初めて海外で観劇した話─オペラ『フィガロの結婚』プラハ/エステート劇場
初の海外観劇をしてきたレポートです。
今回はプラハ中心地にあるエステート劇場にて、モーツァルト作のオペラ『フィガロの結婚』を観劇。エステート劇場はモーツァルトが大変お気に召しており、『ドン・ジョバンニ』の初演が行われた場所。かの有名な公演初日ギリギリに書き上げたというエピソードはプラハでの出来事だったのです。かつてここにモーツァルトがいたというだけで背筋が伸びる思いに駆られる。
エステート劇場外観
そんなゆかりの劇場らしく、現在もモーツァルトの作品を多く公演中。
ここだけでなくてプラハには沢山の劇場やコンサートホールが立ち並び、毎日のようにオペラ・バレエ・演劇・コンサートが行われています。なんて羨ましい。
・チケット購入
先日市街地行った際に劇場を発見。プラハ滞在中に一度は観劇したいと思っていたのでいそいそとチケットブースに向かった。
「9/1の『フィガロの結婚』のチケットはありますか?」
と聞くとこの辺が空いてるよ、と教えてくれる。空席はモニターで示すのではなく、ラミネートした座席表で空いてるところを指してくれるユナイテッドシネマ式。
観劇慣れしていない友人を連行しているのもあって、一番安いセカンドギャラリーを選択。お値段390ckz(約1,755円)。安い〜〜!
と思っていたら、貴方達学生?と聞かれる。
そうです、と答えるとじゃあ195ckz(約877円)よ、と。
今なんて?
モーツァルトゆかりの劇場でモーツァルト作品を千円弱で観れてしまうらしい。いいんですか?
日本でオペラを観るとなると、例えば新国の『椿姫』は最安でも5,400円。プラハ、学生に優しい……。ほくほくとチケットをチケホルにしまい込んだ。
こちらにきて初のチケット。“Price”の部分に注目。驚異の5割引である。
・観劇当日
小綺麗なワンピースなどは持ってきていなかったので、普段着で恐る恐る行くと意外とカジュアルな服装の人が多くて一安心。それでも全体的にみんな着飾っている感じだったので次からはちゃんとした服装でこようと決意した。
余談だが、開演前に劇場裏口を通りかかると明らかに今から出演予定の役者さんが衣装のまま煙草を吸っていてビビり散らかす。日本だと客に見える所でそんなことしようもんなら即Twitter行きである。
終演後の裏口の写真。終わった後も煙草吸ってる役者さんがいた。もし私が出待ち厨だったら絶対煙草片手に並ぶよなあなどとしょうもないことも考える。
開演は日曜ソワレにしては19時と遅めだったので、少し街を散策してから劇場内へ。外観からもわかるようにかなりこじんまりした印象である。調べてみるとキャパ840。池袋サンシャイン*1よりちょっと多くて梅芸DC*2 よりちょっと少ないくらい。丁度いい例えが出なかった。
セカンドギャラリー聞いていたので二階後方とかかなと思っていたら、まさかの6階でした。1783年、マリーアントワネットの首がまだ繋がっている頃に出来た伝統ある劇場なのでエレベーターなんて無粋なものはない。席まで行くのにかなりの運動を要された。
でも階ごとの天井が低いせいか体感凄く舞台に近かった。博多座の3階最前より全然近いと思う。
6階席からの写真。公演時間外は撮影OKだった。
流石に音響は少し篭って聞こえたが、千円以下でこの位置はかなりお値打ち。
・開幕
歌唱はイタリア語で中央のモニターにチェコ語と英語の字幕が出る。でも正直字幕を注視しているのがもったいないくらい公演が面白い。
舞台セットはせりすらなく至極シンプルに纏まっているにも関わらず、小道具などでかなりコミカルに仕上がっている。
オペラについてはまったく造詣が深くないのでみんな歌が上手い……という知能指数2くらいの感想しか出てこないのだけれど、特に印象に残ったのは伯爵夫人の方。夫の愛が離れていく切なさを歌い上げるアリアは折れそうな心が見えるようで思わず胸が熱くなりました。
他の方の歌唱も素晴らしく公演自体のレベルの高さに目を見張るばかり。また、とっても贅沢なアンサンブルの使い方をしていて、全体を通すと出番が少しだけなのに結婚式のシーンなどでは役者が惜しみなく出てくるので重唱の厚みが凄い。幕間──といっても休憩じゃなくて緞帳が降りてきているだけの時間──にアンサンブルの皆さんがプリンシパルの扮装をして「忙しい人のための第◯幕」をやってくれたのが面白かったし意外と助かった。
だんだん千円も払ってないことが申し訳なくなってくる程素敵な公演でした。それでもこの気軽さが当たり前なくらい芸術文化が根付いてるんだろうなあ、いいなあ。
最後に一階客席からの写真を載せて、今回はここまで。