場がある。一度間違えてそこに向かってしまい、誰もおらず軽くパニックになった。

ありがたいことに地元警察の方に助けて頂き無事劇場までたどり着けた。

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穴の開いたチーズのような外観が特徴 警察官曰く"That awful building"笑 地元民の評判は悪いよう

 

・劇場内へ

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シシィのフォトロケーション

ホワイエは「新劇場」の名に相応しくピカピカ。また、チェコ共産主義国だった時代西ボヘミア解放後のチェコ支援のためアメリカ軍がここプルゼニュに滞在していた名残か、ソビエト支配関係の展示がしてあった。

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こちらは本日のキャスト。

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物販は非常に控えめ。エリザベート関連の商品はパンフレットのみで残りは劇場のグッズが陳列してあった。記念にパンフレットを購入。45kč(約245円)。

 

・番外編

本編の感想に入る前に少しだけ。だいたいいつもヨーロッパ諸国での観劇は自分の中の日本語版の記憶を頼りに観るのですが、流石に在住4ヶ月にしてチェコ語で何言ってるかサッパリわからない!だとちょっと恥ずかしいので少しだけ予習をしていきました。

というわけで!

黄泉の国で使える!チェコ語講座〜!!(一部掲載)

日本語→チェコ語→読み方の順

皇后   Císařovna   ツィーサジョヴナ

皇帝   Císař  ツィーサジュ

死    Smrt  スメルトゥ("メル"はハッキリ発音せず詰める)

太后  Arcivévodkyně  アルヒヴェヴォルドゥキィニェ (3回くらい聞き直した)

皇太子  Arcivévoda  アルヒヴェヴォダ

ミルク  Mléko ミレーコ

卵    Vejce ヴェイツェ

オレンジ Oranžová  オランヌジョヴァー

キッチュ Kýč  キーチュ

ボート  Loď ロッドィ

これで貴方もチェコ語圏の黄泉の国に連れていかれても安心です(?)

 

・開幕

いやあの、色々すごくて。日本語の便利ワード「ヤバイ」が非常に役に立つ。やばい、いろんな意味で。

例によってゴリゴリネタバレします。ネタバレしながらじゃないと喋れない。

 

何から話しましょう、て感じですがとりあえず演出。ベースになっているのはもちろんウィーン版なのでハンガリー革命家やらあの辺の設定はない。アレがなかったのでルドルフとフランツがどうして争ってるのかがわかりにくかった。これは一部私の言語能力の問題かな。

 

さてチェコ版演出、天才!!!!!て叫びたくなる所とトンチキ〜〜ってところが両方あり……大変面白かった。あと日本じゃこの演出は出来ないなぁ、と思う部分も多々。

まず天才!てなったところナンバーワンはトートダンサーに女性がいた点。TDは全身真っ黒で左腕は鱗のようなものに覆われ、右腕に天使の羽を模した袖がついて常にフードを被っているという中性的な衣装だったのでハッキリと性別差が強調されているわけではない。

TDの衣装 これ+フード着用

何が素晴らしかったって、ルドルフに寄り添う時は女性のTDがメインで動くんですよ。ルドルフの母親を求める気持ちに合わせて現れる女性TD。もちろん自殺シーンも誘うのは女性TDたち。ここはマリーの表現ですね。TDに女性が混ざってると気づいた時思わず口を覆いました。本当に素敵な演出。

ぶっちぎりで衝撃的だったのはマジで燃えるアランソン公爵夫人悪夢の身内がバタバタ死んでいく所、ご丁寧に一人ひとり尺が取ってあった。で、アランソン公爵夫人、どうやっているのかわからないが着ているコートが本当に燃えている。燃えたコートを羽織ったまま半狂乱で(結構長いこと)叫びまわり袖にはけていく公爵夫人。恐怖。なんらかの液体がコートにかかっておりきちんと本衣装に燃え移らないようにしてあるだろうし時間も計算の上なことはわかる。しかし恐怖。

トンチキ大賞は闇広です。なんていうのかな、トンチキ。舞台中央のせりの上に立つトートとルドルフ。トートの手には鞭。(多分鞭。東宝版で出てくるのとは違う形。竿みたいだった)一番ではトートが下手側、ルドルフが上手側で揃って下手袖の方を向いて♪闇が広が〜る に合わせて乗馬の動きをする。鞭を取るのはトート。♪がまーんできなーい で鞭を奪い2番で前後交代、自分で馬(概念)に乗るルドルフ。どう?僕ちゃんと乗れてるでしょ!?と嬉しげにトートを振り返るルドルフ。何を、見せられているの。なんというか、「ルドルフがトートに駒として利用されている」というのを表現しようとしているのかな?というのは感じましたが……。♪見過ごすのか からはせりを降りて芝居に戻ります。

うーん、やっぱり文章だと伝わりづらい。こんな時絵が描ければ……。

乗馬シーンは見つからなかったが鞭はインスタに上がっていた。

あと♪僕は今不安で壊れそうだ の部分が抜け落ちてる気がしたんですが、気のせいだったかな。おかわりしようにもチケットがもう全部売れていてできないのが悔しい。あとですね、この2人のキスシーンがなかったんですよ〜〜!マイヤーリンクでちょっとソワソワしてたのに、なかった……ルドルフが自分で頭ぶちぬいておわりだった……どうして……その前のペアダンスはアクロバットもあって凄い良かった……。

微熱のシーンもなかなか。ドクトルゼーブルガー診察する気がない。♪脈は 大丈夫よ 微熱が の部分でシシィの周りをあるいて三周し、フランス病だと診断するゼーブルガー。患者に一切触らずにどうやって診たんだよ。せめて医者を装ってくれ。

ルドルフが(おそらく)ドラッグを打つ描写やルドルフ死後のシシィがタバコを吸っていたのは日本じゃやらない、というか出来ないかなと思った。

それと、ほぼずっと舞台上にルキーニがいるのでルキーニの回想というのは分かり易くなっていたなと思います。定位置は上手端の面。最前だったおかげで顔の動きがバッチリ見えてとても良かった。マイクオフのセリフももちろん聞こえたもののチェコ語なので何を言っているかわからなかったのが残念でした。

多くの他国版で言われているように、日本比でさらに独立したエリザベートという女性が強調されていた。私が踊る時のシシィ、手を差し伸べるトートをガン無視して当て付けのようにその辺のアンサンブルを捕まえて踊ります。いいですねぇ。ラストはトートの口づけを受けた後、抱きしめるトートの腕からするりとぬけて一人面の真ん中に立ち満足気に微笑むシシィで幕。後ろでトートは唖然とした、というか理解し難いといった表情をしていた。ここのトートの解釈は東宝版と同じかな。この部分の演出って分かれるところだと思うんですが、日本とチェコで解釈が共通しているのは面白いです。

 

続いてセットについて。いかに東宝版のセットにお金がかかっているかということがとてもよくわかりました。公演日のくだりでくみ上げとバラシが大変そうと思った、と言ったが完全に杞憂。セット、超・シンプル

このポストがわかりやすい。写真上部にある円形のバトン(でいいのかわからないが照明が吊ってあるので便宜上バトンと呼ぶ)が上下し、座ったり布や看板を吊るしたりして宮殿・教会・カフェなどを表現していた。照明吊ったまま高速で降りてきて場合によっては地面につくし、上にトートは乗るしでけっこうひやひやしました。

他に道具として登場したのはシシィの部屋のドア部分、フランツの執務テーブル、ソファ、バルコニー、器械体操室程度だったかな。あとはシンメトリーになるように白い装飾が袖に置いてあり、天井からもぶら下がっていた。

代わりに大活躍していたのがせり。舞台上を縦横それぞれ4分割してあるせりがフル稼働し舞台を物凄く立体的にみせていた。あっという間に大階段が出来上がったり、波のように舞台が動くシーンもあり迫力満点。ただこの演出はおそらく最前でなおかつ舞台と同じ高さで観たからこその感想かなと思った。舞台から遠く高い位置から観てしまうと立体感が伝わりづらく少々退屈な演出かもしれない。

この辺は公演日数やスパンの関係上仕方ないんでしょう。

 

ちょーっと残念だったのはオケ……。特に金管とキーボード。あちこちでキツそうなところが。トランペットソロの高音でこけるとどうも目立ってしまい、うーん。カテコの際オケピを覗くとかなりの少人数編成で、特に金管はトランペット1トロンボーン1ホルン2のみでした。フルートとアルトサックスが兼任だったりと他にもいろいろ大変そう。

演奏は全体的にアップテンポ。最後のダンスや闇が広がるなんかはロック調のアレンジがかかっていて楽しかった。ギターも入ってました。最後のダンスがより顕著。ラスサビから一気にテンポが上がり、舞台上はトートの独壇場に。日本だと今年リリースされていたアルバム収録の伊礼彼方さんが歌う最後のダンスが近いかもしれません。

楽曲アレンジまでかかるとかっこよさ倍増ですね!それだけにオケはも少し頑張って欲しかったなと思っちゃったり。

 

役者陣は非常に良かったです。

まずシシィ。身長はあまり高くはないものの迫力がある美人。声も見た目に違わず「強い」。歌も素晴らしかった!バズーカ型のシシィってなかなかお目にかかれないじゃないですか。♪私に〜も力強い歌声を保ったまま歌い上げていた。先ほど述べたシシィへの演出も相まってトートにも帝国の運命にも踊らされない力強いシシィだった。

次にトートまず歌がほんっっとうに上手い。めちゃくちゃに上手い。ハイトーンに勢いがあって最高だったし長音も全く勢いが落ちないまま綺麗に音が響き続ける。永遠に聞いていたい。これで28歳らしい。28でこのクオリティなの凄い。トートというキャラクター造形としては、やっぱりシシィ主体なんだなと思わせる部分が多かった。シシィが生み出した死の概念・シシィを翻弄しているようでその実翻弄されているのはトートの方だと感じる面もありました。

ルキーニは歌で作品を推し進めていくような圧倒的な歌唱力ではなかったんですが、これは愛されるルキーニだなと思った。板上に常にいてくるくると表情を変えながら観客をガイドしてくれるので思わず目がいってしまう場面が多かった。

フランツはシシィへの想いの強さがひしひしと伝わってきた。加齢の表現がもうひとつ欲しいなーと思ったり。田代フランツがうますぎるんだよな。余談ですが役者さん本人のお名前もJozefでした。

ゾフィーは完全にビジュアルインパクトに持っていかれましたね。こちらのゾフィー大変恰幅がよろしい。舞台上にいると一発でわかる。私の中のイメージが完全に涼風真世さんだったのですごい衝撃。たしかに、シシィにとっての意地悪な義母という印象は分かり易い。初期の隆盛ぶりが凄い分最期の哀愁が際立っていてよかった。またそこで黒天使に迎えさせわかりやすく死を表すのではなくソロナンバーの後はけていくゾフィーの後ろに静かにトートが付いていたのも良かった。

そしてルドルフ!なんたってルドルフ!子ルド青年ルドそろって今回の私のMVPです!!カテコで顔見た瞬間号泣した。観客の同情を攫うのがべらぼうに上手い。子ルドはシシィに呼びかけ、無視された直後の一瞬の表情があまりにも悲痛で。一瞬で観客の心をもってくのに十分な演技だった。♪今日も猫を殺した で客席から笑いが起こっていたのは謎。ちょいちょいツボの違いを感じるんですよね〜。青年ルドはまず本人の顔だちがすごく若々しい。10代って言われても通じる。(後々調べたら25だった)そもそも退廃的で破滅を連想させるような役柄のルドルフに「希望」「青春感」など喪失させたくないものをうまく取り込んでいた。この子を死なせたくない、どうして死ななくちゃならないんだろうと思わせる演技が印象的だった。

プリンシパルキャストのビジュアルの雰囲気が伝わるポスト

 

カーテンコールはお祭り状態で楽しかった!ルキーニがキッチュ、トートが最後のダンスを追加で歌ってくれて、ルキーニの方は\キッチュ!/のコーレスまであった。最後はキャスト全員でプローローグの♪エリ〜〜ザベート の部分を歌って終了!本当に楽しい公演だった。

11/30プレミアデーのカテコを舞台袖から撮影した動画を発見したので貼っておきます。もちろん歌唱部分もみれるので是非。

 

この公演のお陰で物凄くエリザベート熱が高まりエリザが観たくて仕方ない。もう一枚くらいチケット取っておくんだったと大後悔中です。

日本に帰国してちょうどすぐ博多座公演が開くのでそれまでの辛抱……。でも追加したいのはチェコ版なんだよなーというどうにもならない欲求……。この不思議な中毒性ってなんなんでしょう。

キリがなくなりそうなのでこの辺で、ではまた!

 

 

*1:帝国劇場 ミュージカル『エリザベート』

*2:そんなことは全く無かった

*3:これまでのミュージカルチケット代比較 キャッツ(墺)二階上手見切れ席>アナスタシア(蘭)一階下手後方>TdV(独)一階上手後方>>>>エリザ最前>レミゼ(洪)一階10列目センター どゆこと

ハンガリーでレミゼを観たら旧演出だった話─ミュージカル『レ・ミゼラブル』 ブダペスト/マダック劇場

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タイトルの通りです。

いや、正確に言えば少し違うのかも。とにかく、期せずして回るパリに行ってきました。

 

ミュージカル『レ・ミゼラブル』はおそらく日本で最もポピュラーなミュージカルのひとつ。隔年で公演も行われており、普段ミュージカルを観なくてもこれなら観たことがあるという人も多いのでは。

この作品は、日本では2013年に大幅な演出変更がありそれまでの回転盆を使った演出からより映画に寄った『わかりやすい』演出になった。今では旧演出と言われる演出版を私は観た事がなく、いつか世界で唯一旧版で上演していたロンドンで観たいと考えていた。それなのにクイーンズシアターでの旧演出上演は2019年7月で終了!

これで世界中のどこのカンパニーからも旧演出は失われてしまったと思っていたんですが……。

 

もう一生観れないものと思っていたそれをなんとブダペストで観れたんです!

詳細は下に書くとして、ひとまずいつもの劇場紹介から。

 

・劇場について

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マダック劇場外観 街中に建っている

このマダック劇場内がまるで美術館のようで綺麗だった。壁や廊下一面に絵が描かれており、実際に絵画が展示してある部屋もあった。

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こちらは今後の上演スケジュール。この劇場は短いスパンでいろんな公演を上演しているよう。

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垂涎のラインナップである

そしてキャストボード!キャスト順に注目してほしい。

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バルジャン、ジャベール、アンジョルラス。アンジョルラス!?アンジョが3番目にいることに衝撃を受ける。その他の順番も日本とかなり違う。アンサンブルさんは纏められており少々残念。

また演出がハンガリー人らしく、自国演出家なの凄いなと思った。

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パンフレットが600ft(約215円)だったのでハンガリー語全然読めないけど衝動買い。

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中身はこんな感じ

さあいよいよ客席内へ!

今回めちゃめちゃ良い席で見ることができた。一階11列目のど真ん中。

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座席表

この位置でなんと7000ft(約2,500円)!信じられない。という話をカナダ人の友人にしたところ"Almost nothing!!"と言われ、『実質無料』って表現英語でもするんだな、と思ったり。

半分この値段に背中を押されて観劇を決めたが、行ってみるものですね。

列番号がローマ数字で少し戸惑ったりしつつ無事に着席。

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この時点で正面にはブログ初めに載せているレミゼのシンボルマークのコゼットが映し出されているわけだが、旧演出に無知な私は(日本とは違うんだなあ)程度にしか考えず何が起ころうとしているのか全くわかっていなかった。

 

・開幕

今回も前回の『キャッツ』同様英語字幕付き。舞台上部のスクリーンにオリジナルの歌詞が映し出される。例によって私は脳内日本語字幕に頼っていたためあまり見なかった。

オーケストラはかなりアップテンポだった。ただ、どうやら博多座のオケはゆったりめらしいので余計に早く感じたのかもしれない。(私は博多座以外でレミゼを観たことがない)

あとこれは劇場の問題だが音響がちょっと微妙。少しオケの響きが悪く感じたり、マイクの音量がわかりやすく不均一だったり。

 

幕が開くと囚人の歌で炭鉱採掘をさせられており、これはまさか……?となる。

その後舞台が回転し始めたので旧演出と確信!場転でガラガラガラガラの音がするのを聞き、なるほどこれが噂に聞いてたうるさい大道具か……と思案顔になる。

仮釈放でジェルヴェー少年の下りがないなと思ったら、あそこは新演出で追加された部分なんですね。

 

ブログ冒頭に旧演出と「少し違う」と書いたのにはいくつか訳があって、その一つが映像の多用。下手すると新演出よりも出てきてた。教会、娼婦宿、馬車事故など大体背景にじわじわ動くカラー写真が投影されてるイメージ。

これはハンガリー版2015年公演から追加された模様。*1ちょっとくどかった気も。

 

それとすこし不満だったのが振付。なんだこの振りはってなる部分が数か所あった。

筆頭がODM。行進じゃなく、スローモーションで下に沈むようにカノンしていくなんともいえない動き。最後は面に一列になって終わるので、そのまま緞帳が下せずに客席の拍手が収まるのをまってスンッって数歩後ろに下がってから幕。芝居が切れてしまう感じであまり好きでなかった。

ちなみにマンホールは舞台中央ではなく下手側にありました。

 

 

ここからは役ごとの感想。

 

今回見た役者さんたちがたまたまそうだったのかはわかりませんが、全体的に恰幅の良い俳優さんが多かった。まずバルジャン、詰め物でもしてるのかというほどの大きさ笑 怪力に説得力が出るからいいのかしら……その分オペラ歌手の如く美しいハイトーンを聴かせてくれたので満足。高い音がスコーンと出る。裁きの24601の1にあたる部分(日本でいう「にーよんろくごーさーーーん」)も難なく響かせていて震えた。ジャベールはもともとちょっと疑っていた感じで法廷での驚きは少ないように感じた。

対決は全体的に動きが少なくちょっと物足りなかった。迫力に欠けるというか……。立ち回りらしい立ち回りがなかったんですよね……。もう少し泥くさく魅せて欲しい。

自分が全く分からない言語で観たうえで、BHHが印象に残っている。この作品の根底にキリスト教観が流れているのは言うまでもないが、 実際キリスト教が根付いている場所で鑑賞してそれをより強く感じた。最も色濃く出ていたのがBHHだった。あれはどうしようもなく『祈り』なんですね。これまでの力強い歌い方とは打って変わり、か細くささやくような声。組まれた指や十字を切る動きからも切実な想いが伝わってくる。もちろん頭ではここは神への祈りのシーンだとわかっていたけれど、受け取るものの質が違ったように思う。言語がわからないことで反対にこれらのことが浮き彫りになったように感じた。

 

次にジャベール。ジャベールも結構大きい。縦はバルジャン以上、横はバルジャンほどじゃなくても大きい……。全体的に『必要最低限しか体は動かさん』とでもいうかのように動きが少なめ。そのせいでバルジャン取り逃がしたり学生たちにあまりにもあっさり拘束されたりしていたのでほんといつでもドジなんだろうなあの警視。

気になったのが、Starsと自殺のみ新演出に近い形だったこと。Starsを橋の上で歌っていたんですが、旧はパリの街中と聞いていたような。自殺も宙づり演出はなかったが橋の欄干から飛び降り後ろのスクリーンにセーヌ川に沈むジャベールが映るのみ。盆まわしもなし。だから完全な旧演出ではなく旧にところどころ新演出が入った形なのかも。

 

続いてファンティーヌ。

他のファクトリーガールが髪を頭巾の中に仕舞い込んでるのに対して豊かな金髪の髪を靡かせているファンティーヌ。この髪色がコゼットにも引き継がれていて良かった。衣装も一人だけ派手な桃色で、たしかにちょっと浮いてる感じ。あと、体がグラマラスな上襟が大きく開いた衣装が多くドキドキする。お芝居はかなり勝気な感じ。からかわないでよ、のところも悲哀より怒りが先行しているように見えた。顔だちがはっきりしていたのもそう見えた一因かもしれない。表情がわかりやすくその後民衆バイト*2を一瞬で見つけられた。

工場長のセクハラが日本よりキツくてそのシーンは顔を顰めてしまった。

 

 

リトルコゼットとリトルエポニーヌは今回公演がデビューだったそう。小エポは積極的に小コゼットを虐めており日本よりも原作に忠実。セリフはないものの、宿屋でもテナルディエ夫妻と一緒に踊っていたりと出番多めだった。おそらく本人の都合だと思うんですが、眼鏡をかけており、バイト中も同じく眼鏡で判別がつきやすいため同行の友人が少し混乱していた。宿屋ではけてわりとすぐ乞食バイトとして出てくるので時間経過がわかりにくくなってしまったみたい。

 

その後乞食でマリウス・アンジョルラス、成長したエポニーヌ・コゼットが登場していよいよ役者勢ぞろい!アンジョルラスについてはあとで学生らと一緒にまとめて書くとして。

まずマリウスがものすごくよかった。私は今年海宝マリは一回だけ、内藤マリに至っては観れなかったこともありマリウスについて正直不完全燃焼だったのですが、大満足。まず歌が抜群に上手い。声量がありつつもバズーカ型ではなく、しっかりした歌声。プリュメや雨でも相手を邪魔しすぎず美しくハーモニーを聞かせてくれる歌唱。たしかに恋に浮かれている、浮かれているけど地に足はついているというか。目の前にあることをあまりにも実直にうけとめて、それをとにかく必死にこなそうとするマリウス。バルジャンの告白のシーンでは、すぐにはバルジャンを受け入れることができずに握手を求めて差し出された手を握り返すことができないまま立ち去ってしまう。

特筆すべきは恵みの雨のラストでしょう。日本と同じくマリウスの頬に手を伸ばして息絶えるエポニーヌの想いを受けとって、事切れたあとにエポに口付けるんです。額ではなく唇に。不思議と今更遅いわ!という怒りはわかず(日本のマリにはたびたびわく感情である)エポニーヌを綴じるのにこれ以上ふさわしい事はないだろうと感じた。多分ここ日本で観た時よりも泣いた。

あとマリウスも例に漏れずガタイがよかった。

 

エポニーヌは強かった。日本公演で演出から「エポニーヌは自分をみじめだと思ったりしない」という言葉があったと屋比久さんが語っていましたが、それがしっくりはまる。芯の通った歌声で群唱時も声がはっきりときこえてきた。

その分孤独が際立つ。強いから、一人で十分まっすぐに立っていられる。マリウスにも上手く手を伸ばせずにいて、ある意味不器用。

回転盆で一番感嘆したのがプリュメ〜襲撃のところだった。完全に舞台をわけるように出現する柵がマリコゼとエポを分断し、客席から見て柵の向こう側にいるエポが『独り』なのが強調される。そこから盆まわしで襲撃に場転する流れがもの凄く演劇的で、面白い。一気に場面が流れて場内の雰囲気もロマンチックなシーンにうっとしりていたところに緊張感が流れ始める。それからOMOも実際独り街を歩いているのが伝わってきていい。背後の高い住宅街を前にぽつんと立って歌い上げるシーンには迫力があった。

大した本だね、のところで本をぶん投げる振りはなくマリウスにちゃんと返していた。

旧演出だと彼女はバリケードに戻る途中でなんともあっさり撃たれてしまうんですね。知らなかったので今撃たれた!?とかなり動揺。マリウスを庇う形でもなく哀しい……。

 

さて、学生たちの話をします。

全体的に学生それぞれに個性を感じなかった。あまり原作の設定を落とし込んでいないのかもしれない。とにかくアンジョルラス一極集中。アンジョが落ちれば組織が一瞬で崩壊するのが簡単に想像できる。グランテールさえアンジョを崇拝している感じはほぼなく、戦いにも他のメンバー同様積極的に参加している。というかそもそも衣装が全然違うので歌割をききながら必死に顔と名前を一致させていくところからスタート。グランはすぐわかった。酒瓶持ってたから。

アンジョルラスは、「それは将軍ラマルク!」の時点で歌好きですってなった。はっきりと音が響いて聞いていると気分が高揚していく、不思議なカリスマ性のある声。少なくとも支えられるアンジョではなく、先頭に立つというのも少し違う。頂点という言葉の似合う首領。

なおこれまで散々男性陣の体格について触れてきたが彼はシュッとした感じだった。アンジョだしね。

コンブフェールとクールフェラックはミュザンでもバリケードでも比較的隣にいることが多かったかな。1度目の襲撃で倒れた仲間に動揺するクルフェを引き起こすコンがいたのは覚えている。それでもアンジョの両腕というのは全く感じず、ほかの学生らとあまり立場は変わらないように見えた。本当にただ1人アンジョがトップに立っている。

最後の戦いにもアンジョのカリスマリーダーぶりが強調されていた。客席からはバリケードから半身をのぞかせて銃を構える学生たちしかみえず(つまり日本とは反対側の視点)、かなり早い段階でアンジョを残してバタバタ散っていく学生たち。大砲の音が二回続けて響く部分になった時点で残っているのはアンジョのみ。アンジョは2度の砲撃を受けながらも立ち上がり、フランス国旗を掲げながら倒れていく。(宙吊りにはならない)ここまでアンジョを際立たせる演出もなかなかないのではなかろうか。

なおバリケードは舞台の1/4ほどしか高さがなく残念だった。二階までの高さのあるバリケードは本当にもう拝めないんだろうな……。

 

バリケードといえば、ガブローシュだ。旧演出あんなにつらいんですか?

新演出だと銃弾を集めている様子は見えないが、旧だとガブが飛び出していった後に盆まわしがあり銃弾を集めているところ、そして銃撃を受けるところ、最期まで完全に見える。命懸けで集めた銃弾も、遺体も仲間のもとに戻ることなく倒れるガブ、あまりにもつらい。

 

 

エピローグの「神様のおそばにいることだ」でマリウスとコゼットがそれぞれバルジャンの両手を握っている姿が本当に美しかった。

もう絶対に旧演出は絶対に観れないと諦めていたのでまさかこんな形で出会えるとは思っておらず、本当に幸せでした。

来年4月にも公演があるようなので旧演出が恋しい方はブダペストに飛んでみては如何でしょう?街自体とても素敵な場所です。

ではまた!

*1:マダック劇場では2003年以降12年公演がなく、2015年に戻ってきた際足された演出らしい

*2:レミゼにおいてプリンシパルキャストが本役以外の役を演じていること。マリウス、アンジョルラス、テナルディエが冒頭で囚人を演じているなど

ガラクタの隙間から覗く舞踏会─ミュージカル『キャッツ』 ウィーン/ローナッハー劇場

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何をこんなに生き急いでいるんでしょう。

現在ウィーンのローナッハー劇場で公演中の『キャッツ』を観劇してきました。1週間のうちに3本もミュージカルを……我ながら贅沢。

現在東京の大井町でも絶賛公演中の本作。ウィーン初演は1983年、その後2012年にも公演があったみたいですね。キャッツの公演成功で不況だったローナッハー劇場が安定したという歴史もあるらしく、劇場にとっても特別な作品。

 

私のキャッツ歴はというと、日本で3回みており人生4回目。ただしはじめの2回は物心ついてなかったので実質2回目。小さい頃に白タガーを拝んでるらしいんだけど、残念ながら覚えてない……もったいない。3回目はつい最近大井町のキャッツシアターで。

CDは聴き込んでいるので歌詞は完璧!ドイツ語がわからなくても脳内日本語字幕が助けてくれました笑

 

・劇場内へ

歴史ある劇場らしく、中はとてもクラシックなつくり。3階席までは赤い絨毯の敷かれた階段を登っていきます。

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3階ホワイエのテーブル

物販は3階でも行われてました。

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Tシャツやパーカー、マグカップ・ボールペンなどなど。猫耳なんかもありました。かわいい!気になるのはぬいぐるみ。黒猫・白黒・白とグレーの3種類あって、一見普通の猫のぬいぐるみなんだけど……きっと、ジェリクルキャッツなんでしょう!

客席内ももちろんクラシックな劇場でとても豪華。そことキャッツの舞台であるゴミ捨て場が混在しててギャップが面白い!

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ちょうど境目の部分

そしてこの公演なんと英語字幕付き。ミュージカルに字幕がつくのは初めてだったのでびっくりしました。上の写真の真ん中あたりにあるスクリーンにオリジナル版の歌詞が出る。私の席からは見辛かったのと脳内日本語字幕に頼り切りだったのでほとんど見なかった。

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スクリーン 近くに行くとこんな感じ

さて、自分の席に向かうと……大問題が発覚。

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お金がなく、低いカテゴリーの席にしたのが大間違い。凄い見切れる。サイドシートなんてものじゃない、上手がかなり隠れる。一応59€のお席なんです。こっちにいる間はバイトもできないので個人的には頑張ったお値段。

まさかここまで大きい見切れがあるとは思わなくてしょんぼりていた。でも幕が開くとこの席からは通路を歩く猫の動線がすごくよく見えたり、指揮を映しているモニターが見える事が判明して気持ちを持ち直す。席の下、凄い近いところまで猫がきてこちらを「見上げて」くれたのも嬉しかった。

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少々わかりづらいがこの真下の狭い通路に猫が降りてくる ちなみに来てくれたのはディミータとカーバ

あと、オペラグラスを使うとゴミの隙間からなんとか上手の様子もチラ見出来た。後半はもうむしろ自分が猫になった没入感をこれ以上なく味わえてるのでは?と謎に楽しくなってきていた。

そんなわけだったので、以下の感想はすべてこの視界からお送りしていることをご了承下さい。着席早々絶対に全景見える席でもう一回観にくるぞ、と硬い硬い決意をしたのでした。

 

・開幕

さすがウィーン。音がいい……!まず生オケ、生オケなんです!オーケストラピットは裏にあるみたい。とにかくオーケストラの音圧が凄くて、オーバーチュアの一音目から圧倒される。それに負けじと歌のレベルも当然のように高い。本当に凄い。

既に結構記憶がないのですが、思い出しつつ印象に残った曲ごとに感想を連ねていきます。

 

オーバーチュア〜ジェリクルソング

やっぱりキャッツの世界に一気に引き込まれるこの二曲。オーバーチュアに合わせ猫が続々登場してくるとああ、はじまった!と凄く胸が高鳴る。それから歌もさながらダンスが見所のこのナンバー。劇場の関係で舞台上がかなり狭く、見た時は踊りにくそうだと思ったが空間の使い方が上手いのか踊り出すと全くそんなことはない。舞台上で起きている事が常に凝縮されているので濃いな、という印象。

なお巨大靴は落ちてこない。驚かないよう構えていたが何もなかった。

 

ジェニエニドッツ

物心つく前に見た後唯一記憶に残り家で歌っていた思い出の曲。笑 曲序盤、下手端でタップ用の靴に履き替えゴキブリスタンバイする様子がみえてちょっと得した気分。

「いえ、」の後のマンカストラップの顔がいいですね。「えぇ?ちょっと、知らないんだけど」みたいな顔。このマンクは全体的に天然な雰囲気だった。

 

ラム・タム・タガー

イントロをきくだけでもう、待ってました!と。本当に最高だった!セクシーな腰の振り付けは完璧、鳴き声も気取りながら「タガーらしい」素晴らしい鳴き声。表情のつくり、一挙一動がセクシーで魅力的で、どこをとってもザ・タガー。(何を言ってるんだ)

タガーは周りを煽る動きが多く、狭い舞台上を自由自在に駆け巡って完全に劇場の雰囲気を持っていく。「ごむ〜〜〜」もあの腰つきをたっぷり見せてくれながらいい声を響かせる。雌猫を気絶させた後はフイッと前に顔を戻すタイプだった。表情が特に好き。よく「!」みたいな顔をしていて、それが可愛い。ランパスナンバーのパグパイプで皆に注意されたあとのしょぼぼとした顔も良かった。

それと、この曲中マンクがわりとノリノリで新鮮。君楽しそうだな!?曲の最後にタガーがマンクのところにちょっかいかけにいって思い切り引っ掻かれてたのも最高だった。どこかでマンクが声張って歌うのに合わせて白目剥いてあくびするタガーがいたんだけど、どこだったか忘れてしまいました……。

 

マンゴジェリーとランペルティー

曲は新演出版のアップテンポな方。旧版を聴けるかなとちょっと期待してたので残念。このナンバーを生で聴いたのはソンダン*1大井町キャッツだからこっちの曲調の方が聴いてるんだけどどうしてもCDの刷り込みが強く。

あの二人の交互に側転するようにグルグル回るダンス(伝われ)、あれを観るとキャッツだ!って気分になる。

 

オールドデュトロノミー

こちらのデュトロノミー、声が高め。あと結構動きも軽やかでデュトロノミーにしては若いなーという印象。ミストのナンバーの時もタガー・マンクと両手を繋いで一緒にぴょんぴょん歩いていらした。高音の歌声も素敵だったけど、もう少し低く渋い音が聴きたいような。

ちなみにデュトロノミーは幕間も舞台上にいて、なんとツーショットが撮れちゃいます。せっかくなのでバッチリ撮ってきました。

 

ガス〜グロールタイガー

正直一番インパクトが強かったナンバー。主にグロールタイガーの部分が。

というのも、知ってる曲と全くの別物!ガスはお馴染みの曲。でもグロールタイガーの方は完全に初耳!なにこれ。当然聞いた事がないので消え去る脳内字幕。突然なにを言ってるのか一切分からなくなりパニック。唯一グリドルボーンのパート(「グロールタイガー私に心奪われ〜」)は日本と同じで、あとはフルチェンジだった。

海賊グロールタイガーの部分はスィングジャズ調の曲。衝撃で脳が働いてなかったものの曲調自体はかなり好きだったのでここは聴き込んだらハマりそう。ラブソングはイタリア語?なぜ……。シャム猫の曲は所々に面影を感じるものの別物に。言語がわからないからマンゴとランペのやつみたいに曲だけ変えてるのかそれとも歌詞ごと変わってるのかも分からず。旗振ってなかったから歌詞ごと変わってるのかな。

大井町公演は大千秋楽が決まりましたがその後どこかではじまるとして、もし日本もこのバージョンになったらかなりショックかも……。

 

スキンブルシャンクス

一番好きなナンバー!聴くだけで心がうきうきしてくる。思わず手拍子しようとしたら誰もしてなくてサッと手を下ろした。この曲を最高のオケで聴ける幸せと言ったら……。それからスキンブルの声が素敵。自然と耳に残って惹きつけられる声。さすが夜行列車のアイドル。

寝台列車〜のところの振りが、足を地面から10cmほど上げて上体を軽く起こす腹筋みたいな感じで大変そうだった。それぞれが列車の真似をする振りもあり、一緒にやろうとしておっとっと、となってるデュトロノミーと慌てて支えに入るタガーがツボ!残念ながらヤクザなマンクはみられなかった。

全体的な振り付けは日本版の方が好きかも。

 

マキャヴィティ

ボンパルリーナの歌声が超好みだった。純粋に好みの話なら今回一番好き。

大人の魅力溢れる、タガーとは別ベクトルでセクシーな声。物騒な曲にも関わらず聴いてるとうっとりしてきてしまう。

マキャファイ*2は座席の関係で殆ど見えなかったんですよ……。ちらちらと隙間からマンクの顔が見えたので必死にオペラで追いかけた。座席の関係でスキンブルナンバーの最後のあたりでマキャヴィティが出てくるところにスタンバイしてるのがバッチリ確認できて面白かった。

 

ミストフェリーズ

このナンバーで会場のボルテージが最高になる。

猫特有のしなやかな動きが飛び抜けて上手く、(1番のダンスメンだから当然と言えば当然)最初から目を持っていかれがちだったミスト。ここではその動きを遺憾なく発揮。回転はもちろん、マジックの時の身のこなしが本当に滑らかで凄かった……!あと後ろで煽ってるタガーの顔ね。自分は何もしてないのにすごいドヤ顔!

最後の口上を言ってもらうためタガーに耳打ちするミストが、完全にタガーの襟のもふもふに顔を埋めてるようにしか見えずとっても可愛かった。耳打ちされてるタガーの「ウンウン、了解だぜ!」みたいな顔もかわいい。

 

モリー

歌がうまい。

正直これにつきる。グリザベラについては、ビジュアルにちょっと違和感があったりしたんだけど歌を聞いたら全部どうでも良くなった。

「お願い、私を抱いて 私に触って」の迫力。鼓膜がビリビリ震えるような歌声。これを聞かされたあと旅立つグリザベラを観た時の感情は一種のカタルシスのようなものもあるんだろう。曲の後もしばらく拍手が鳴り止まなかった。

 

 

初の生オケのキャッツ、とっても幸せ。

カーテンコールではグリザベラに加えて、タガー、スキンブル、ミストに特大の歓声が上がってました。最後まで舞台に残ってるのがタガーなのはウィーンでも同じで面白い。

そして今度こそ隙間からじゃなく全部を楽しむためにもう一度観にきます。

ではまた!

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*1:『ソング&ダンス65』 劇団四季65周年の節目に全国で上演された劇団四季の名曲をショー形式で披露していく作品 https://www.shiki.jp/applause/songanddance/

*2:VSマキャヴィティ

欲望こそ力─ミュージカル『ダンスオブヴァンパイア』 オーバーハウゼン/メトロノーム劇場

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今、ヴァンパイアが熱い!!

先月舞台『SPECTER』*1のDVDが発売され、来月開催を控えた『繭期大夜会』*2、その直後発売の舞台『COCOON*3のDVD。そしてそして、11/5から帝国劇場で公演が始まミュージカル『ダンスオブヴァンパイア』

熱い!!!

まあヴァンパイアに関して言えば私の中では年中熱いのだけど。それはさておき。

実はこれが人生初のTdV、もう本当に楽しかった!結構公演があってるのに日本版TdVを観たことがなかった。CDは散々聴いていて、音源からも絶対楽しいミュージカルだなというのは伝わってきていたが想像以上!

……と終始こんな調子なので、全体的にはっちゃけた文でお送りする本記事内には日本版との比較とかはほぼないです。申し訳ない。今回の日本公演は日本にいた時の環境なら間違いなく観れたのに。悔しい……。

という事で前回の『アナスタシア』に引き続き日本で観れないならこっちでみようシリーズ。観劇日が一日しか空いてないけど来たからにはたくさん観て帰ります。もう誰にも止められない、我らは止まらない。

調べるとTdVはだいたいいつもドイツのどこかでやってるみたいですね。日本公演初日よりも絶対に先に観るぞと謎の意気込みでこの時期のチケットを取りました。

友人にドイツで観ることを伝えたらそっちの方が羨ましいと言われたが、ドイツに石川禅さんはいない。神田沙也加さんも相葉裕樹さんも、そして山口祐一郎さんもいない。それはそれ、これはこれ。

 

・劇場までの道のり

私はアムステルダムから劇場のあるオーバーハウゼンまでバスで行ったのであまり参考にならない。空のアクセスだとデュッセルドルフ空港からが電車で一本なのでいいと思う。もちろんデュッセルドルフ中央駅からオーバーハウゼン中央駅までも乗り換えの必要なし。

中央駅から劇場まではバスが便利。一応歩けないこともないのと時間がかなりあったので劇場まで歩いてみたが、約50分かかった。バスが便利。

ただ、歩いた果てにこの劇場が見えた時は物凄くテンションあがった。

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まさに『劇城』という門構え!

開演時間が近づき暗くなってくるとライトアップされ、周囲の雰囲気とともにさらに気分も高まっていく。

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劇場前には舞台写真のパネルが展示

 

・劇場内へ

中に入ると劇場名もしっかり書いてあるフォトローケーションがお出迎え。

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階段も高級感あるレッドで写真映えしそうなスポットでした。

続いて物販の様子。

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内側を見られたらもれなく二度見されそうな傘

バーカウンターからは飲み物の提供のみで食品は出していないようでした。

 

・開幕

※ネタバレ一切配慮してないです。

 

客席は一階のみの前回書いたハーグの劇場とほぼ同じ作り。火曜ソワレと平日のためか結構空席がありました。

一応自分の名誉のために書いておくと、月曜はもともと授業がなくて今週は火、水の授業がなくなり5連休になったので観劇旅行に出たわけです。授業飛ばしたわけじゃないのよ。こっちにきてまで遠征パズル*4組んだ。

 

『アナスタシア』では嬉しいサプライズがあったと書きましたが、こっちではちょっと嬉しくないサプライズが。というのも終盤も終盤、サラが噛まれた後の脱出のシーンで機材トラブルがあったらしく舞台が一旦停止。それが結構長引いたため再開するかもわからずかなりヒヤヒヤしました。無事に最後まで観ることができて本当に良かった。

 

圧巻だったのはやっぱりクロロック!歌い始めると劇場の雰囲気が一変して空気を変えちゃうんですね〜……まさに空間を支配する歌声。凄かった。特に高音部の圧が素晴らしくて。ずっと鳥肌が立っていた。

第一声を聴いた時に声わっか!と思っちゃってごめんなさい。役者さんはまだ37歳らしくびっくり。我らが伯爵様は今年で63歳だから余計にびっくり。逆に未だにバリバリ現役の山祐さんが凄いのかしら。

♪抑えがたい欲望 では悠久の時を生きるクロロックの苦悩を感じさせる厚みのある声を聞かせてくれました。そしてなにより好きなのが♪ワルツ。プロフェッサーを圧倒する歌声にゾクゾクした。終演後にお話ししたTdVを何度か観たことがあるというドイツのお姉さん曰く今回のクロロックが一番良かったらしい。

それを聴いてクロロックに比較対象がいるっていうのが新鮮だなと思った。韓国版『レベッカ』のキャスト表*5Twitterでみたときも同じことを考えたが、日本だとこの役といえば山祐さん!って感じなのでクロロックやマクシーに複数人役者がついてるのはやっぱり新鮮。

それからクロロックダンサーさんの肉体美が素晴らしくて……最初に涙出てきたのが一幕のダンスシーンだった。あそこのテンションのあがりよう凄いですね。ダンスシーンの評判は聞いていたもののあんなにかっこいいとは思っていなくて……本当に素敵だった……。

 

それと、ヘルベルトのビジュアルがすっごく良い!金髪オールバックを大きな青いリボンで一つに纏めてたんです。ハリーポッターに出てくる大人になったドラコ・マルフォイみたいな感じ!毛先はお父さん譲りの黒髪なので逆プリン?

役者さんのインスタより

インスタグラムにお写真がありました!これはちょっとわかりづらいけど後ろで髪をまとめてます。

この衣装はフィナーレ時のレザーのお衣装。個人的には普段着(?)のグレーのゴシックなお衣装が好きだった。

インスタグラムを確認するに、どうやら昨年のウィーン公演ではお父さん同様髪を下ろしてたようなので、「縛って青いリボンつけよう!」って提案してくれた人には感謝しかない。

姿に違わず演技もとってもチャーミングで彼が出ている時は思わずオペラグラスで追ってしまった。特にアブロンシウスに殴られた時の表情が最高だった。歌も素晴らしく、アルフレートを誘うAh~は本当に女性かと聞き間違うほど声が綺麗。それでいて「もうダ〜メ〜!」の歌い上げはパワフルで、だいぶビジュアルにやられたところはあるけどとにかくヘルベルトに夢中だった。

 

ユダヤ人のヴァンパイアだから〜」のくだりで客席が爆笑してたのも面白かった。あれ、ブラックジョークですよね。多分日本だと笑いが起きるポイントではない気がする……何割くらいピンとくる人いるんだろう。

それから誘われたというより自分の意思でお城に向かったという感じのサラや、結構可愛らしいお顔から力強い声が溢れてくるマグダなどなど全体的にパワフルな印象。プロフェッサーの早口ソングは言語が違っても聞き応え抜群だし、凄い楽しかった……!(それしか言ってない)

ほかのバージョンも気になるので来年1月末からのコペンハーゲン公演検討します。

ただこっちのカテコは踊らないんですね!踊る気満々でいたからそこはちょっと残念。先述のお姉さんに日本のカテコ映像を見せたところ「楽しそう!やりたい!」って言ってくれたし、踊ったらいいのにな。帝劇公演ではまたスペシャルカーテンコールデイもあるらしく。羨ましい限り。

やっぱり日本版も観たい!たくさん観たい!強欲だけど欲望こそがこの世界を動かすので。舞台装置一新したらしいし、またすぐ再演があると信じてます。

 

ではまた!