霧のブルノエアポート

チェコのブルノを拠点に浴びた芸術などについて記録。

フランケンシュタインの影を追って─ジュネーヴ観光

どうも、推しの出演作*1で旅行先を決めるオタクです。

フランケンシュタイン』というとなんとなくドイツのイメージが浮かぶけど実のところ舞台の大半はスイスのジュネーヴだったりする。そして原作者のメアリー・シェリーが物語を執筆したのもここ。フランケンシュタインは正真正銘ジュネーヴ人であるとの記述も原作にある。(この記事を読んでる人には殊更説明することでもないかもしれないが、「フランケンシュタイン」はあのつぎはぎだらけで頭にねじが刺さってる怪物の名前ではなく怪物を創り出したビクター・フランケンシュタイン博士の名前である)

その物語を原案としたミュージカル『フランケンシュタイン』が1月から東京で開幕します!ああ、なぜ私は行けないのか。

とかくフランケンシュタインが生まれた地に行きたいという動機でジュネーヴに行ってきたわけですが、がっつり「聖地巡礼」て感じではないので普通に観光記事です。

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角度により虹が見えたレマン湖の大噴水

 

まずは市内の足について少し。

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とにかく物価の高いスイス。観光客誘致にそれがネックになることを市側も重々承知のようで、ジュネーヴのホテルでは宿泊日数に応じて無料の交通チケットが貰える。市内を縦横無尽に走るバスやトラムだけでなくレマン湖を渡る渡し舟にも使えるのでありがたかった。

 

早速それを使用し旧市街へ!

ところで、スイスのレマン湖といえばエリザベートが暗殺されたところでもありますよね。といきなり別作品の話をする。

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シシィが暗殺された場所にある像

渡し舟で数分の短いクルーズを楽しみ旧市街に到着。観光地のひとつであるイギリス公園を散歩して市街地に向かう。

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有名な花時計

 

ひとまずのお目当てはこちら。

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トラムCirque駅近く、スケートボード場がある公園に立っている「フランケンシュタインの怪物」のモニュメント。肌のステッチなどかなり細かくつくりこんであり生々しい。台座も何もなく、歩いているところをそのまま固めたよう形で鎮座しているので遠くから見ると背の高い人が立ってるように見える。

周りに観光客もいないので思う存分眺めたり写真を撮ったりできる。

 

そしてそして偶然にもそのすぐ近くにあったサーカステント!

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cirque de noelの文字

冒頭に触れたミュージカル版ではビクターの元を去ったあと怪物は闘技場で働かされる。これは闘技場ではないもののミュージカルに近い物を発見しかなりテンションがあがった。

私が訪れたのは11月下旬だったためまだ準備中だったが、クリスマスの時期になるとここにサーカスがやってくるそう。準備しているのを見るだけでワクワクします。

 

そしてもう一つのお目当て、メアリー・シェリーがフランケンシュタインを執筆した場所であるディオダディ荘へ。

コロニー地区のバス停mairieをおりてすぐの地点。市街地の中心部、Riveからバスで20分ほどで向かえます。

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私有地のため門扉は閉ざされており中を拝むことはできないが雰囲気を感じるには十分。屋敷内は小径が整備されているほど広く、庭や畑などもあった。

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またここに来たら絶対に楽しみたいのが隣にあるカピート公園からの景色。

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フランケンシュタイン生誕の地であることを説明するプレートも

小高いプレ・バイロンの丘の上に位置するここからは美しいジュネーヴレマン湖の景色が一望できます。

彼女もこの眺望を楽しみながら執筆していたのだろうか。まあ実際にフランケンシュタインの物語の元ととなる「ディオダディ荘の怪奇談義」が行われたのは陰鬱な天気の最中だったらしいですが。

 

今回訪れた『フランケンシュタイン』の関連地は以上になります。我ながら少ない。

以下ただの観光記事。

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ジュネ―ヴの旧市街は街並みが古き良きヨーロッパという感じで歩いているだけでとても楽しい。

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この道とか、ビクターとアンリが肩を並べて歩いていそうじゃないですか?

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ここはバスティオン公園。クリスマスの装飾がされていて美しかった。飾られている電飾をみて夜にもう一度訪れてみたが、残念ながらイルミネーションはまだ始まっていませんでした。来るのが少し早かったかもしれない。

 

それからジュネーヴ観光で時間があったら是非行ってほしいのが美術・歴史博物館と自然史博物館。美術・歴史博物館にはスイスの重要なコレクションの数々が展示されており見ごたえ抜群。考古学分野からスイス人画家の美術品まで展示品の幅は広い。

ヨーロッパ最大級の自然史博物館には動物のはく製がずらりと並ぶ。大人も子供も楽しめる場所だ。

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どちらもなんと入場料は無料なので気軽に訪れてほしい。

 

またジュネーヴ観光で外せないのが国連のヨーロッパ本部。

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ガイドツアーで中の見学も可能です。一人12フランでユーロでも支払えます。カードも使えるようだけど、私が行ったときは機械が壊れていたらしく現金のみの取り扱いだった。所要時間は約一時間で予約は不要。ただし参加の時にパスポートが必要なのでそこだけ気を付けて。

ニュースとかでよく見る会議室を回るのは楽しいですしなにより各国からの寄贈品の数々がとても面白い。是非訪れてほしい場所です。

 

短いですが今回はここまで。

確かに物価の高い国ではありましたが、博物館の入館が無料だったり無料の交通サービスを行っていたりと観光客が回りやすいように工夫されていてあまり金銭的な不自由は感じませんでした。

ヨーロッパを周遊しているひとたちからも物価の面で避けられやすい国ではありますが、尻込みせずに行ってみてほしいなと思います。

 

そしてそして、ミュージカル『フランケンシュタイン』に行かれる皆さまのレポをお待ちしております……できればご要望欄に映像化……は難しくてもせめて音源化を……何卒!

ではまた。

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ハンガリーでレミゼを観たら旧演出だった話─ミュージカル『レ・ミゼラブル』 ブダペスト/マダック劇場

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タイトルの通りです。

いや、正確に言えば少し違うのかも。とにかく、期せずして回るパリに行ってきました。

 

ミュージカル『レ・ミゼラブル』はおそらく日本で最もポピュラーなミュージカルのひとつ。隔年で公演も行われており、普段ミュージカルを観なくてもこれなら観たことがあるという人も多いのでは。

この作品は、日本では2013年に大幅な演出変更がありそれまでの回転盆を使った演出からより映画に寄った『わかりやすい』演出になった。今では旧演出と言われる演出版を私は観た事がなく、いつか世界で唯一旧版で上演していたロンドンで観たいと考えていた。それなのにクイーンズシアターでの旧演出上演は2019年7月で終了!

これで世界中のどこのカンパニーからも旧演出は失われてしまったと思っていたんですが……。

 

もう一生観れないものと思っていたそれをなんとブダペストで観れたんです!

詳細は下に書くとして、ひとまずいつもの劇場紹介から。

 

・劇場について

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マダック劇場外観 街中に建っている

このマダック劇場内がまるで美術館のようで綺麗だった。壁や廊下一面に絵が描かれており、実際に絵画が展示してある部屋もあった。

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こちらは今後の上演スケジュール。この劇場は短いスパンでいろんな公演を上演しているよう。

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垂涎のラインナップである

そしてキャストボード!キャスト順に注目してほしい。

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バルジャン、ジャベール、アンジョルラス。アンジョルラス!?アンジョが3番目にいることに衝撃を受ける。その他の順番も日本とかなり違う。アンサンブルさんは纏められており少々残念。

また演出がハンガリー人らしく、自国演出家なの凄いなと思った。

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パンフレットが600ft(約215円)だったのでハンガリー語全然読めないけど衝動買い。

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中身はこんな感じ

さあいよいよ客席内へ!

今回めちゃめちゃ良い席で見ることができた。一階11列目のど真ん中。

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座席表

この位置でなんと7000ft(約2,500円)!信じられない。という話をカナダ人の友人にしたところ"Almost nothing!!"と言われ、『実質無料』って表現英語でもするんだな、と思ったり。

半分この値段に背中を押されて観劇を決めたが、行ってみるものですね。

列番号がローマ数字で少し戸惑ったりしつつ無事に着席。

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この時点で正面にはブログ初めに載せているレミゼのシンボルマークのコゼットが映し出されているわけだが、旧演出に無知な私は(日本とは違うんだなあ)程度にしか考えず何が起ころうとしているのか全くわかっていなかった。

 

・開幕

今回も前回の『キャッツ』同様英語字幕付き。舞台上部のスクリーンにオリジナルの歌詞が映し出される。例によって私は脳内日本語字幕に頼っていたためあまり見なかった。

オーケストラはかなりアップテンポだった。ただ、どうやら博多座のオケはゆったりめらしいので余計に早く感じたのかもしれない。(私は博多座以外でレミゼを観たことがない)

あとこれは劇場の問題だが音響がちょっと微妙。少しオケの響きが悪く感じたり、マイクの音量がわかりやすく不均一だったり。

 

幕が開くと囚人の歌で炭鉱採掘をさせられており、これはまさか……?となる。

その後舞台が回転し始めたので旧演出と確信!場転でガラガラガラガラの音がするのを聞き、なるほどこれが噂に聞いてたうるさい大道具か……と思案顔になる。

仮釈放でジェルヴェー少年の下りがないなと思ったら、あそこは新演出で追加された部分なんですね。

 

ブログ冒頭に旧演出と「少し違う」と書いたのにはいくつか訳があって、その一つが映像の多用。下手すると新演出よりも出てきてた。教会、娼婦宿、馬車事故など大体背景にじわじわ動くカラー写真が投影されてるイメージ。

これはハンガリー版2015年公演から追加された模様。*1ちょっとくどかった気も。

 

それとすこし不満だったのが振付。なんだこの振りはってなる部分が数か所あった。

筆頭がODM。行進じゃなく、スローモーションで下に沈むようにカノンしていくなんともいえない動き。最後は面に一列になって終わるので、そのまま緞帳が下せずに客席の拍手が収まるのをまってスンッって数歩後ろに下がってから幕。芝居が切れてしまう感じであまり好きでなかった。

ちなみにマンホールは舞台中央ではなく下手側にありました。

 

 

ここからは役ごとの感想。

 

今回見た役者さんたちがたまたまそうだったのかはわかりませんが、全体的に恰幅の良い俳優さんが多かった。まずバルジャン、詰め物でもしてるのかというほどの大きさ笑 怪力に説得力が出るからいいのかしら……その分オペラ歌手の如く美しいハイトーンを聴かせてくれたので満足。高い音がスコーンと出る。裁きの24601の1にあたる部分(日本でいう「にーよんろくごーさーーーん」)も難なく響かせていて震えた。ジャベールはもともとちょっと疑っていた感じで法廷での驚きは少ないように感じた。

対決は全体的に動きが少なくちょっと物足りなかった。迫力に欠けるというか……。立ち回りらしい立ち回りがなかったんですよね……。もう少し泥くさく魅せて欲しい。

自分が全く分からない言語で観たうえで、BHHが印象に残っている。この作品の根底にキリスト教観が流れているのは言うまでもないが、 実際キリスト教が根付いている場所で鑑賞してそれをより強く感じた。最も色濃く出ていたのがBHHだった。あれはどうしようもなく『祈り』なんですね。これまでの力強い歌い方とは打って変わり、か細くささやくような声。組まれた指や十字を切る動きからも切実な想いが伝わってくる。もちろん頭ではここは神への祈りのシーンだとわかっていたけれど、受け取るものの質が違ったように思う。言語がわからないことで反対にこれらのことが浮き彫りになったように感じた。

 

次にジャベール。ジャベールも結構大きい。縦はバルジャン以上、横はバルジャンほどじゃなくても大きい……。全体的に『必要最低限しか体は動かさん』とでもいうかのように動きが少なめ。そのせいでバルジャン取り逃がしたり学生たちにあまりにもあっさり拘束されたりしていたのでほんといつでもドジなんだろうなあの警視。

気になったのが、Starsと自殺のみ新演出に近い形だったこと。Starsを橋の上で歌っていたんですが、旧はパリの街中と聞いていたような。自殺も宙づり演出はなかったが橋の欄干から飛び降り後ろのスクリーンにセーヌ川に沈むジャベールが映るのみ。盆まわしもなし。だから完全な旧演出ではなく旧にところどころ新演出が入った形なのかも。

 

続いてファンティーヌ。

他のファクトリーガールが髪を頭巾の中に仕舞い込んでるのに対して豊かな金髪の髪を靡かせているファンティーヌ。この髪色がコゼットにも引き継がれていて良かった。衣装も一人だけ派手な桃色で、たしかにちょっと浮いてる感じ。あと、体がグラマラスな上襟が大きく開いた衣装が多くドキドキする。お芝居はかなり勝気な感じ。からかわないでよ、のところも悲哀より怒りが先行しているように見えた。顔だちがはっきりしていたのもそう見えた一因かもしれない。表情がわかりやすくその後民衆バイト*2を一瞬で見つけられた。

工場長のセクハラが日本よりキツくてそのシーンは顔を顰めてしまった。

 

 

リトルコゼットとリトルエポニーヌは今回公演がデビューだったそう。小エポは積極的に小コゼットを虐めており日本よりも原作に忠実。セリフはないものの、宿屋でもテナルディエ夫妻と一緒に踊っていたりと出番多めだった。おそらく本人の都合だと思うんですが、眼鏡をかけており、バイト中も同じく眼鏡で判別がつきやすいため同行の友人が少し混乱していた。宿屋ではけてわりとすぐ乞食バイトとして出てくるので時間経過がわかりにくくなってしまったみたい。

 

その後乞食でマリウス・アンジョルラス、成長したエポニーヌ・コゼットが登場していよいよ役者勢ぞろい!アンジョルラスについてはあとで学生らと一緒にまとめて書くとして。

まずマリウスがものすごくよかった。私は今年海宝マリは一回だけ、内藤マリに至っては観れなかったこともありマリウスについて正直不完全燃焼だったのですが、大満足。まず歌が抜群に上手い。声量がありつつもバズーカ型ではなく、しっかりした歌声。プリュメや雨でも相手を邪魔しすぎず美しくハーモニーを聞かせてくれる歌唱。たしかに恋に浮かれている、浮かれているけど地に足はついているというか。目の前にあることをあまりにも実直にうけとめて、それをとにかく必死にこなそうとするマリウス。バルジャンの告白のシーンでは、すぐにはバルジャンを受け入れることができずに握手を求めて差し出された手を握り返すことができないまま立ち去ってしまう。

特筆すべきは恵みの雨のラストでしょう。日本と同じくマリウスの頬に手を伸ばして息絶えるエポニーヌの想いを受けとって、事切れたあとにエポに口付けるんです。額ではなく唇に。不思議と今更遅いわ!という怒りはわかず(日本のマリにはたびたびわく感情である)エポニーヌを綴じるのにこれ以上ふさわしい事はないだろうと感じた。多分ここ日本で観た時よりも泣いた。

あとマリウスも例に漏れずガタイがよかった。

 

エポニーヌは強かった。日本公演で演出から「エポニーヌは自分をみじめだと思ったりしない」という言葉があったと屋比久さんが語っていましたが、それがしっくりはまる。芯の通った歌声で群唱時も声がはっきりときこえてきた。

その分孤独が際立つ。強いから、一人で十分まっすぐに立っていられる。マリウスにも上手く手を伸ばせずにいて、ある意味不器用。

回転盆で一番感嘆したのがプリュメ〜襲撃のところだった。完全に舞台をわけるように出現する柵がマリコゼとエポを分断し、客席から見て柵の向こう側にいるエポが『独り』なのが強調される。そこから盆まわしで襲撃に場転する流れがもの凄く演劇的で、面白い。一気に場面が流れて場内の雰囲気もロマンチックなシーンにうっとしりていたところに緊張感が流れ始める。それからOMOも実際独り街を歩いているのが伝わってきていい。背後の高い住宅街を前にぽつんと立って歌い上げるシーンには迫力があった。

大した本だね、のところで本をぶん投げる振りはなくマリウスにちゃんと返していた。

旧演出だと彼女はバリケードに戻る途中でなんともあっさり撃たれてしまうんですね。知らなかったので今撃たれた!?とかなり動揺。マリウスを庇う形でもなく哀しい……。

 

さて、学生たちの話をします。

全体的に学生それぞれに個性を感じなかった。あまり原作の設定を落とし込んでいないのかもしれない。とにかくアンジョルラス一極集中。アンジョが落ちれば組織が一瞬で崩壊するのが簡単に想像できる。グランテールさえアンジョを崇拝している感じはほぼなく、戦いにも他のメンバー同様積極的に参加している。というかそもそも衣装が全然違うので歌割をききながら必死に顔と名前を一致させていくところからスタート。グランはすぐわかった。酒瓶持ってたから。

アンジョルラスは、「それは将軍ラマルク!」の時点で歌好きですってなった。はっきりと音が響いて聞いていると気分が高揚していく、不思議なカリスマ性のある声。少なくとも支えられるアンジョではなく、先頭に立つというのも少し違う。頂点という言葉の似合う首領。

なおこれまで散々男性陣の体格について触れてきたが彼はシュッとした感じだった。アンジョだしね。

コンブフェールとクールフェラックはミュザンでもバリケードでも比較的隣にいることが多かったかな。1度目の襲撃で倒れた仲間に動揺するクルフェを引き起こすコンがいたのは覚えている。それでもアンジョの両腕というのは全く感じず、ほかの学生らとあまり立場は変わらないように見えた。本当にただ1人アンジョがトップに立っている。

最後の戦いにもアンジョのカリスマリーダーぶりが強調されていた。客席からはバリケードから半身をのぞかせて銃を構える学生たちしかみえず(つまり日本とは反対側の視点)、かなり早い段階でアンジョを残してバタバタ散っていく学生たち。大砲の音が二回続けて響く部分になった時点で残っているのはアンジョのみ。アンジョは2度の砲撃を受けながらも立ち上がり、フランス国旗を掲げながら倒れていく。(宙吊りにはならない)ここまでアンジョを際立たせる演出もなかなかないのではなかろうか。

なおバリケードは舞台の1/4ほどしか高さがなく残念だった。二階までの高さのあるバリケードは本当にもう拝めないんだろうな……。

 

バリケードといえば、ガブローシュだ。旧演出あんなにつらいんですか?

新演出だと銃弾を集めている様子は見えないが、旧だとガブが飛び出していった後に盆まわしがあり銃弾を集めているところ、そして銃撃を受けるところ、最期まで完全に見える。命懸けで集めた銃弾も、遺体も仲間のもとに戻ることなく倒れるガブ、あまりにもつらい。

 

 

エピローグの「神様のおそばにいることだ」でマリウスとコゼットがそれぞれバルジャンの両手を握っている姿が本当に美しかった。

もう絶対に旧演出は絶対に観れないと諦めていたのでまさかこんな形で出会えるとは思っておらず、本当に幸せでした。

来年4月にも公演があるようなので旧演出が恋しい方はブダペストに飛んでみては如何でしょう?街自体とても素敵な場所です。

ではまた!

*1:マダック劇場では2003年以降12年公演がなく、2015年に戻ってきた際足された演出らしい

*2:レミゼにおいてプリンシパルキャストが本役以外の役を演じていること。マリウス、アンジョルラス、テナルディエが冒頭で囚人を演じているなど

ミュージカル『ファントム』初日に寄せて―パリのオペラ・ガルニエをレポート!

ミュージカル『ファントム』初日おめでとうございます!*1遠くからお祝い申し上げます。

この良き日に、今回は『ファントム』の舞台となったパリにある「オペラ座」ことオペラ・ガルニエについて書いていきたいと思います。実は九月末にレミゼと1789の聖地巡礼をした際にここも訪れていたのだけど、どうしても今日アップしたかった!

以前のパリ歩き記事

 

パリのオペラ座は二ヵ所、ここオペラ・ガルニエと比較的新しいオペラ・バスティーユがあります。きっと「パリのオペラ座と聞いて皆さんがぱっと思い浮かべるのはこちらのオペラ・ガルニエ。『ファントム』だけでなく『オペラ座の怪人』の舞台にもなったところですね。というか、ALW版のほうが有名よね。

 

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まずは外観から。左右に輝く金色の女神像は、左側が調和、右側が詩を象徴しているそう。観光客用のチケット売り場はここからぐるっと回って反対側。見学チケットは事前にネットでも購入できるので並ばずに済むこちらがおすすめ。見学ができるのは公演時間外でマチネがある日は時間が短くなります!要注意。

そしていよいよ中に入るとそこには……

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!?

シアンのネオンで彩られた談話室が!なにこれ~!?

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こちらの噴水はマゼンタに。なんでも、ここオペラ・ガルニエとオペラ・バスティーユがなんとWアニバーサリーイヤー*2でそのお祝いとしてちょっと特別な装飾をしているらしい。テーマはDark&Light。そんなロミジュリじゃないんだからさぁ*3……とクラシックな感じを期待していた私は若干肩を落とした。

 

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なんてそんな気分もこのエントランスをみると吹き飛ぶ。豪華な装飾がされた大階段に細部まで書き込んである天井画!

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ちなみに中央にでかでかと鎮座しているゴールデンなタイヤは先ほどと同じくアニバーサリーの記念展示です、はい。

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二階のバルコニー部分からの写真

当時の皆さんはここから自分の後にやってくる客を眺めるのも楽しみの一つだったそう。同じドレスはすぐに気づかれるから、被らないよう気を使ったんだと。ひええ。

 

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客席一階からの写真

こちらは客席内部!本当に豪華。金と赤の二色配色には劇場を実際よりもこぢんまりと感じさせる効果がある。これはお客さんにより舞台に集中してもらうための設計。

なお、客席内に入るには通常の見学コースではなくガイド付きツアーへの申し込みが必要です。自分で回るタイプの見学だと二階ボックス席の一部が解放されていてそこから覗く感じ。

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下手側ボックス席からの写真

舞台は客席から見やすいように5度ほどの八百屋坂舞台になっている。残念ながら次の公演準備のため板が下りていた。

一応舞台の下には現在も湧水をためておく地下湖があるんだけども、とてもじゃないが舟は通れません……。おさかなはすんでいるらしい。

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エリックの5番ボックスは写真の四角く囲ってある部分になる。下手が奇数席、上手が偶数席で舞台側から数えていくので下手から数えて3番目ですね。このボックス席に誰が座っているのかは隣からは当然見えず、カーテンがあるので後ろの窓からものぞけない仕様。当時は主な娯楽がオペラだったからスキャンダル対策でこうしてあるそう。(反対側の客席から見えるのでは?と思ってしまった)

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こちらはギリギリまで舞台に近づいた、つまりクリスティーヌの目線に寄って撮った写真。真正面を見ればファントムボックスはあまり目に入りませんがちらりと目線を動かせばそこにいる、そんな感じ。まあ『ファントム』だとエリックはそこにはいないのだけども。

 

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天井画とシャンデリアはこんな感じ。シャンデリアは重さ7トン、高さ8メートル。実際にろうそくを使っていたころは点灯するのに3時間もかかっていた。電気化された以外は当時のまま残っているのでエリックが落としたのと同じシャンデリアを望むことができる

天井画はシャガール作で有名なオペラやバレエの情景とパリの街並みが描いてある。1964年に改修されたものなのでエリックやクリスティーヌのころにあったものとは別物です。

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これが当時の天井画の複製。どうしても反射してきれいに撮れなかった。二人が実際に見ていたのはこちらの絵。

この天井画の上にそのままシャガールが描いたので、現在の絵を剥がすとこの絵が現れるはず。絵を新しくするとなった当時は猛反対の末署名運動もあったそうで。想像に難くない。

 

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ここは例の5番ボックス扉前です。金のプレートには"LOGE DU FANTÔME DE L'OPERA"(オペラ座の怪人のボックス席)の文字が。

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現在でもそこはファントムのためにあけられている……わけもなく、フランスの人たちはまったく気にせず座るそう。というか、フランスでは『オペラ座の怪人』自体そんなに知名度が高くないらしい。

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昼間の見学時間には封鎖されているので中に入ることは叶わず。こちらは窓から頑張って撮った写真になります。

 

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思わず溜息がでるほどきれいなホワイエ。鏡と窓を交互に配置することで空間をより広く錯覚させるようにできている。

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暖炉が置いてある部屋の端

部屋の両端の壁も鏡なので、実際より長く部屋が続いているように見えますね。ちなみに天井画にはここの設計士であるガルニエ氏と彼の奥様の肖像画が隠れている。それを茶化して「愛のホワイエ」なんて呼ぶ人もいるとか。

どこを見渡しても本当に豪華で美しくてうっとり。エリックは深夜に一人で劇場内を散歩していたりしたんだろうか。

 

と、実際にファントム、そしてオペラ座の怪人の世界に浸ってきたわけですが……公演がみたい!推し*4と推し*5が相手役で共演するというのに……。演目自体は雪組さんの公演*6を映像で見せてもらったのですが、それがあまりに素晴らしかっただけにあれをやってるところ、観たい……と余計に思いが募る。ALW版は2020年10月から公演が決定しましたね!行きたい!シャンデリアが落ちるのか気になるところ……。

というわけで、どうかファントムを観劇に行かれる皆様方におきましては、アンケートのご要望欄に映像化希望の旨を書いてくださると嬉しいです。何卒……。

※追記

とかいってたら早々にDVDの発売が決まりましたね!!!有難い!帰国時まで楽しみに待ちたいと思います。

 

*1:ミュージカル『ファントム』2019年公演

*2:オペラ・ガルニエ設立350周年及びオペラ・バスティーユ設立30周年

*3:ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』2017/2019版参照

*4:加藤和樹さん

*5:木下晴香さん

*6:宝塚歌劇団雪組公演 2018年11月9日初日2019年2月10日大千秋楽

ガラクタの隙間から覗く舞踏会─ミュージカル『キャッツ』 ウィーン/ローナッハー劇場

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何をこんなに生き急いでいるんでしょう。

現在ウィーンのローナッハー劇場で公演中の『キャッツ』を観劇してきました。1週間のうちに3本もミュージカルを……我ながら贅沢。

現在東京の大井町でも絶賛公演中の本作。ウィーン初演は1983年、その後2012年にも公演があったみたいですね。キャッツの公演成功で不況だったローナッハー劇場が安定したという歴史もあるらしく、劇場にとっても特別な作品。

 

私のキャッツ歴はというと、日本で3回みており人生4回目。ただしはじめの2回は物心ついてなかったので実質2回目。小さい頃に白タガーを拝んでるらしいんだけど、残念ながら覚えてない……もったいない。3回目はつい最近大井町のキャッツシアターで。

CDは聴き込んでいるので歌詞は完璧!ドイツ語がわからなくても脳内日本語字幕が助けてくれました笑

 

・劇場内へ

歴史ある劇場らしく、中はとてもクラシックなつくり。3階席までは赤い絨毯の敷かれた階段を登っていきます。

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3階ホワイエのテーブル

物販は3階でも行われてました。

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Tシャツやパーカー、マグカップ・ボールペンなどなど。猫耳なんかもありました。かわいい!気になるのはぬいぐるみ。黒猫・白黒・白とグレーの3種類あって、一見普通の猫のぬいぐるみなんだけど……きっと、ジェリクルキャッツなんでしょう!

客席内ももちろんクラシックな劇場でとても豪華。そことキャッツの舞台であるゴミ捨て場が混在しててギャップが面白い!

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ちょうど境目の部分

そしてこの公演なんと英語字幕付き。ミュージカルに字幕がつくのは初めてだったのでびっくりしました。上の写真の真ん中あたりにあるスクリーンにオリジナル版の歌詞が出る。私の席からは見辛かったのと脳内日本語字幕に頼り切りだったのでほとんど見なかった。

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スクリーン 近くに行くとこんな感じ

さて、自分の席に向かうと……大問題が発覚。

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お金がなく、低いカテゴリーの席にしたのが大間違い。凄い見切れる。サイドシートなんてものじゃない、上手がかなり隠れる。一応59€のお席なんです。こっちにいる間はバイトもできないので個人的には頑張ったお値段。

まさかここまで大きい見切れがあるとは思わなくてしょんぼりていた。でも幕が開くとこの席からは通路を歩く猫の動線がすごくよく見えたり、指揮を映しているモニターが見える事が判明して気持ちを持ち直す。席の下、凄い近いところまで猫がきてこちらを「見上げて」くれたのも嬉しかった。

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少々わかりづらいがこの真下の狭い通路に猫が降りてくる ちなみに来てくれたのはディミータとカーバ

あと、オペラグラスを使うとゴミの隙間からなんとか上手の様子もチラ見出来た。後半はもうむしろ自分が猫になった没入感をこれ以上なく味わえてるのでは?と謎に楽しくなってきていた。

そんなわけだったので、以下の感想はすべてこの視界からお送りしていることをご了承下さい。着席早々絶対に全景見える席でもう一回観にくるぞ、と硬い硬い決意をしたのでした。

 

・開幕

さすがウィーン。音がいい……!まず生オケ、生オケなんです!オーケストラピットは裏にあるみたい。とにかくオーケストラの音圧が凄くて、オーバーチュアの一音目から圧倒される。それに負けじと歌のレベルも当然のように高い。本当に凄い。

既に結構記憶がないのですが、思い出しつつ印象に残った曲ごとに感想を連ねていきます。

 

オーバーチュア〜ジェリクルソング

やっぱりキャッツの世界に一気に引き込まれるこの二曲。オーバーチュアに合わせ猫が続々登場してくるとああ、はじまった!と凄く胸が高鳴る。それから歌もさながらダンスが見所のこのナンバー。劇場の関係で舞台上がかなり狭く、見た時は踊りにくそうだと思ったが空間の使い方が上手いのか踊り出すと全くそんなことはない。舞台上で起きている事が常に凝縮されているので濃いな、という印象。

なお巨大靴は落ちてこない。驚かないよう構えていたが何もなかった。

 

ジェニエニドッツ

物心つく前に見た後唯一記憶に残り家で歌っていた思い出の曲。笑 曲序盤、下手端でタップ用の靴に履き替えゴキブリスタンバイする様子がみえてちょっと得した気分。

「いえ、」の後のマンカストラップの顔がいいですね。「えぇ?ちょっと、知らないんだけど」みたいな顔。このマンクは全体的に天然な雰囲気だった。

 

ラム・タム・タガー

イントロをきくだけでもう、待ってました!と。本当に最高だった!セクシーな腰の振り付けは完璧、鳴き声も気取りながら「タガーらしい」素晴らしい鳴き声。表情のつくり、一挙一動がセクシーで魅力的で、どこをとってもザ・タガー。(何を言ってるんだ)

タガーは周りを煽る動きが多く、狭い舞台上を自由自在に駆け巡って完全に劇場の雰囲気を持っていく。「ごむ〜〜〜」もあの腰つきをたっぷり見せてくれながらいい声を響かせる。雌猫を気絶させた後はフイッと前に顔を戻すタイプだった。表情が特に好き。よく「!」みたいな顔をしていて、それが可愛い。ランパスナンバーのパグパイプで皆に注意されたあとのしょぼぼとした顔も良かった。

それと、この曲中マンクがわりとノリノリで新鮮。君楽しそうだな!?曲の最後にタガーがマンクのところにちょっかいかけにいって思い切り引っ掻かれてたのも最高だった。どこかでマンクが声張って歌うのに合わせて白目剥いてあくびするタガーがいたんだけど、どこだったか忘れてしまいました……。

 

マンゴジェリーとランペルティー

曲は新演出版のアップテンポな方。旧版を聴けるかなとちょっと期待してたので残念。このナンバーを生で聴いたのはソンダン*1大井町キャッツだからこっちの曲調の方が聴いてるんだけどどうしてもCDの刷り込みが強く。

あの二人の交互に側転するようにグルグル回るダンス(伝われ)、あれを観るとキャッツだ!って気分になる。

 

オールドデュトロノミー

こちらのデュトロノミー、声が高め。あと結構動きも軽やかでデュトロノミーにしては若いなーという印象。ミストのナンバーの時もタガー・マンクと両手を繋いで一緒にぴょんぴょん歩いていらした。高音の歌声も素敵だったけど、もう少し低く渋い音が聴きたいような。

ちなみにデュトロノミーは幕間も舞台上にいて、なんとツーショットが撮れちゃいます。せっかくなのでバッチリ撮ってきました。

 

ガス〜グロールタイガー

正直一番インパクトが強かったナンバー。主にグロールタイガーの部分が。

というのも、知ってる曲と全くの別物!ガスはお馴染みの曲。でもグロールタイガーの方は完全に初耳!なにこれ。当然聞いた事がないので消え去る脳内字幕。突然なにを言ってるのか一切分からなくなりパニック。唯一グリドルボーンのパート(「グロールタイガー私に心奪われ〜」)は日本と同じで、あとはフルチェンジだった。

海賊グロールタイガーの部分はスィングジャズ調の曲。衝撃で脳が働いてなかったものの曲調自体はかなり好きだったのでここは聴き込んだらハマりそう。ラブソングはイタリア語?なぜ……。シャム猫の曲は所々に面影を感じるものの別物に。言語がわからないからマンゴとランペのやつみたいに曲だけ変えてるのかそれとも歌詞ごと変わってるのかも分からず。旗振ってなかったから歌詞ごと変わってるのかな。

大井町公演は大千秋楽が決まりましたがその後どこかではじまるとして、もし日本もこのバージョンになったらかなりショックかも……。

 

スキンブルシャンクス

一番好きなナンバー!聴くだけで心がうきうきしてくる。思わず手拍子しようとしたら誰もしてなくてサッと手を下ろした。この曲を最高のオケで聴ける幸せと言ったら……。それからスキンブルの声が素敵。自然と耳に残って惹きつけられる声。さすが夜行列車のアイドル。

寝台列車〜のところの振りが、足を地面から10cmほど上げて上体を軽く起こす腹筋みたいな感じで大変そうだった。それぞれが列車の真似をする振りもあり、一緒にやろうとしておっとっと、となってるデュトロノミーと慌てて支えに入るタガーがツボ!残念ながらヤクザなマンクはみられなかった。

全体的な振り付けは日本版の方が好きかも。

 

マキャヴィティ

ボンパルリーナの歌声が超好みだった。純粋に好みの話なら今回一番好き。

大人の魅力溢れる、タガーとは別ベクトルでセクシーな声。物騒な曲にも関わらず聴いてるとうっとりしてきてしまう。

マキャファイ*2は座席の関係で殆ど見えなかったんですよ……。ちらちらと隙間からマンクの顔が見えたので必死にオペラで追いかけた。座席の関係でスキンブルナンバーの最後のあたりでマキャヴィティが出てくるところにスタンバイしてるのがバッチリ確認できて面白かった。

 

ミストフェリーズ

このナンバーで会場のボルテージが最高になる。

猫特有のしなやかな動きが飛び抜けて上手く、(1番のダンスメンだから当然と言えば当然)最初から目を持っていかれがちだったミスト。ここではその動きを遺憾なく発揮。回転はもちろん、マジックの時の身のこなしが本当に滑らかで凄かった……!あと後ろで煽ってるタガーの顔ね。自分は何もしてないのにすごいドヤ顔!

最後の口上を言ってもらうためタガーに耳打ちするミストが、完全にタガーの襟のもふもふに顔を埋めてるようにしか見えずとっても可愛かった。耳打ちされてるタガーの「ウンウン、了解だぜ!」みたいな顔もかわいい。

 

モリー

歌がうまい。

正直これにつきる。グリザベラについては、ビジュアルにちょっと違和感があったりしたんだけど歌を聞いたら全部どうでも良くなった。

「お願い、私を抱いて 私に触って」の迫力。鼓膜がビリビリ震えるような歌声。これを聞かされたあと旅立つグリザベラを観た時の感情は一種のカタルシスのようなものもあるんだろう。曲の後もしばらく拍手が鳴り止まなかった。

 

 

初の生オケのキャッツ、とっても幸せ。

カーテンコールではグリザベラに加えて、タガー、スキンブル、ミストに特大の歓声が上がってました。最後まで舞台に残ってるのがタガーなのはウィーンでも同じで面白い。

そして今度こそ隙間からじゃなく全部を楽しむためにもう一度観にきます。

ではまた!

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*1:『ソング&ダンス65』 劇団四季65周年の節目に全国で上演された劇団四季の名曲をショー形式で披露していく作品 https://www.shiki.jp/applause/songanddance/

*2:VSマキャヴィティ

欲望こそ力─ミュージカル『ダンスオブヴァンパイア』 オーバーハウゼン/メトロノーム劇場

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今、ヴァンパイアが熱い!!

先月舞台『SPECTER』*1のDVDが発売され、来月開催を控えた『繭期大夜会』*2、その直後発売の舞台『COCOON*3のDVD。そしてそして、11/5から帝国劇場で公演が始まミュージカル『ダンスオブヴァンパイア』

熱い!!!

まあヴァンパイアに関して言えば私の中では年中熱いのだけど。それはさておき。

実はこれが人生初のTdV、もう本当に楽しかった!結構公演があってるのに日本版TdVを観たことがなかった。CDは散々聴いていて、音源からも絶対楽しいミュージカルだなというのは伝わってきていたが想像以上!

……と終始こんな調子なので、全体的にはっちゃけた文でお送りする本記事内には日本版との比較とかはほぼないです。申し訳ない。今回の日本公演は日本にいた時の環境なら間違いなく観れたのに。悔しい……。

という事で前回の『アナスタシア』に引き続き日本で観れないならこっちでみようシリーズ。観劇日が一日しか空いてないけど来たからにはたくさん観て帰ります。もう誰にも止められない、我らは止まらない。

調べるとTdVはだいたいいつもドイツのどこかでやってるみたいですね。日本公演初日よりも絶対に先に観るぞと謎の意気込みでこの時期のチケットを取りました。

友人にドイツで観ることを伝えたらそっちの方が羨ましいと言われたが、ドイツに石川禅さんはいない。神田沙也加さんも相葉裕樹さんも、そして山口祐一郎さんもいない。それはそれ、これはこれ。

 

・劇場までの道のり

私はアムステルダムから劇場のあるオーバーハウゼンまでバスで行ったのであまり参考にならない。空のアクセスだとデュッセルドルフ空港からが電車で一本なのでいいと思う。もちろんデュッセルドルフ中央駅からオーバーハウゼン中央駅までも乗り換えの必要なし。

中央駅から劇場まではバスが便利。一応歩けないこともないのと時間がかなりあったので劇場まで歩いてみたが、約50分かかった。バスが便利。

ただ、歩いた果てにこの劇場が見えた時は物凄くテンションあがった。

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まさに『劇城』という門構え!

開演時間が近づき暗くなってくるとライトアップされ、周囲の雰囲気とともにさらに気分も高まっていく。

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劇場前には舞台写真のパネルが展示

 

・劇場内へ

中に入ると劇場名もしっかり書いてあるフォトローケーションがお出迎え。

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階段も高級感あるレッドで写真映えしそうなスポットでした。

続いて物販の様子。

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内側を見られたらもれなく二度見されそうな傘

バーカウンターからは飲み物の提供のみで食品は出していないようでした。

 

・開幕

※ネタバレ一切配慮してないです。

 

客席は一階のみの前回書いたハーグの劇場とほぼ同じ作り。火曜ソワレと平日のためか結構空席がありました。

一応自分の名誉のために書いておくと、月曜はもともと授業がなくて今週は火、水の授業がなくなり5連休になったので観劇旅行に出たわけです。授業飛ばしたわけじゃないのよ。こっちにきてまで遠征パズル*4組んだ。

 

『アナスタシア』では嬉しいサプライズがあったと書きましたが、こっちではちょっと嬉しくないサプライズが。というのも終盤も終盤、サラが噛まれた後の脱出のシーンで機材トラブルがあったらしく舞台が一旦停止。それが結構長引いたため再開するかもわからずかなりヒヤヒヤしました。無事に最後まで観ることができて本当に良かった。

 

圧巻だったのはやっぱりクロロック!歌い始めると劇場の雰囲気が一変して空気を変えちゃうんですね〜……まさに空間を支配する歌声。凄かった。特に高音部の圧が素晴らしくて。ずっと鳥肌が立っていた。

第一声を聴いた時に声わっか!と思っちゃってごめんなさい。役者さんはまだ37歳らしくびっくり。我らが伯爵様は今年で63歳だから余計にびっくり。逆に未だにバリバリ現役の山祐さんが凄いのかしら。

♪抑えがたい欲望 では悠久の時を生きるクロロックの苦悩を感じさせる厚みのある声を聞かせてくれました。そしてなにより好きなのが♪ワルツ。プロフェッサーを圧倒する歌声にゾクゾクした。終演後にお話ししたTdVを何度か観たことがあるというドイツのお姉さん曰く今回のクロロックが一番良かったらしい。

それを聴いてクロロックに比較対象がいるっていうのが新鮮だなと思った。韓国版『レベッカ』のキャスト表*5Twitterでみたときも同じことを考えたが、日本だとこの役といえば山祐さん!って感じなのでクロロックやマクシーに複数人役者がついてるのはやっぱり新鮮。

それからクロロックダンサーさんの肉体美が素晴らしくて……最初に涙出てきたのが一幕のダンスシーンだった。あそこのテンションのあがりよう凄いですね。ダンスシーンの評判は聞いていたもののあんなにかっこいいとは思っていなくて……本当に素敵だった……。

 

それと、ヘルベルトのビジュアルがすっごく良い!金髪オールバックを大きな青いリボンで一つに纏めてたんです。ハリーポッターに出てくる大人になったドラコ・マルフォイみたいな感じ!毛先はお父さん譲りの黒髪なので逆プリン?

役者さんのインスタより

インスタグラムにお写真がありました!これはちょっとわかりづらいけど後ろで髪をまとめてます。

この衣装はフィナーレ時のレザーのお衣装。個人的には普段着(?)のグレーのゴシックなお衣装が好きだった。

インスタグラムを確認するに、どうやら昨年のウィーン公演ではお父さん同様髪を下ろしてたようなので、「縛って青いリボンつけよう!」って提案してくれた人には感謝しかない。

姿に違わず演技もとってもチャーミングで彼が出ている時は思わずオペラグラスで追ってしまった。特にアブロンシウスに殴られた時の表情が最高だった。歌も素晴らしく、アルフレートを誘うAh~は本当に女性かと聞き間違うほど声が綺麗。それでいて「もうダ〜メ〜!」の歌い上げはパワフルで、だいぶビジュアルにやられたところはあるけどとにかくヘルベルトに夢中だった。

 

ユダヤ人のヴァンパイアだから〜」のくだりで客席が爆笑してたのも面白かった。あれ、ブラックジョークですよね。多分日本だと笑いが起きるポイントではない気がする……何割くらいピンとくる人いるんだろう。

それから誘われたというより自分の意思でお城に向かったという感じのサラや、結構可愛らしいお顔から力強い声が溢れてくるマグダなどなど全体的にパワフルな印象。プロフェッサーの早口ソングは言語が違っても聞き応え抜群だし、凄い楽しかった……!(それしか言ってない)

ほかのバージョンも気になるので来年1月末からのコペンハーゲン公演検討します。

ただこっちのカテコは踊らないんですね!踊る気満々でいたからそこはちょっと残念。先述のお姉さんに日本のカテコ映像を見せたところ「楽しそう!やりたい!」って言ってくれたし、踊ったらいいのにな。帝劇公演ではまたスペシャルカーテンコールデイもあるらしく。羨ましい限り。

やっぱり日本版も観たい!たくさん観たい!強欲だけど欲望こそがこの世界を動かすので。舞台装置一新したらしいし、またすぐ再演があると信じてます。

 

ではまた!

 

一足お先に観てきた話─ミュージカル『アナスタシア』 ハーグ/AFASサーカス劇場

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留学が決まってからずっとヨーロッパでミュージカルを観るぞ!と意気込んでいた私、とうとうそれが叶いました!記念すべき演目は『アナスタシア』。レンタルショップでディズニーアニメに間違えられて陳列されてるアニメーションムービーNo.1(私調べ)のあの映画を舞台化したBWミュージカルです。BWで2年間もロングラン公演されたヒット作で、来年3月から日本公演*1も決定しています。私はこの時期まだチェコにいるのでみれません!観たかった……。

とか言ってたら来年6月から宙組さんでの公演が決定しましたね!*2イムリー!宝塚での公演ということは主役は男性のディミトリだし、新曲も出るらしくどんな形で『宝塚ナイズ』されて生まれ変わるのか今から楽しみ。宝塚は殆どの場合ライブビューイングかあるので本当にありがたい。

 

・劇場までの道のり

日本で観れないのならこっちで観よう、と色々調べると現在オランダの第三都市デンハーグで公演中とのこと。公演チケットは事前に公式サイトから購入して、ブルノからは飛行機がないのでウィーン発アムステルダム着のフライトで到着。なお、私はアムステルダムの方が都合が良かったのでこちらにしたがデンハーグへはロッテルダムからの方が近い。

アムステルダム中央駅からハーグの中央駅まで大体電車で50分ほど、そこからトラムに乗り換え合計で1時間30分ほどかけて劇場に到着!電車を降りるとすぐ目の前に劇場がありました。

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公演映像を流している大きな電光掲示板がお出迎え

劇場名がそのまま最寄り駅の名前になってるのでわかりやすい。もしこのブログを読んでる人で観劇希望の方がいれば、オランダ全土から劇場まで往復20€ポッキリで行けるお得チケットがあるので参考までに。

Openbaar vervoer Anastasia AFAS Circustheater

因みに劇場名がcircustheaterになっているが別にもともとサーカス用の劇場だったとかではなくてサーカスさんが作ったからサーカス劇場です。

 

・劇場内へ

予め印刷しておいたe-ticketでいざ劇場内へ、とここで嬉しいサプライズが!なんとプロダクション側の都合とやらで座席のアップグレードがあり、元々とっていた席より9列も前で観ることができた。ラッキー!

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アップグレードしてもらったチケット 元々は36列目だった

しかも新しい座席はちょうど役者さんと同じくらいの目線になるとってもいい席だった。

 

ホワイエの様子。作品に合わせた装飾がされている。

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アーニャがパリに到着するシーンで登場する桜が飾ってある

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こんなフォトロケーションも

 

こちらは物販。

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Tシャツやボールペン、モチーフチャームにファー付のキーホルダーなど比較的日本でもよく見るラインナップ。

スナック売り場にはポップコーンやポスター柄の限定タンブラーが売っていてなんだか映画館みたい。

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他にもコーヒー類やアップルパイなんかも売っていて、客席開場までの間を皆とてもゆっくり過ごしていた。

 

・開幕

客席は一階席のみのこじんまりとした劇場。センター部分の傾斜は少し緩めかな。

なぜか客席内がめちゃくちゃ寒くてそんなところを舞台に合わせなくていいのに……と思いました笑

物語の粗筋をざっくり説明すると、一家惨殺にあい死んだと思われていたロシア皇女が実は生きてたのでは?という「アナスタシア伝説」をベースに、記憶喪失の少女アーニャが詐欺師の青年ディミトリらと旅をしていくうちに本当の自分に目覚めていく話。

オランダでの公演なのでもちろん全編オランダ語オランダ語は「こんにちは」「ありがとう」「はい」「いいえ」くらいしか知らんけど、アニメーションをみてたのと楽曲をYouTubeなどで聴いておいたので結構なんとかなった。BW版の曲をふわっと和訳して頭に入れておいたのが功を奏しました。芝居パートは流石に限界があったけど気合で読み取る笑

アニメーションからの変更点が結構あるんですね。ディミトリの相棒の名前がウラジミールからヴラドになっていたり悪役が人間だったりのキャスト表をみてすぐわかるポイントだけでなく、全体的に舞台にする上で「見せ場」がわかりやすくなっていたなという印象。アーニャとディミトリもアニメーションに比べてかなり親しみやすいキャラクターになっていた。

LEDスクリーンを使っての演出については事前に(海宝さんのブログ*3で)知っていたが、実際目にするとめちゃめちゃ便利だな!という身も蓋もない感想が浮かんだ。広さに限界のある舞台上の奥行きを無理なく大きく見せられるし転換に時間がかからないのでテンポも上がって、ほんと便利だなあと。映像に頼りすぎる演出は没入感が薄れるのであまり好きではないけれど、ここまでくるともう格が違うとしか言いようがない。

それとオランダ公演は全役シングルキャストらしくびっくり。土日は普通にマチソワあるので皆さん大変そう。そんな中でもディミトリ役の人がべらぼうに歌が上手くて驚いた。調べるとドイツ公演でも既にディミトリを演じてらしたんですね。力強く伸びやかな歌声が魅力的。アーニャ役の人も繊細に聴かせるところと盛り上がるところの切り替えが上手で、2人のデュエットは聴福でした。

 

↓以下内容に大きく触れていくので日本で観劇予定かつ結末を知りたくない方は自衛をお願いします↓

 

 

アニメーションからの細かな変更点でちょっと驚いたのが、パリに向かう中列車を降りた後船には乗り換えずに徒歩で行ってたところ。本当に些細な点だけどよく歩いたな、と。

あと悪役が死なないのは大きな変更点。アニメーションでは悪役は邪悪な魔法使いでしたがグレブは普通に人間なのでそこに配慮したんだろうか。その分バックグラウンドは掘り下げてあった。父が王家一族粛清に関わっていて、父はその罪悪感から自殺したが自分は粛清を遂行しようと画策しているという設定。ソロナンバーも多く、アーニャの正体に本人よりも先に気付いたりとかなりいい役。宝塚版の2番手がグレブかヴラドか気になるところだが、グレブを推したい。キキさんのグレブみたい。

 

触れずにいられないのが衣装。この手の作品は当時のドレスを再現する分総じて衣装の見応えが素晴らしいわけだが、例に漏れず次々と素敵なドレスを着て登場するアーニャ。特にバレエ鑑賞の際の目の覚めるようなブルーのドレスが素敵!

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写真左のドレス

ここでアーニャ・ディミトリ・グレブ・マリア皇太后がそれぞれのI want songをリプライズからの四重唱があった。絶対皆好きなやつ!ってなった。

またこのシーンでは『白鳥の湖』を鑑賞しており、実際にオデット姫らのバレエダンサーが登場する。このダンスがまた見事なんですね。CATSのミストフェリーズみたいな感じ。彼ほど回らないものの。タイミングの良いことに先月ちょうど『白鳥の湖』を鑑賞していたのでみたみたこれ!という不思議な気分になった。他にもガルニエ宮やアレクサンドル三世橋などパリで実際行ったところがちょくちょく出てきて面白かったです。

 

生前のロマノフ王家の衣装が白一色なのも印象的。アーニャが記憶を取り戻す過程で度々登場するこの衣装は照明の色を綺麗に反映するので本当に亡霊やら幻影やらに見えた。

この衣装を着た冒頭付近とマリア皇太后と再会した後の二箇所で写真を撮影する場面がある。バシャって全身にフラッシュをたかれるのね。これが何故か不吉に見えて調べたところカメラのフラッシュは被弾の隠喩とも取れるそう。両シーンの後確かにアーニャは一家丸ごと襲われたりグレブに撃たれそうになったりするのであながち間違いじゃないのかも。

 

それから、グレブに銃を突きつけられながらも気丈に振る舞いその気高さで銃を下させるシーンが素晴らしかった。ここはアーニャがしっかり気迫を出さないと説得力がなくなってしまう。記憶喪失の少女アーニャでもロマノフ王家の生き残りの皇女アナスタシアでもなく、ディミトリたちと旅を続けてきた『アーニャ』がグレブの野心に打ち勝ったんだなと感じさせる演技に感嘆。

ラスト、センターで寄り添うディミトリとアーニャをバックにマリア皇太后とグレブがパリとサンクトペテルブルクで同様の演説をする。「アナスタシア探しはもうやめる」と。アナスタシア達に触れて変わった二人が同じ演説をしている対比がいいなと思った。

 

今回ミュージカル用に追加されたデュエットナンバーIn a Cloud of Thausandsをはじめ、全体的にきらきらしている作品だった。キャッチーな楽曲が多く、曲がいいだけにどこまで感情を乗せれるかでだいぶ変わる。言語がわからんでも伝わるもんは伝わるし泣くもんは泣くんだなと今回わかりました。

日本版はメインを木下さん・葵さん、海宝さん・相葉さんと陽の役者で固めてきた感じなのでかなり上手くハマるんじゃないだろうか。内海くんはちょっと未知数。なにせラケット振ってるところしか知らないもので……。

アーニャの徐々に記憶が戻っていきながら「自分」を探す感情の細かな揺れ動きを魅せるのに葵さんの表現力が光るだろうし、In My Dreamをはじめとしたビックナンバーの数々は上品で伸びやかな歌声の木下さんにぴったり!アニメーション版でディミトリを吹き替えた禅さんのヴラドもとても楽しみ。

まあ、観れないんですが。

 

 

…………気を取り直し、開幕はまだ先ですが皆さんの感想を聞くのを楽しみにしています。そしてハーグでは来年2月まで上演予定なので機会のある方は是非行ってみてください。

ではまた!

 

ティボルトはヒーローの夢を見るか?―バレエ『ロミオとジュリエット』ブルノ/ヤナーチェク劇場

ブルノに来て二度目の観劇を済ませてきた。演目は『ロミオとジュリエット』。多くの媒体で楽しむことができる作品のひとつで、ミュージカル版を三月に愛知の刈谷市総合文化センターで鑑賞しているので演目自体は今年二度目。でもバレエという形で観るのは初めてでとても面白かった。劇場は前回同様ヤナーチェク劇場です。

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白鳥の湖』の時にチケットがだいたい550円だった!と書いたが、今回なんと50ckz(約235円)だった。すごい!なぜかというと、公演30分前になるとさらに割引が大きくなるらしい。もともと学生は正規料金から50%引きだが、開幕直前は席種にかかわらずすべての席を50ckzで購入できるという仕組み。驚くべき安さ。学生に優しいというレベルではなくなってくる。

そんなわけで座らせてもらったのはなんと一階10列目!

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座席からの見え方

だいぶ下手によってるが、でも近い!!オペラグラスが必要ないくらいめちゃめちゃ近い。この近さ日本でもあまり経験がない。

 

席の良さにテンションをあげつついよいよ開幕。

今回のロミジュリは昨年刷新された新演出とのこと。これが若干現代風の演出になっていると聞いており一瞬謎の頭痛がしたが流石にロミオが既読無視したりキャピュレット邸の舞踏会でミラーボールが回ったり生き残ったベンヴォーリオの後ろでチェキ風写真のスライドショーが行われたりはしなかった。*1

 女性陣、というかキャピュレット側は中世風のドレスではなくて現代のカクテルドレスのような衣装。モンタギューチームはワンピースっぽかったり、ロミオはコートを羽織ってたりと割とカジュアルな感じ。

舞台装置は正面をのぞいた三面にかなり簡素な二階部分が設置されているだけのシンプルなもの。キャピュレット邸のシーンになると上からモダニックなシャンデリア的なもの(蛍光灯でひし形をつくってそれを組み合わせたような形)が下りてくる。ジュリエットの部屋は箱型に作ってあるセットが同じく上から降りてくるんだけど、なんか高級マンションのデザインルームみたいだった。しかも!その箱の縁にあたる部分がLEDネオンで光ってて……既視感……うーん、流行ってるんですかね……。

あとびっくりしたのはジュリエットが薬を飲んだあと前述のシャンデリアが落下してくるんですよ。大丈夫?仮面つけた怪人でてこない?

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撮影OKだったカーテンコール 目を凝らすと後ろの方にシャンデリアが転がっている

他にもキャピュレットボーイズがカラーガードのパフォーマンスをしていたり新鮮に感じる演出が多くあった。この旗がちょっとクローケンハイツを彷彿とさせる柄で複数舞台上に飛んでると威圧感がすごかったです。

 

個人的に印象に残ったのはティボルト。このティボルトはとても孤独だった。

ティボルトといえば、いつもまわりにキャピュレットの皆さんを引き連れて暴れていらっしゃるイメージなんだけど(笑)、今回はキャピュレットの中でもティボルトだけ浮いてるというか、両家の諍いの象徴に仕立てられているように見えた。死んだあとにならないとジュリエットへの恋情がわかりにくかったのもあり、キャピュレットの家に祭り上げられてただロミオたちを憎んでいる、そんなティボルト。一番強くそれを感じたのはマキューシオとの対決のシーン。モンタギュー側の人間は止めようとしたりマキューシオをかばおうと動くのにキャピュレットは上から見ているだけなんですね。ただ一人ティボルトだけがモンタギューに向かっていっていて。それが家名に踊らされているように見えました。マキューシオを刺す時も、それまで見ているだけだったキャピュレット家の一人が「刺せ!」と言わんばかりに上から凶器をよこしてくる。それに操られるままにマキューシオを殺してしまって、続いてロミオをやれとけしかけられて反対に殺されてしまう。

ミュージカル版でティボルトは「本当の俺は違う 復讐の手先なんかなりたくはなかったんだ」と歌うけどこのティボルトはそれが本当の自分の意志でないことにすら気付いていない、孤独なティボルトだった。物心つくまえから憎しみを植え付けられたティボルトに、勇気あふれるヒーローになってドラゴンをやっつけるなんて夢をみることが出来たんだろうか。

なんていろいろ考えてしまった。もともとティボルト贔屓な自覚はあるのだけど、演出や演技により引き込まれた。

 

ちなみにこの舞台には日本人の方も出演している。プリンシパルだとベンヴォーリオとキャピュレット夫人が日本人の方でした。ベンヴォーリオはとにかくかわいい!三人の中でも弟分という感じでひょこひょこした動きに目が離せず、群舞のシーンでもいつのまにか見ていた。キャピュレット夫人は線が細くて美しく、威厳も申し分ない。家と娘への愛で板挟みなのが伝わってくる名演でとても痛ましかった。

 

そして二人の最期の演出が衝撃的。もちろんいい意味で。

ロミオが毒を飲んで、まだそれが回りきっていないうちにジュリエットが目を覚ますんですよ。だからロミオにはまだ意識があって!ジュリエットがロミオに抱きつくのに助かりようがなく目の前で事切れる。そして後を追ってジュリエットも……。という流れ。

こんなパターン初めてだし再会できたのが逆につらくて悲しかった。悲しいけど、すごくいい演出でした。

 

思わずいろいろ語っちゃいました。バレエ版すごく面白かったです。ただちょいちょい演出に目を剥いたのでいつか他のバージョンもみてみたいなとおもいます。

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ではまた!

 

*1:なんのこっちゃな人は「ロミオ&ジュリエット 2019 感想」とかで調べてほしい